お題集 | ナノ
 ALL THE MAN THAT I NEED(ゼロス)

「朝だよー」
「んー…」
「今日もご公務でしょー」
「んー…」
「起きなさーい」
「あと5分…」
「それ5回目。いい加減に起きなさいゼロス」
「んー…」

テセアラとシルヴァラント。二つの世界を統合してから、「神子」としてのゼロスの公務は日に日につのるばかり。新しい問題だらけで毎日夜遅くまで忙しくて、あんまり眠れてないのは知ってるから、出来れば寝かせてあげたいんだけど…

「今日はもうそろそろ起きなきゃダメだよ。だって今日は朝から会議でしょ」
「んー…」
「ほらゼロス」
「あと5分…」
「んもう…」

昨日も夜遅くまで仕事だったのに、あんなに夜の営みに励むからだよ、バカ。
心の中で小さくつぶやく。

仕事も私生活も大変だと分かってて、それでもゼロスと結婚したのは、この人しかいないって思ったから。テセアラもシルヴァラントも、世界中めいっぱい回ったけど、やっぱりゼロス以上のオトコなんてどこにもいなかった。きっとそれだけこの女ったらしは、私にしか与えてくれない愛を、私だけに注いでくれてるんだろう。

「ゼーロスくん」
「んー…」
「いい加減に起きなきゃ嫌いになるよ」
「それは嫌だ…」
「じゃあ起きなさい」
「んー…」

ぐずって起きないゼロスは、まるで小さな子供みたいで可愛い。可愛くて可愛くて、微笑ましくもなるけれど、いい加減に起きてくれなきゃ会議に遅れる。

そしたらまた言われるんだ、神子のくせに神子のくせにって。神子だってただの人間だし、神子だからってお前らの倍以上仕事してるんだ。仕事ほとんど押し付けといて偉そうに文句言うなら、まずお前らもゼロスくらい仕事してから文句言え!

…って言いたくなるけど、そこはゼロスの面子を守るために、我慢。

本当は性格上、「嫁」として言ってやりたいけど、そこは「神子の嫁」として、言っちゃいけない。大人のルールは本当に息苦しくて難しい。だからこそ、私がゼロスを支えてやらなきゃいけないし、しっかりさせてやらなきゃいけない。ゼロスという人間も、「神子」という身分も、まったくもって、難しい。

それでも愛してるから、私は頑張って支えてあげるのだ。ゼロスが私に負担をかけないように、仕事を全部ひとりで頑張ってこなしてくれてるから、私はその分、しっかりと支えるのだ。

「ほら起きなさい、いい加減に怒るよゼロス」
「んー…」
「今から5数える間に起きなさい。朝っぱらから私に怒られたいならぐずっててもいいけど」
「えー…」
「はい、じゃあ数えまーす。いーち、にーい、さーん…」
「〜〜〜〜〜〜起きた!」
「はい、おはようゼロス」
「はよ…」

目の下にしっかり出来たくま。お疲れの証拠。眠たそうな目を擦りながら、ゼロスはがばっと起き上がった。寝起きの少し拗ねた顔がまた可愛い。いい大人なのに。

ぐちゃぐちゃの紅く長い髪を、そっと梳いてあげる。

「今日が終わったら明日はゆっくりだからね」
「…今日1日、長い」
「子供みたいなこと言わないの。明日はお昼までいっぱい寝かせてあげるから」
「んー…」

気乗りじゃないらしいゼロス。やれやれ、仕方ない。私は相変わらず眠たそうな目を擦るゼロスの手をそっとのけると、瞼にそっとキスをした。

何度も何度も、優しく優しくキスしてあげる。疲れきった瞳に、少しでも力が宿りますように。祈りをこめて、何度も、何度も。

「……ケイ」
「ん?ごめん、嫌だった?」
「ちがう…」
「じゃあどうしたの?眠たい?」
「眠いけど、それよりムラムラしてきた」
「は!?」

そう言うと、ゼロスはいきなり私を押し倒して組み敷いた。朝っぱらから何をしているんだこの男は。ていうか昨夜、散々好き放題私を食べ尽くしたじゃない!

「…朝っぱらから何してるのゼロス」
「可愛いお嫁さんと愛の営みを嗜もうかと」
「嗜まなくてよろしい」
「えーいいじゃん」
「よくないわよっ……んぅ!」

強引で深いキス。欲望を制御できないなんて、まるで獣だ。

「…っ、は……ちょっと!ほんっきで怒るわよ!」
「それはやだ」
「じゃあさっさと準備しなさい!」
「へいへい…」

渋々私から離れたゼロスだったけど、ニヤリと笑ってまた私に覆いかぶさって、耳元でそっと囁いた。

「じゃ、続きは夜だな」

甘ったるい声が私の脳内に響く。それはまるで麻薬か何かの毒みたいに、私を痺れさせる。

「…返事は?」
「……ハイ」
「よし、じゃあケイとの約束も取り付けたし、今日も張り切って仕事すっかな〜」

眠いけどー、と語尾に付け足して、ゼロスは起き上がって伸びをした。相変わらず疲れた顔をしているけど、活気に満ちたその瞳は、きっと私のお陰。

何があっても、何が起こっても、ずっと離れない、ずっと、離れないよ。

あなたとなら、どんなつらいことがあっても、悲しいことがあっても、どこまでだって、きっと、ゆける。

ALL THE MAN THAT I NEED
(この愛にかけて)

2011.11.19

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