―――…瀞霊廷内 十番隊





蒼助「隊長。戻りました、俺です」


日番谷「神埼か、入れ」



無駄のない動きで部屋に入ってきた三席を見て、気を引き締める。

ずっと怪しいと思っていた三番隊の調査を頼んでいたが、随分と早かったな。



蒼助「日番谷隊長の仰ったとおり、市丸隊長を張っていましたが…日に何度か外出しているようです。

行き先は、何度も途中で見失ってしまい…。申し訳ございません」


日番谷「そうか…さすがに勘づいてはいないだろうが、姿を隠すってことは、何かやましいことがあるんだろうな。

危険なことをさせたな。今日はゆっくり休んでくれ」


蒼助「じゃー、今日はちょっと四番隊に…」



あっけらかんと笑って歩き出そうとする蒼助に少し声を大きくして言った。



日番谷「言っておくが、病人と一緒に酒を飲もうなどと考えるなよ」


蒼助「え゛」


日番谷「はぁ…どうせ十一番隊の奴らと一杯やろうと思ってたんだろ」


蒼助「ちょっとくらいいいじゃんか隊長〜」


日番谷「 だ め だ 。

四番隊の方々が困るだろう」



口を尖らせながら、わざとらしく涙目になる蒼助。

子供かまったく。



蒼助「これが最後の晩餐になるかもしれないんですよー!?

一角の奴だってやられるような旅禍が侵入してるってのに…ちょっとくらい羽目外したって…」


日番谷「お前が簡単にやられるタマかよ」


蒼助「買いかぶりすぎですよ隊長ってば」


日番谷「くねくねするな気色悪い」



こういうところがなければ、神埼は副官でもおかしくない程の実力があるというのに。

任務は忠実にこなすが、大事なところですっぽかす癖がある。

どいつもこいつも…真面目一辺倒な部下がほしいぜ。


日番谷は何度目かになる深いため息をついた。



蒼助「…………日番谷…隊長」



部屋の襖に手をかけたまま、蒼助が呼びかけてきた。

椅子に座りながら、なんだ?とそちらへ顔を向けると、神埼はこちらに背を向けたまま固まっていた。



日番谷「どうした?」


蒼助「…いえ、なんでもありません」



神埼はいつものとおり、ニカッと人のよい笑みを浮かべたあと





静かに襖を閉めた






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