■ 戻れぬ時間

寝ている時に夢を見た。
酷く辛くて悲しくて、目を背きたくなるほど。
それは俺の夢では無いけれど
俺の知らないアイツが体験したと思うゆめなのは分かるけど
なぜ、俺がアイツの夢(かこ)を見ることになったのか分からない。
もしかしたら、当て付けなのかも。
誰が見せているのか、それはまぁ、予想はできる…
理由も…何となく

裏切ったのだ、俺が、アイツを
それも最悪の形で

裏切るつもりはなかった。
幸せにしたいと、思って
認められるような、そんな存在になりたかった。

ある日、見られてしまった
別に隠していたわけではない。
だが、それだけでアイツを裏切った
引き裂いた、心を
再起不能にするには充分過ぎるほどに
傷つけた

俺は報復を受けかけた
アイツの血縁が、背中から刺したのだ
当たり前だ
本来なら、謝罪の言葉だけで済まされない
視界が暗くなった

気がついたら白い天井があった
無のベッドで横たわっていた
起き上がろうとして傷が開いたのか痛みだす
白一色の室内には、何もなかった


そういえば、アイツはどうしているだろう
気になった俺は人がいないことを見計らい、病院から抜け出した
バレたら騒ぎどころではない
それでも、気になって仕方なかったのだ

会うためアイツの家に行くと門前払いをされた
今は葬儀の最中だという

葬儀?
いったい誰の…?
“誰が亡くなったんだ?”
聞いてみたら、信じられないという顔をされてしまった
知らないのは知らないから、ただ聞いただけなのに

そいつは厳しい表情をした
亡くなったのは、アイツの弟らしい
まさかと思いたくはなかった
しかし現実は何一つ変わってはくれなかった
“もう関わらないでください”
門が閉じられる前に言われた言葉
それだけでアイツがどんなになったのか想像を絶するほどわかった。

すまない……
出来ることならあの日に戻りたい
そして無かったことにしておきたい
アイツと出会ったことさえ忘れてしまいたかった
幸せを奪いたくなかった…
せめて失われたものを返してあげたい
何でもいい。








あのときからいくらかジカンがけいかしたあアイツは、どんなテをつかわれたのか、いぜんのキオク…それはきまってオレのことだけをわすれていた
みちばたでであっても、オレにはなしかけてはくれないだろう
そのことがツライ
アイツにとっても、ジブンにとっても
わすれる、わすれられること
ちかくにいながらふれることができないということ

おねがいだ
オレは
もうなにものぞまないから
のぞんではならないから

アイツのしあわせをかえしてやってくれ…
たのむ





さいごにこれだけはいおう
“アイシテル”
ナミダとともにオワカレだ









アイシテル…
アイシテ、た……
時の進みを忘れてしまったあの子の顔に
再び笑顔が戻るなら
何も望まず立ち去ろう…


サヨウナラ…



[ prev / next ]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -