みんなにも自己紹介してもらってなんか仲良くなれた。
やったね!茜ちゃんは友達が増えた!
はい、ごめんなさい。
なんて思ってたら、哀ちゃんの腕の中で、ニャーという声が聞こえた。
「ん?ミケランジェロ?」
「ミケランジェロ?違うよ。この子はたいちゃん」
「あ、そっか。ミケランジェロは御子柴さんのやつだ」
「だれ?」
「ううん、こっちの話」
歩美ちゃんにニコッと笑ってみせる。
もー歩美ちゃんも哀ちゃんもかわゆい!
ぎゅうってしたい!!
ふへへってしてたら、ミケランジェロもといたいちゃんが哀ちゃんの腕から抜け出して、道路の方へ走っていった。
哀ちゃんのセーターを爪に引っかけて。
たいちゃんを追いかけて行くと、どうやら冷蔵車に潜り込んだみたい。
ん?猫と冷蔵車?
「あれ?なんだろうこのデジャブ…どっかで見たような」
「たいちゃーん、どこー?」
「うぅー。寒ィ〜!」
元太くんが寒そうに体を震わせてる。
そして歩美ちゃんがたいちゃんを呼びながら皆で探すと、奥の方からニャーと声が聞こえた。
「いたわ!」
「たいちゃん!」
「見つかって良かったー。さ、早くここから出よう」
と言った瞬間に、業者の人がわたしたちに気付かなくて、扉を閉めてしまった。
あぁ、なんてこった。
これはあの話かぁ……。
これこのあと哀ちゃんのセーターが……。
頭を抱えてるうちに車は発進してしまった。
「大丈夫だよ!本日指定の未配達の荷物がまだこんなにあるから…。
次に今の業者の人が扉を開けたら出してもらおうぜ?」
いや、コナンくんそれは…。
「ダメ!」
ですよね!
哀ちゃん今あられもない姿してるもん。
「今、出てったら許さないわよ!!」
「何やってんだ?オメー…パンツ一丁で…」
いや、コナンくんライトで照らすのはどうかと思うよ。
「セーターの毛糸がどこかに引っ掛かって全部ほつれてもってかれちゃったのよ!!
照らさないでくれる!?」
「あ、悪い…」
「コナンくん、たまにデリカシー無いよね」
「茜さんには言われたくない」
「そういうところだぞ」
と話してたら、物音が聞こえた。
「あ!来たぞ…」
「と、とにかく隠れましょう!」
皆で物陰に隠れるが、あれ、目がかゆい。心なしか鼻もむずむずする。
あ、わたし猫アレルギーだったわ。
これ、今くしゃみしたらアウトなやつ!
耐えろわたし!子供たちのためにも!
人知れず猫アレルギーと格闘してると、いつの間にか車が動き出していた。
「あ、哀ちゃん。わたしのコート着て」
とりあえず哀ちゃんに着るものをあげないと。
「ありがと、助かるわ!
でも、あなた大丈夫?さっきから鼻声だけど」
「大丈夫大丈夫!わたし雪国育ちで寒さには強いの!
それに、これはたぶん猫アレルギー……猫好きなんだけどなぁ」
「それはお気の毒さま」
というやり取りしてるのはいいんだけどさ、この車の中にはさ、
「どうやらオレ達の前に、もうお客さんが乗ってたようだぜ……」
そうだよね!
えっ?待ってコナンくん開けるの!?その箱……。
「し、死体!?」
やっぱりね!!
「茜さんは見ない方がいいかもね」
「う、うん。…そうする……けどごめん。ちょっと気分悪くなってきた」
ご遺体と一緒なんて、初めての状況に頭が混乱してくらくらしてきた。
「ちょっと、大丈夫?やっぱりコート返すわ」
哀ちゃんがコートを脱ごうとするのを止める。
「それはダメ。哀ちゃんが風邪引いちゃうから。
たぶん車に酔っただけだから」
はぁ、情けないなぁ……。
わたしはなるべく小さくなって物陰に隠れる。
近くにいてくれる歩美ちゃんを抱き寄せた。
「茜お姉さん?」
「ごめんね、ちょっとこうしててもいい?」
子供体温の歩美ちゃんはわたしより温かい。
この状況はコナンくんの機転でどうにかなるけど、やっぱり不安なのだ。
「茜お姉さん、泣いてるの?」
そう言われて気付く。ほっぺたに何かが伝う感覚。
「い、いや。これはあれだよ。ほら、猫アレルギー」
やべー。何で泣いてんだよわたし!
しっかりしなくちゃいけないのに。
ほっぺたをバシッと挟んで、気合いを入れる。
「よし!」
「茜さん?」
「大丈夫!なんとかなる!帰ったらダーリンのホットケーキが待ってるんだから」
「ハハハ……ダーリン、ね」
コナンくんは、ダーリンの正体を知ってるので、半笑いだ。ジンさんをダーリンと呼んで何が悪い!
「愛しい愛しい、恋人さんってやつ!ふふ」
「お、おい姉ちゃん寒さでおかしくなっちまったのか?」
「えっ!?茜お姉さんしっかりして!」
「いや、これが茜さんだから。通常運転だよ」
え?みんなひどくない?お姉さんほんとに泣いちゃうぞ?
「ま、まぁ今はそんなことを気にしてる場合じゃない」
「あぁ、そうだな。あの二人をオレ達が宅配してやろーじゃねぇか…監獄にな…」
みんな、わたしより年下なのに、こんなに頼もしい。
ねくすとちゃぷたー→
bkm