……ルキア…
記憶を失った私に、優しく接してくれた友人。
本当に、彼女が処刑されなければいけないの?
確かに彼女が犯した罪は重いけれど…
こんなにも頻繁に刑の日時が変化するなんて、何か裏で力が働いているとしか
“ドンッ”
考え事をしながら角を曲がった瞬間、誰かにぶつかってしまった。
倒れてしまいそうになった腰を誰かが支えてくれた。
姫衣「す、すみません…どなたか存じませんが、どうもありがとうございます」
「いいんだよ」
上から降ってきた声に、背筋がひんやりと冷えた。
優しい男の眼差しが自分を見下ろしている。
姫衣「あ、藍染隊長…」
女性死神の中で抱かれたい男ナンバーワンに輝くいい男。
仕事も振舞いも誠実で、物腰も柔らかい。
ただ、姫衣はこの男が苦手だった。
いつも飄々として何を考えているか分らない。
何かされた、とか、そういうんじゃない。ただ、直感的に苦手だと感じている。
藍染「どうしたんだい?」
姫衣「いえ、大丈夫です。すみませんでした」
サッと身を端に寄せて道を譲り、頭を下げた。
…と、不意に陰が濃くなった。
顎を掴まれたと思ったら、クイッと上を向かされた。
眼鏡をとおして、無理矢理目を合わされる。
飲み込んだ唾が音を立てて喉を通り過ぎる。
顎を掴んでいる手が、首を絞めている錯覚を思わせた。
藍染「………うん、怪我はないようだね」
姫衣「あ、ありがとう…ございます。大丈夫です」
ようやく解放されてから、去っていく藍染隊長の背が見えなくなるまで体の緊張はとけなかった。
To be contenue...
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