ゴボリ、と口元から赤い液体が溢れた。生臭い鉄の味が口一杯に広がる。燃えるように体が熱い。なのに指先は氷を掴んだように冷たくて、もう感覚が無かった。
ドクドクと脈打つ心臓の音に合わせて、撃ち抜かれた腹からは生暖かい液体が流れていく。放っておいてもこのまま死ぬだろう。わたしはいるかどうかも知れぬ神の身元へと旅立つのだ。
「…オニキス!」
震える声がわたしを呼んだ。白く霞んでいく視界の中で、わたしを見下ろす褐色の瞳。大好きな瞳。この絶望に満ちた世界の中で、あなたはわたしにとっての唯一の救いでした。
「…ソラン……おねが…い……殺、して………」
オニキスの手を握り締めるソランに、冷たく重い銃を渡す。懇願の目を向けると、ソランはそっとオニキスの額に唇を寄せた。頬に暖かな雫が落ちる。ありがとう、わたしのために泣いてくれて。ありがとう、大好きな人。ありがとう、…ごめんなさい。
最期は愛しい
あなたの手でそしてわたしは、あなたの中で永遠に生きるの。
荒れ果てた廃都に、乾いた銃声が響き渡る。
「……だいすき…」声を失った唇がそう呟いた。
20080211
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