姫衣「縛道の六十三、鎖条鎖縛」
太い鎖が一護の体に巻きつく。
体に力を入れて抗う一護。
一護「なっ!?何だこれ!??」
姫衣「動かないでね。
殺すよ?」
一護は動くのをやめて姫衣を睨みつけた。
ギリギリと締め付けてくる鎖が傷口を刺激して激痛が走る。
痛みで膝をついた一護を冷たい目で見下ろす姫衣。
姫衣「今からする私の質問に、嘘偽りなく答えて」
一護「…………。」
無言を肯定ととったのか、姫衣はゆっくりと口を開いた。
姫衣「あなたたちの目的はなに?」
一護「ルキアを、助けることだ」
姫衣は顔をしかめた。
お前程度の実力でか?と視線が訴えかけてくる。
姫衣「ルキアが現世に行ってから、ほんの数ヶ月程度の時間しか経っていないわ。
なぜ、こんな大怪我をして、仲間を巻き込んで……命をかけてまで、助けたいと思うの?」
一護「…あいつは会ったばかりの俺と、俺の家族を守るために自分の力を俺にくれた。
そのせいで、あいつは捕まって処刑されようとしている…まだ…まだ、借りを返してねぇんだよ」
強い瞳で力強く言う一護に、姫衣はたじろぐことなく言葉を発した。
姫衣「ルキアがそれを、望んでいないとしても?」
一護「関係ねぇよ」
姫衣「ここはあなたたちの世界とは違うわ。
現世には現世の、こちらにはこちらの法がある。
法を破った者が罰を受けるのは、あなたたちの世界でも同じことでしょう?」
一護「じゃあお前は、ルキアの処刑に納得してんのかよ」
今度は姫衣の言葉が詰まった。
しかし、すぐに笑顔をつくると一護へ問いかける。
姫衣「どういう意味?」
一護「ずっとわかんなかったんだよ。あんたの行動の意図が。
何度も俺を殺せる機会はあったはずだ。それなのに、あんたはそれをしなかった。
今だってこうして、俺を試すような事ばっかしてやがる。
…それは、あんたもルキアを助けたいと思ってるからじゃねぇのかよ」
姫衣は無言で一護の言葉の先を促した。
一護「あんたは尸魂界(こっち)の人間だ。下手な行動はできねぇ。
でも、俺にならできる。
ルキアを助ける力があるか、俺のことずっと試してたんだろ」
ゆっくりと、体の鎖が解けていく。
自由になった一護が立ち上がり、姫衣を見下ろした。
姫衣「大正解」
にっこり笑った顔を見て、一護は大げさなほど顔をしかめた。
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