やってきたのは公園。
敷地内にあるベンチに降ろされた。
「足を見せろ」
「あ、うん」
下駄を脱いで足を見せようとすると、ジンさんはしゃがんで足の患部を見た。
「少し待ってろ」
軽く舌打ちして、ジンさんはどっかに行ってしまった。
わたしも自分の足を見てみる。
これはひどい。
痛いとは思ってたけど、こんなに血が出るとは……。
しかも両足ときたもんだ。
結局ジンさんに迷惑かけちゃったなぁ。
「おい」
「ん?…あ、ジンさんおかえり」
「足を出せ」
足を差し出すと、ジンさんが屈んで様子を見る。
そして、濡らしたハンカチで血を拭く。
ハンカチを濡らしに行ってたのか。
「…ハンカチ、汚れちゃう……いっ!?」
「染みたか?」
「ちょっと、ね。
てか、ハンカチ」
「気にするな」
ジンさんは優しく血を拭う。
でも、なんかこうジンさんに足を拭いてもらうってのはなかなか…ねぇ。
「ジンさん、ありがとう」
「次はもっと早く言え」
「はーい……ごめんなさい」
「謝らなくていい。
よくここまで耐えたな」
そう言ってジンさんは仕上げに絆創膏を貼ってくれて、さらに、頭をわしゃわしゃと撫でられた。
まるでえらいえらいって言ってくれてるようだ。
「あ、」
「どうした?」
そんなことをしていると、大きな音と共に夜空に大輪の花が咲く。
「花火、きれいだね」
「あぁ」
少し見切れちゃってるけど、好きな人と一緒に見られるならそれでもいいかな。
隣に座ったジンさんの肩に頭を乗せた。
「茜」
「なに?」
「俺は…………」
ジンさんの言葉は花火の音に紛れた。
それでもわたしにはちゃんと伝わったよ。
ちょっと照れくさくて買ってもらったお面で顔を隠したけど、すぐに取られてしまった。
そしてジンさんの顔を見たら、優しく微笑んでた。
わたしは何度でもジンさんに恋をする。
おわり