お題集 | ナノ
 I LEARNED FROM BEST(レノ)

本気で私があなたを許すとでも思ってたの?
あなたとの関係をまだ信じているとでも思ってたの?
まだ私のもとへ戻れるとでも思ってたの?

「冗談じゃないわ」

煙草の煙とともに、冷たく吐き捨てる私の隣で、レノは縋るように両手を合わせた。

「頼む!頼むからもう一回俺とやり直してくれ!」
「ふざけないで」
「お前以上なんてどこ探したっていなかったんだぞ、と」
「よく言うわ、散々人の気持ちめちゃくちゃにしといて」

裏切られるたび、どれだけ私が泣いたか。いくら許したって、あなたは簡単に私を裏切っては、私の心を引き裂いた。そのくせ何度だって「もう一度」って、あなたは容易く口にする。

「さよならを言ったのはいつだってあなたなのよ、レノ」
「だから、それは本当に悪かったと思ってるぞ、と。これからちゃんと変わって…」
「あんたバカ?変われるわけないじゃない」

煙草の煙で肺を満たし、満足して、吐き出す。

「過去のこと反省するのは勝手だけどね、それが今更許されるとでも思ってたわけ?もう遅すぎるの」
「それは…っ」
「どれだけ私が寛大でいい女だったか、手遅れになってから気付いたあんたが悪い」
「…ケイ…頼むから…」
「女々しいこと言わないでよ気持ち悪い。何度だって言うわ、いつだって、さよならを言ったのはあんたの方なのよレノ」

吸いきった煙草を揉み消すと、私は鞄を持って立ち上がった。レノは慌てて私の腕を掴む。

「……なに」
「もう一回、もう一回だけでいい。考え直してくれ、ケイ」
「嫌よ」
「お前がいないと無理なんだぞ、と」

少し腫れて、くまができた瞼。どうせ女々しく情けなく、私を想って泣いて夜な夜な泣いたりしてるんでしょうね。

「…私はねレノ、あんたが私を想って泣いたその夜よりも、ずっとずっと長い夜、長い時間、泣き続けてきたの」
「…」
「あんたの涙なんて所詮はその程度。もう私の中であんたは過去の男なのよ」
「ケイ…」
「私から言うのはこれが最初で最後よ、レノ。『さよなら』」

私は腕を振り払うと、レノを振り向きもせずに立ち去った。彼が私にしてきたことと、まったく同じように。

レノが私の名前を大きく叫んだけれど、そんなの知らないふり。どうせ追いかけてこないのは分かってる。それにさよならを言ったのは私だもの。

私も学んだの、人の心を、粉々にする方法を。最高の先生から教わったの。それがあなたよ、レノ。

あなたが、教えてくれたのよ。
『さよなら』の呪文を。

I LEARNED FROM BEST
(アイ・ラーンド・フロム・ザ・ベスト)

2011.07.09 修正

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