冷や汗が全身を伝う。
鼓動が大きく早く脈打ち、ちっとも落ち着いてくれない。
ようやく大きく息をついた時には、もう随分時間が経っていた。



一角「お、姫衣じゃねぇか」


弓親「おやおや、偶然だね」



向かいの廊下で、二人が声をかけてきた。
力なく手を振って笑って見せる。





一角「今からサボりに行くんだが、お前も一緒に行くかー?」


姫衣「サ、サボりにね…よしとくわー!!」



二人はなーんだ、と言いながら廊下を渡っていった。
相変わらずの様子に思わず笑みがこぼれる。
十一番隊の中でも特に戦闘能力が高く、何度も死線を共に潜り抜けてきた信頼のおける存在。



…けど、彼らもまた、私の記憶については固く口を閉ざしている。
どんなに酔わせて喋らせようとしても、決してその口が割れることはなかった。
今はもう、そんな茶番さえしなくなってしまったけど。



と、突然あたりが明るくなった。
光が射したほうへ目を向けると、それらは一時的に宙で留まり、渦を巻いたと思った瞬間
一気に四方へ流れ星のように散っていった。





姫衣「あれが…旅禍…?」



警報が鳴り響き、瀞霊廷内が騒然と動き出す。
恐らく、隊長たちも大首会から帰ってくることだろう。
うちの隊長は…どうかな。多分、真っ先に強い旅禍を探しに飛び出している頃かな。



この時、姫衣の予想は的中し、更木は一目散に走り出していた。

旅禍を始末するのが瀞霊廷としての決まりだけど…私は…………………。
とりあえず、旅禍の中心人物を探してみよう。

そう決意して、姫衣は高い廊下から下へ飛び降りた。












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