くちびる

ジンさんがソファで読書をしている、わたしはそれをこっそりと見つめる。

「何だ」

ジンさんはさして気にすることなく、本に集中しながら言った。

わたしはジンさんから本を取り上げ、彼の顔を見つめる。
それはもう、穴が開きそうなほど見つめる。

そして一言。

「ジンさんの口許って、いやらしいよね」

「はぁ?」

あまりにも突拍子のないことで、ジンさんは少し間の抜けた声をあげた。

ちょっとレアな姿を見れたな。

そしてわたしは、思っていたことをぶちまける。

「何かエロいわ。いや、エロチックよね。うん。艶っぽい。とりあえず、エロくていやらしいよね」

「茜」

「っ…な、なに?」

ジンさんは、呆れたようにため息をつくと、わたしの
顎を掬い上げた。所謂、顎クイ。

ジンさんは意地悪そうに笑う。

「して欲しいか?」

吐息を含ませた声で囁くジンさんは、それはもう確信犯だ。

きっとわたしの顔は、真っ赤になっているだろう。

「して、ほしい……」

ばくばくと高鳴る心臓がうるさい。

「上等だ」

スローモーションのように、唇と唇が重なる。

啄むような口づけから、食むような口づけ。食むような口づけから、貪る口づけに変化していく。



甘美で濃厚な口づけに酔わされ、酸素不足で頭がクラクラする。

「ジンさん、激しすぎ…」

「お前が強請った結果だ」

ジンさんは息一つ乱してない、平然とした様子。
なんかズルい。

「だからって…ここまで激しくしなくても」

「それは、お前が悪い」

「え?わたし!?」

「お前は俺の口許をいやらしいとかほざくが、俺からすればお前の唇の方が魅力的だからな」

す、と親指で唇をなぞられる。

「それはもう、我慢出来ねぇぐらいに。しゃぶりつきたくなる」

そんなジンさんらしからぬ言葉に、わたしは「変態」と返した。

それをジンさんは嘲笑い、
「お互い様だろ」とまた唇を重ねた。







(やっぱジンさんの唇はエロいわ)
(お前は俺を何だと思ってる)
(エロテロリスト)
(はぁ…)

おわり


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bkm

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