■ 武士の恐竜

彼らが現れたのは、なんてことのない、冬の昼間だった。
小学校の校庭より敷地外へ向かう道路が突如として輝きだした。その光は太陽よりも眩しかったので、視力を守るために私はすぐ片手で顔を覆った。
光が収まったのを感じて、元の明るさを取り戻すために暗闇から目を解放した。
道に当たり前のように佇んでいたのは、戦国の甲冑が恐ろしく似合う男たち。よくよく見れば、若い者から中年までいるのが分かる。腰には各々が愛用しているのか刀があった。
一見、イベントか何かでコスプレでも楽しんでいるのかと思われた。が、その憮然とした態度からそんな風には考えられない。
戦国武将ファンからしたら最高の光景だろう。中にはサインを求めるものがいるかもしれない。武将にサインなんてものが書けるのか定かではないが。
本当に武将だとして、一体彼等はどのようにして現代(ここ)まできたのだろうか。
しかし、疑問よりも更に信じ難い光景が眼前に広がった。
ダイヤモンドよりも硬化であろう鎧、広い世界を見下しているような爛々とした目、四本足を持つ巨大な肢体、大きな牙。
武将たちが跨がっているのは大昔…ジュラ記や白亜記に存在し、隕石または火山の噴火説などによって絶滅した生き物。
恐竜であった。

「アパトサウルスにパラサウロロフス…フタバスズキリュウに……うわあ、プテラノドンまでいる……」

博物館や図鑑でしか見たことがない恐竜が今、この場にいる。古代ロマンを感じる自分にとっては感動するに相応しかった。
恐竜をもっと間近で拝見したい。しかしその願いは虚しく散ることになった。
一頭の恐竜――ティラノサウルスが突如咆哮し、勢いよく疾走し始めたのだ。ティラノは肉食だ。襲われたら確実に食い殺されてしまう。同時刻に同じ場所で見物していたギャラリーは急いで逃げ出す。
自分も皆の後に続いて、遅れないように近くの草むらに隠れ、息を殺した。
ティラノの駆け出しがきっかけとなったのか、武士を乗せた他の恐竜も一斉に走り出す。
あんな速さだと上に乗っている武士は振り落とされないのか。心配になるものの、恐竜から逃げ切るため、草むらから一番近い海に飛び込み、隣接する島に渡った。

「これからどうしよう……」

腕組して思案していると、島の森から体長二メートルはありそうなトリケラトプスが三体、近づいてきた。大きさから見て子供だろう。
恐る恐る近づいてきた中の一体の頭をゆっくりと撫でる。気持ち良かったのか、トリケラは嬉しそうな鳴き声を上げた。



fin...?

※続きはありません。
この間、年が開ける前に見た夢の内容を「武士の恐竜」として文章化。何度かこういう非現実の夢を見ることがあります。小さいときには鬼が出てきたことも(笑)
文章化した中には島までですが、そこで何故かピーターパンの服装をした少年と妖精に出会いました。


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