…あれから、どれほど歩いても旅禍は見つからない。
霊圧はあちこちから感じられるけど、どれも感じた覚えのある雑魚ばかり。
不意に、遠くのほうで大きな霊圧を感じた。



こ、この霊圧は…!

考えるより早く体が動いていた。
二つの大きな霊圧がぶつかり合っている。まだだいぶ距離はあるけど、ひしひしと感じる。



旅禍と一角が、闘っている。




それにしても、なんて霊圧なの。
これが、つい最近死神の力を与えられた人間の霊力とは、とても思えない。
いくら一角が優れた死神だとしても、調子に乗りやすい節があるあいつのことだから、相手の力を見誤れば…あるいは。



祈るように、必死に駆ける。
ふ…と霊圧が消えた。思わず凍りついたように立ち止まってしまう。



一角が…負けた…?

気持ちは焦れど、足が速くなるわけではない。
くそっ速く!もっと速く!



姫衣「………あ…意外に元気そう」


一角「どう見たって重傷だろうが!!あいててて」



叫んでから派手に痛がる一角。
呆れたように姫衣はため息をつくと、地獄蝶に四番隊を呼んでくるよう伝えた。





姫衣「で、相手はどんな奴だった?」


一角「外見は死神だ。オレンジの髪に柄も鍔もない身の丈ほどの大刀…それに、」


姫衣「強かった」

一角「強かった」



声が重なった。何かを探るようにじっと見つめてくる一角の目を、静かに見つめ返した。
勢いだけのように見えて、実によく頭の回る男だ。





一角「お前…どこまで知ってる?」


姫衣「まだ、何も。ルキアから話を聞いてたくらいだから、何となくそいつじゃないかなぁとは思ってたけど」


一角「そうか、お前今度の死刑囚とは仲良いんだっけな」



言葉のかわりにそっと目を伏せた。
ゆっくりと目を開いた姫衣の目に決意の色が浮かぶのを見て、一角は開く傷口も気にせず身をよじった。





一角「おい!!馬鹿なこと考えてんじゃねぇぞ!!」


姫衣「なぁに言ってんの。そこまで考えなしじゃないわよ」



思いのほかのんきな声が返ってきたことに少しだけ力を抜きながら、尚も一角は姫衣を睨んでいる。
姫衣は少し困ったように微笑んで、一角に背を向けた。





姫衣「あんたは素直に治療受けてなさいよ、つるりん」


一角「つるりんじゃねぇ!!」



明るい笑い声を残して、姫衣は一角の前から消えた。
あとには、風に舞う砂埃だけが残っていた。








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