食事を挟んだデートの時は自然と食べ放題かライスおかわり自由のお店を選ぶようになった。普通のお店に入ってもいいけれど、大我が金銭面を気にせずにお腹を満たすにはその方がいいからだ。

今日もお昼はネットで調べたランチバイキングのお店に入った。私が一皿目を食べ終わる間に、大我は既におかわりのために三回席を立っている。本当にいつ見ても信じられないくらいの量を平らげるのだ。

「相変わらずよく食べるねえ。」

「そうか?」

大我が顔を上げる。癖なのか、頬に食べ物を蓄えながら食べる様は少し怖い見た目に似合わず何だか可愛らしい。

「ソースついてる。」

「ん、わり。」

手を伸ばし、口の端に残ったソースを指先で拭って舐め取ると、大我は視線をお皿に戻して食事を再開した。山盛り盛られたおかずが凄い速度で彼の口の中に消えていくのを眺めていると、流石に居心地が悪かったのかまた手を止めて此方を見る。

「…なんだよ。」

「ううん、何でもない。」

本人は意識したことなどないだろうが、ご飯を食べている時の無防備な表情は何度見ても癒されるし、食べ方も食べっぷりも見ていて飽きることがない。言っても彼は複雑な顔をするだろうから、小さく笑って誤魔化して、自分のお皿に乗ったポテトグラタンをフォークでつついた。





「なあ。」

デザートのケーキを味わっている途中、不意に大我が口を開く。

「ん?」

「紅子もああいう洒落た感じの店とか行きたいんじゃねーの?」

そう言って彼は持っていたフォークで、通りの向かいにある若い女の子で賑わうカフェレストランを指し示した。ヨーロッパ風の店構えに、いかにも女子受けしそうな小洒落たメニューの数々。同じくらいの年頃のカップルがお店の中へ入っていくのを見送って、視線を大我に戻す。

「ああいうお店も嫌いじゃないけど、大我お腹いっぱいにならないでしょ?」

案の定、図星を刺された大我はう、と呻いて眉を寄せた。大盛もおかわりも出来ないお店では、メニューをいくつも頼むしかない。それでも大我にとっては満足出来ない量だろうし、中途半端に食べれば余計にお腹が空くだけだ。それならば、気兼ねなく好きなだけ食べられるバイキング形式のお店の方がいいに決まっている。

「まあそーだけど、たまになら、」

それでも大我は私の言葉に食い下がった。きっと大我の食欲ありきでお店を選ぶ私のことを気に掛けてくれているのだろう。けれど私にはお店のお洒落度なんかより、もっと他に優先するべきことがある。

「私ね、いっぱい食べる大我が好き。はい、あーん。」

イチゴのムースを掬い、大我の口元に持っていく。彼は釈然としない表情を浮かべたが、素直に口を開けた。ぱくん、大きな口にムースが消える。数回咀嚼を繰り返し、喉仏が上下してそれを飲み込む。

「こうやって美味しそうにご飯いっぱい食べる大我を見てるのが凄く幸せなの。だから、ね?」

二人で美味しく食事が出来ればそれでいい。そしてそのためには、大我が満足してくれなくては意味がない。

「そーかよ。」

「そうなの。」

「…けど行きたい店ある時はちゃんと言え、付き合うから。」

「うん、ありがと。」

結局大我は私のことを一番に考えてくれる。その優しさも、私が彼を大好きな理由の一つだ。緩む頬を隠せないまま、私はまたイチゴのムースを掬い上げた。





いっぱい食べるキミが好き!

20131223



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