朝なのに

「引き返すなら今だぞ」

キッチンからお姫様抱っこをされて、部屋に戻ってきた。

そしてジンさんはわたしをベッドにそっと座らせると、気遣うように聞いてきた。

これ以上は後戻りはできないということを。

「…大丈夫」

今さら引き返すなんてできるわけない。

心臓がバクバクして、身体中が甘く疼いて治まらない。

あぁ、そうか。

わたしは

「……ジンさんが、欲しい」

少し震える声。それでも、ジンさんの目をしっかりと見つめて意思を伝える。

「茜……」

熱に浮かされた声が聴覚を刺激する。

やんわりと押し倒されて、耳をつっとジンさんの舌が這い、首筋まで下降してきた。

「…ん」

ゾクゾクとした感覚が背中を駆け巡る。

「怖いか?」

「…少し、ね」

怖いけど、ジンさんが欲しい。
不安と期待で、胸がいっぱいになる。
それを察してか、ジンさんはわたしのほっぺたに触れる。

「出来るだけ優しくしてやる」

ほっぺたに触れる指先が僅かに震えているのに気づいた。

ジンさんでも緊張するのかな。

それがなんだか可愛くて、ジンさんの手に自分の手を重ねた。

「…ジンさん」

そしてそのままキスをされる。
最初は軽く啄むだけだったけど、下唇を舐められたかと思うとそのまま舌が挿入された。

「…ん、…っふ」

「…は、……ん…」

何度も何度も、角度を変えながら濃厚なキスをされる。
まるでわたしの緊張を解きほぐすように。

やっぱりジンさんのキスは魔法みたいだ。

甘く深いキスはわたしを夢中にさせる。
でも、手慣れたキスはそれだけの経験値があるということで……少しジンさんの過去に嫉妬してしまう。

それを誤魔化すようにジンさんの背中に手を回して、ぎゅっと強く抱き締めた。

それを合図に、ジンさんは服のボタンに手をかけ、ひとつひとつ、丁寧にボタンを外していく。

少しずつ肌を露にされていく様子が恥ずかしくてぎゅっと目を瞑ると、そこに柔らかな唇の感触が落ちてきた。

「こっちを見ろ」

「…や、…は、恥ずかしい、から」

顔を背けようとしたけど、ジンさんの唇で捕らえられてしまった。

「…んん、ジンさん……」

「可愛いじゃねぇか」

ジンさんは唇に一つ優しいキスをして、首筋へと舌を這わせた。

「…ぁ…」

唾液で濡れた所に荒くなった吐息が当たり少しだけひやりとした。
それと同時に下着のホックが外される感触が。

流石というか、なんというか、そこから全て脱ぎ去るのはあっという間だった。

「……うぅ…恥ずかしい…」

カーテンを閉めているとはいえ、朝の光は部屋の中をうっすらと明るく照らす。
夜なら電気を消せば闇なのに、残念ながら今は朝。お互いの顔を身体も全部見えてしまうのだ。

無駄な足掻きだとしても、わたしは身体を手で隠す。

でも、案の定

「俺にお前の全てを見せろ」

ジンさんに手を取られて、ベッドに縫い付けられる。

「…ジ、ジンさん、も脱いでくれなきゃやだ……」

「あぁ、分かってる」

ジンさんは身体を離しTシャツを脱ぐ。

ジンさんの身体は筋肉が肥大しているというよりは、体脂肪率が低く引き締まって筋肉が浮き出ているような印象だった。

一言でいうと、エロい身体……。
そしてなにより

「どうした?」

「…傷がいっぱい…」

数々の修羅場をくぐり抜けてるだけあって、身体にはいくつもの傷があった。

でも、わたしが触れるのは左目下の傷。

「痛かった?」

す、と傷痕を撫でる。

「さぁな」

傷に触れる手をそっと取られて、おでこにキスをされる。


そして、ぎゅっと強く抱きしめられて肌と肌が直接触れ合い、お互いの鼓動をより近くに感じる。

「お喋りはここまでだ」

ジンさんと視線が絡み合い、ドクリと心臓が高鳴る。

ほっぺたが赤くなるのを感じながら、ジンさんに全てを委ねる。










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