お買い物しませう

無事に買い物できるかな?というのは杞憂だった。

沖矢さんは少し野暮用があると言って別行動。

なので必然的にジンさんと二人で行動することになる。

「ねぇ、ジンさん。
ジンさんも自分の買い物していいよ?」

女の買い物は男の人にとっては退屈だろう、と思いジンさんに声をかけるが、

「何言ってやがる。
お前は今一文無しだろ?」

そ う だ っ た 。

この世界だとわたしのお金は使えないと思って、元の世界に置いてきたんだった。

「その顔は、忘れていたな?」

「……はい。そうです。
ジンさん、ごめんなさい。お世話になります」

「ふん。
お前には借りがあるからな。その礼だ」

「ジンさぁん…」

そうなのだ。元の世界ではわたしがジンさんを養っていたのだ。養うっていうのも違うけど、貢いでた。
うん。たぶんそんな感じ。

「ほら、さっさと行くぞ」

「うん!」

わたしは、嬉しくてついジンさんの腕に自分の腕を絡めた。

てっきり、くっつくなとか言って振り払われると思ってたんだけど、ジンさんはそのまま歩きはじめた。

はー……ジンさん、

「マジ好き。とでも思ってるんだろ?」

「な、なんで分かったの……?エスパーか!」

「お前のことなら全てお見通しだと言ったはずだぞ」

「なんてこった…!
あ、このお店見たい」

「あ?…さっさと選べよ」

それからジンさんとお店の中を見て回った。


さっさと選べとか言った割には、わたしと一緒に店内を回って服を見てくれる。

ジンさんはわたしのことを良く分かってらっしゃる様で、わたし好みの洋服を手に取った。

「あ、それいいなぁ」

ジンさんから受け取ると、体に当てて見る。
うん、結構好きだな。値段は…あー

「やっぱり、いいや」

「あ?何言ってんだ」

「いや、だって…高いんだもん」

わたしが棚に戻そうとすると、ジンさんにそれを奪われてしまった。

「何くだらねぇ事を気にしてやがる。お前は欲しい物を選べばいい」

「…あ、はい……」

頭をぽんぽんとされながら言われたもんだから、頷くしかなかった。

「この店で他に欲しいもんはあるか?」

「うーん、、、
あ、このワンピースがいいな」

「そうか。試着は?」

「え?面倒」

「……いいから一回着てみろ」

そう言われて、試着室に押し込まれた。

え、えー。

仕方なくワンピースに着替えて、試着室のカーテンを開けた。

「こ、こんな感じっすけど、どうすか?」

ジンさんは腕組みをしながら壁に凭れかかってわたしを見た。

本当に美ジンさんだよなー。
あ、さーせん。

「悪くねぇ」

「そっか。じゃあこれにしよう!」

そしてまたカーテンを閉めて着替えた。


試着室から出てジンさんにワンピースを渡すと、さっきの洋服と一緒にレジへと持って行き会計をしてくれた。

その後も別のお店を見て回って、何着かの服や靴を買ってもらった。

でも下着を買う時はさすがに、外で待っててもらった。




「ジンさん、ありがとう!」

「礼はいらねぇよ。
それより、知ってるか?男が女に服をプレゼントする意味を」

妖しく笑うジンさん。とっても嫌な予感がします。

「ま、まぁ、大人ですから」

えぇ、一応意味は知ってる。知ってるけどさ、

「ふん。なら、覚悟しとけよ?じっくり可愛がってやるからな……茜」

ジンさんが耳元で艶かしく囁かれて、わたしの思考回路はショートした。
顔から火が出るとはこのことか!

両手で顔を覆う。

「ジンさんのバカ…」

ジンさんなんて歩く18禁だ!


やっぱり無事では済まないわたしの買い物。



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