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どのくらい寝たのだろうか、なんか体が熱い。
さっきまであんなに寒かったのに。

「……うー、ん」

「目が覚めたか?」

「ジンさん」

目を覚ますと、ジンさんがいた。
起き上がろうとするのが、それを止められた。

「まだ寝てろ」

そう言って布団をかけ直された。

「あのさ、喉渇いたんだけど」

「スポーツドリンクならある」

「ん、もらう」

そう言ってペットボトルを受け取ろうとしたけど、ジンさんが渡してくれる気配はない。
なんで?と思っていると、ジンさんはスポーツドリンクを口に含むと、徐にわたしに口移ししてきた。

「っ!!」

ご丁寧に、わたしが抵抗しないように両腕を押さえつけて。

流し込まれるそれは生ぬるく、それでもって甘い。

わたしは、もっともっとと求めてしまう。

でも、

「ねぇ、ボクいるんだけど」

「……んぐっ!
コ、コナンくん!?」

なんとコナンくんがいました。
コナンくんは呆れたように、半笑いでわたしたちを見ている。

いや、なんでいるのよ。

「何だ、いたのか」

ジンさんは何ら気にしてない様子。

「ジンはぜってーオレの事に気づいてただろ」

「さぁな」

ジンさんなら絶対気づいてたよね!?
え?コナンに見せつけたの?
ちょ、やめてー!

わたしは恥ずかしくなって顔を隠した。

「…うぅ。
てかさ、なんでコナンくんがいるの?」

「赤井さんに聞いたんだ。茜さんが風邪を引いて寝込んでるって」

ちょ、赤井さん!
情報漏洩、ダメ、絶対!

さらに追い打ちをかけるように、

「おや、目が覚めたんですね」

「あ、あむ、安室さん!?」

安室さんの登場……え?は?なんで??

目の前に推しがいる。

「コナンくんから、茜さんが風邪を引いたって聞きましてね。お粥作ったんですけど、食べますか?」

「コナンくん、お前もか!
あ、お粥は食べたいです!」

「今、持ってきますね」

安室さんはにっこり笑って部屋を出ていく。
なんというキラースマイル。

「ジンさん、ヤバい。
安室さんの笑顔に撃ち抜かれる」

「あぁ?」

「茜さん…相変わらずだね」

ジンさんに睨まれ、コナンくんは呆れた様子。

「いや、だってさ、安室さんだよ?
わたしの推しだよ?あんなイケメンでハイスペックなというか、高スペックな人間が目の前にいてにっこり笑ってくれたら、それはもう、ときめきメモリアルだよ!」

落とすのは最難関だろうがな!
ジンさんは隠しキャラで条件クリアすれば落ちるポジションで。

「だったら、ジンではなく僕とお付き合いしますか?」

名探偵コナン版ときめきメモリアルを妄想してたら、安室さんがお粥を持って帰ってきた。
そしてなんてことを言うんだ!
でも、わたしの答えは一つに決まってる。

「大変甘美なお誘いですが、わたしの、恋人は……ジンさんだけさ!」

わたしは安室さんの真似をしながら、ジンさんの手を握った。

「ハ、残念だったなバーボン」

ジンさんはこれでもかというぐらいにドヤ顔で、握った手に指を絡めて恋人繋ぎをしてきた。

「おやおや、フラれてしまいましたか」

残念だなぁ。なんて言ってるが、安室さんは本気ではないんだろうね。

「はっ!……しまったぁ……」

わたしはとんでもない事に気づいてしまった。
あぁぁなんてこったー!

「どうしたの茜さん」

コナンくんが不思議そうにわたしを見てくる。

「安室さんに、こんなみっともない姿を晒してしまった……」

「みっともないって、貴女は風邪を引いてるんですから気にしないでください」

穏やかに笑う安室さんに、頭を撫でられる。

「いや、気にします!
安室さんはわたしの推しなんです。推しの前では常に可愛く、綺麗でいたいのに……もうお嫁に行けない」

わたしは布団を頭までかぶった。

「くだらねぇ」

ジンさんはそう言うと、ガバッと布団を剥ぐった。

「ジン…」

「茜さん一応病人だよ」

安室さんとコナンくんが驚いているが、そんなことはお構い無しにジンさんはわたしのほっぺたを挟んで視線を合わせてきた。

「嫁に行けない?
ふざけた事抜かすんじゃねぇよ。
お前を嫁に貰うのは俺だけでいいんだよ」

「お、おう……」

え?これはプロポーズなの?
赤くなっていいのか、きょとんとしていいのか、ちょっとよく分からないですわたし。

「え?ジンさんそれはプロポーズ……?」

思わず聞いてしまった。

「いや、ただの予約だ」

そういったジンさんはおでこにキスをしてきた。

あ、ヤバい。また熱が上がる。

「やれやれ。見せつけてくれますね」

安室さんは肩を竦めながら呆れている。

「安室さん、ボクたちお邪魔みたいだから行こっか」

「そうだね。馬に蹴られるのはごめんだからね」

「あ、あー、お見舞いありがとう…ございます。
安室さんのお粥は絶対完食します!」

「ええ。しっかり食べて元気になってくださいね。ではお大事に。
ジン、茜さんは病人ですからね。くれぐれも無理させないように」

いや、安室さん何を言ってるんですか!?
無理ってなに?ナニをすると思ってんの?

「フン……病人に欲情するほど飢えちゃいねぇよ」

「だといいんですが。
それじゃ、コナンくん行こうか」

安室さんはコナンくんと手を繋いで部屋を出ていく。
え?何それ羨ましい!
コナンくんそこ代われ!

「オイ、今羨ましいと思っただろ」

な ぜ バ レ た し 。

「ま、まさかー。
あ、ジンさん、安室さんのお粥食べさせてもらいたいなー」

動揺しまくってるが、とりあえず話を逸らそう。と言うかちょっとお腹すいた。

「あ?自分で食えるだろ」

「い、や、だ。
あーんってしてほしい!」

何だろう。風邪引いてる時って甘えたくなるよね!
それだよそれ。

常に甘えてるとか、関係ないし!

「ガキか。
チッ……今回だけだ」

ジンさんは渋々だけど、お粥を食べさせてくれた。

ちょっと熱いって言ったら、ふぅふぅしてくれたし。
とってもレアなジンさんが見れた。


その後、赤井さんが桃の缶詰めを買ってきてくれて、それもジンさんにあーんしてもらった。
赤井さんがめっちゃ驚いてたけどな!


それから、ジンさんから話を聞いたウォッカさんと、安室さんから聞いたと言ってベル様までお見舞いにきてくれた。

え?何なのその連絡網は!?
いや、嬉しいけどさ!

赤井さん→コナンくん→安室さん→ベル様

ジンさん→ウォッカさん

いや、おかしい!
何で安室さんからベル様になるん!?


ベル様曰く、バーボンからはたまたまよ。とのこと。

そんな偶然あります?

でも、嬉しいからいいや!


その後、ジンさんの甲斐甲斐しい看病のおかげでわたしの風邪は治りました。

ジンさん、みんなありがとう!




おわり


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bkm

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