今年もあと僅かで終わろうとしている。
近くにある大きな神社は年越し初詣に訪れた多くの参拝者で賑わっていた。大晦日の厳かな雰囲気を肌で感じながら、大我と二人、参道を歩く人の流れに乗って足を進める。
「初詣とか、来んの小学校ん時以来だ。」
「去年は来なかったの?」
「日本戻ってきたばっかだったしな。アメリカにはそういう文化ねーし、そもそも思い付かなかったっつーか。」
懐かしいのか珍しいのか、大我はキョロキョロと視線を辺りに巡らせた。
深夜の空気は鋭く頬を刺し、凍った呼気が大気を白く染め上げる。足下の砂利が踏みしめるたびに音を立てる。本殿の近くまで来るとそこには既に長い列が出来ていた。その後ろに並んで、新しい年を待つ。
「…寒くね?紅子、平気か?」
防寒対策は万全にしていても、底冷えする気温の低さはじわじわと体の奥に染み込んでくる。かじかんだ手を開いたり握ったりしていると、大我の左手が私の手を拐い、そのままコートのポケットの中に迎え入れられた。
「ありがと、大我。」
ぴったりと大我と寄り添って暖を取る。上を見上げると、こちらを見下ろす紅い瞳と目が合った。嬉しくなって微笑みを返す。
「そろそろか?」
「かな。」
浮き足立ち始めた雰囲気に大我が呟いた。その言葉にケータイを取り出すと、横から大我も画面を覗き込む。新たな年の到来まであと一分を切っていた。人混みのざわめきも一際大きなものになっていく。
「あと一分か。」
「今年も色々あったね。」
「だな。何より紅子に会えた。」
「さらっと恥ずかしい発言するの禁止。」
「照れてんのか?」
大我はにやりと少し意地の悪い笑みを浮かべた。こうして面と向かって言われると恥ずかしくて仕方がない。一気に頬に熱が集まるのがわかる。けれど思っていることは私も同じで、本当に今年一番よかったことは大我と出会えたことだと思う。
「あと20秒。」
「あと10秒。9、8…」
ついにカウントダウンが始まった。その場にいる人々が一丸となって声を上げ、去りゆく年に一抹の寂しさと、これから迎える新しい年への期待に胸を膨らませる。
「3、」
「紅子」
「2、」
「ん?」
「1、」
名前を呼ばれて顔を上げて、年明けの瞬間重なった唇に目を丸くした。0のカウントと共に飛び交う明けましておめでとう、の声。慌てて目を閉じて、開けばもう新しい年の始まりだ。惚けたままの私に大我が笑い掛ける。
「今年もよろしくな。」
「…こちらこそ、今年もよろしく。」
君と迎えた新しい年。どうか今年も素敵な一年になりますように。
ゆく年くる年20140101
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