お題集 | ナノ
 I BELIEVE IN YOU AND ME(クラトス)

「本当に、良かったの?」

次第に遠くなる世界。
宇宙を漂う私たち。

ただただ青く輝く惑星を見つめていたクラトスが、ふと私に視線をよこした。

「…お前こそ、良かったのか?」
「え、何が?」
「ロイドたちと残らずに、私についてきてしまって、本当に良かったのか?」

なんだか申し訳なさそうなクラトスを見て、私は笑ってしまった。

「良かったからここにいるのよ。だいたい、今更後悔したところで戻れないんだし」
「そうか…」
「…それに、クラトスだけをひとりぼっちに出来ないからね」

視線だけで私を見ていたクラトスが、少しだけ大きく目を見開いて、そして顔を私に向けた。まるで獣のように鋭く、けれど優しく暖かな眼差しが、私を捉えて離さない。導かれるように、私はクラトスの元へと歩み寄った。

クラトスはゆっくりと私の腕を掴むと、やんわりと私を抱き寄せて、唇を唇で塞いだ。少しだけ唇が触れ合って、私たちは離れた。それからまた少し見つめあったあと、どちらともなく抱きしめあう。

「…離れないよ、クラトスの側から」
「フ…」
「…どうして笑うのよ?」
「愚かだな」
「なんで?」
「私みたいな男を愛してしまうなんて、お前は愚かだ」
「…そう、かもね」

そうだと思う。あなたみたいに、私は天使じゃないもの。きっとあなたよりもずっとずっと早くおばあちゃんになって、そして朽ち果てて死んでしまうんだろう。

それでもあなたは、きっとずっと、側にいてくれる。

「…人間の私を受け入れたクラトスだって、ずっとずっと、愚かよ」
「…そうだな」
「ねぇクラトス、私が死んだら、宇宙にそっと、流してね」
「…まだ死なないだろう」
「…いつかは死ぬの。いつか私はクラトスよりもずっと早くにおばあちゃんになって、そして死んじゃうの」
「…」
「そしたら宇宙へ流して。星に包まれながらどこかへ流れて、いつかまた、こんな風に愛し合える誰かと巡り合えるように」

私が言うと、クラトスはすかさず私の唇を塞ぐ。さっきよりも、深く、甘く。

「…永遠はないのよね」
「…そうだな、永遠なんて、ない」
「だからきっと、綺麗なんだと思うの」
「…」
「だからこそ、私は奇跡や希望をバカみたいに信じてる。ずっとあなたと一緒にいられるような、バカみたいな夢だって、信じてる」
「バカな夢じゃない」
「え?」
「それなら私だって、同じ夢だ」
「クラトス…」
「ケイ」
「…ん?」



「 愛している 」



クラトスが静かに笑って、私の頬をそっと撫でた。泣きそうになるくらい、脆くて優しい時間。私の頬を撫でるクラトスの手に、私の手を重ねて、温もりを確かめる。そして柔らかな愛に身を委ねた。

そう、信じられるの。あなたと私、二人のことだから。どんなバカみたいな夢だったとしても、叶いそうな気がするの。

だって私とあなたの間には、こんなに確かなものがあるから。

I BELIEVE IN YOU AND ME
(アイ・ビリーヴ・イン・ユー・アンド・ミー)

2011.07.09 修正

prevnext
back
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -