お昼にしませう

目を覚ますと、隣に寝息を感じる。

ジンさんだ。

ジンさんがわたしに腕枕をしながら寝てる……。

体の疲れ具合から夢じゃないってことを実感する。

何と言うか、腰と下半身に違和感。

あー、ほんとにジンさんに抱かれちゃったんだ。
待っててくれるんじゃなかったの??

てか、朝から何してんだろう……。
いや、冷静になったらダメだ。
さっきまでのことを思い出しちゃう……。

なんかまだ、ふわふわした感覚があるな。

まさかこんなにも早く、有希子さんからのお守りを使うなんて思ってもみなかった。

ふと、ジンさんの胸に耳を当てると、規則正しい心臓の音が聞こえる。

なんだかすごく安心するなぁ……なんて思ってたら、いきなりぐるっと視界が反転した。

「…いつから起きてた」

「いまさっき……っ!」

突然、唇に優しいちゅーをされた。

「それで、初めての感想は?」

ジンさんは長い銀髪をかき上げながら言った。
かき上げる仕草、やべー色っぽいんですけど!!

「へ?……そ、そりゃ、まぁ、なんて言うか、……ねぇ」

「あ?」

ジンさんはわたしが体に掛けていた毛布を引っ張った。
ちょ、ちょ、やめて!見えるから!見えちゃうから!

「す、凄い良かった!気持ちよかったから!」

負けじとわたしも毛布を引っ張って応戦するけど、最終的には毛布ごと抱きしめられた。

観念してジンさんの腕の中に収まると、ジンさんの体温を直に感じる。

「なんていうか、しあわせ……」

ジンさんの胸にほっぺたを擦り寄せると、優しく頭を撫でてくれる。

「そんなに良かったなら、もう一度シてやろうか?」

頭を撫でていた手がだんだん下に移動してきて、腰の辺りをさわさわ撫でる。

「え、遠慮します!
ちょ、ちょちょ、触り方!」

ジンさんの手をバシッと叩いた。

「…チッ…もう少し浸らせろ」

ジンさんは首筋に顔を埋めて、ぎゅっと抱きしめる力を強くした。
髪の毛がちょっとくすぐったいけど、甘えてくるジンさんが珍しいから我慢してやろう。

ちらりと見えたジンさんの背中に引っ掻き傷がある。

まぁ、わたしが付けちゃったんだけど……。

「ごめん。痛かったよね?」

「あ?……お前の痛みに比べりゃどうってことはねぇよ。
それに、これは愛情の証だ」

「…あいじょう…」

「それだけ俺を感じたって事だろ」

「そ、それは……否定できない」

たしかに、気持ちよかった。
すごい快楽?快感?でおかしくなりそうで、思わず爪を立ててしまった。

今度から爪を切ろう。

「お前に付けられる傷なら構わねぇよ」

「え?ジンさんM……はいごめんなさい。嘘です!嘘です!」

だから胸を鷲掴みにしないでーー!

「フン……分かればいい」

そう言って、ジンさんはベッドから出て落ちていた服を拾い上げて身に付ける。

わたしはそれをボーッと見つめる。
何か服を着てるだけなのに、すごい色気。
ジンさんもはや色気の塊じゃん!

「そんな顔をすんじゃねぇよ」

「へ?」

「まだ、足りないって顔に書いてあるぜ?」

「ばっ……そんなわけ、な、ない!」

ジンさんはぐしゃぐしゃと頭を撫で回してそこにちゅ、とキスを落とした。

「…うー。
わたしも起きる」

そう思ったんだけど、いざ動き出そうとしたら腰に激痛が走った。

「いっ!?…ちょ、いたい!痛い!え?何これマジ痛いんだけど!!
ジンさん!助けて!」

「あ?」

ベッドから這って出ようとしたら、ずり落ちそうになってジンさんに抱き止められた。

「あ、ありがとう」

「痛むならじっとしてろ」

再びベッドに戻されて、ジンさんに服を着せてもらった。

もちろん、下着…ショーツもブラも込みで。え?何それめっちゃ恥ずかしい!

けど、背に腹は代えられん。

「まさか俺がこんな事をするとはな」

「え?」

袖に腕を通したら、ジンさんがポツリと呟いた。

「事が済めばそれで終わりだ。睦言を交わすことも、ましてや服を着せてやることも無い」

ひとつひとつボタンをかけながら言葉を紡ぐジンさん。
なんだかくすぐったいなぁ。

「そっか。
ふふふ、そうなんだー。
じゃあわたしがジンさんの初めてだ!」

「フ……そうかもな」

照れ隠しなのか、ジンさんは口許にちゅ、とキスをした。





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