お題集 | ナノ
 WHERE DO BROKEN HESRTS GO(クラウド)

「なんていうか…」
「…」

しどろもどろになる私。クラウドも視線を落として何も言わずに突っ立っている。

ここはセブンスヘブンの玄関先。珍しくクラウドが休みだとティファに聞いたので、悩みに悩んだ末、ここへ来た。ティファには来ることを伝えていたから、気を使って外出してくれたみたい。

「えーっと…ですね…」
「………用がないなら帰れ」
「ちょ、ちょっと待って!用ならあるの!」

素っ気無く私に告げて店の中に帰ろうとするクラウドの腕を、私はぎゅっと掴んで引き止める。ここまで来て引き下がれるほど、私は根性無しじゃない。つい2年前まで、クラウドたちとこの世界を守るために命がけで戦ってきたのだ。色恋沙汰でウジウジ出来るほどの女々しさなんて、とうの昔に捨てた。

「話が、あるの。聞くだけでいいから、何もいらないから、聞いて」
「……手短にしてくれ、暇じゃないんだ」

嘘つきめ。今日は暇だってティファに聞いてるんだからね。
その言葉は必死に飲み下す。

「…じゃあ、手短に言うわ」
「なんだ」
「好きなの。まだ、クラウドのこと大好きなの」

私がそう言ったら、クラウドが目を丸くして私の目を見た。懐かしい色をした瞳が私を見つめた。たったそれだけのことなのに、泣きそうになった。

それはつい1ヶ月前、私はクラウドに別れを告げた。クラウドの仕事があまりに忙しくてなかなか会えない日々が続いた。それに耐えられなくなったのは私。

あの辛く長い旅の最中は、毎日一緒にいるのが当たり前だったのに、今じゃ1ヶ月に1回、会えるか会えないか。ろくに連絡も取れなくて、私はそんな寂しい日々に嫌気が差した。

すれ違う度に悲しくなって、それが嫌で。そしてお互いが息つく場所が欲しかった。だから私はクラウドに別れを告げたのだ。別れを告げたとき、クラウドの瞳が悲しく揺らいだのは知っていたけれど、気付かないフリをした。それが何より正しい決断だと思ったから。

だけどね、違ったの。

「わがままで身勝手な女の、戯言だと思って聞いてくれればいいから、言いたいことがあるの」
「…」
「別れたときは、それが何より正しい結末に繋がるって信じてた。だけど私が感じたのは、あの日々よりも寂しい日々が続いてるってこと」
「…」
「そのときに思ったの。あぁ、私クラウドに側にいて欲しいんだって。どんな形でもいいから、ずっと一緒にいたいんだって」

掴んでいたままのクラウドの腕を、より強く握りしめる。

「…息つく場所なんてどこにもなかった。心が行き場を失くしちゃった。生きる喜びを失くしちゃった」
「…………ケイ」

懐かしい声が私を呼んだ。堪えきれずに、私は泣いた。女々しいのは好きじゃないくせに。

「自分勝手で、本当に、ごめんなさい。だけど、私、もう一回、クラウドと、やり直したい…の」

泣いてるのがバレないように、俯いて話したけど、声が震えてる。あぁもう最悪だ。

「……無理だって、わかってるけど、それだけ、伝えたかったの。それじゃあ…」

さよなら、そう言って帰ってしまおうと思ったのに、その声は放てなかった。気付いたら私はクラウドの腕の中にいて、強く強く抱きしめられていた。言葉は詰まって、突然のことに頭がうまくついていかない。

「…っ、ク、ラウド…!?」
「気付くのが遅い」
「え…」
「その気持ちに、気付くのが遅い」
「ご、ごめんなさい…」

なぜか抱きしめられたままでお説教されてしまった。腕の中でしゅんとなる。クラウドは私を抱きしめたまま、耳元で囁くように言った。

「俺もまだ、ケイのことが好きだ」
「!」
「仕事が優先だから、あまり側にいてやれないのは分かってる。だからケイの為になるなら別れてもいいと思った。だけどケイが忘れられなかった」
「クラウド…」
「出来ることなら…別れたくなんてなかった」

私の首筋に顔を埋めるクラウド。まるでそこに私がいることを確かめるかのように。

「…ケイ、俺のわがままも聞いてくれないか?」
「…どんな、わがまま?」
「これからもあまり側にいれないのは変わらない。だけど…やり直してほしい、今すぐに」
「…っ」
「俺だけのもので、あってほしい」

初めてのクラウドのわがままは、あまりに愛おしくてあまりに嬉しいもので。

私はクラウドの背に腕を回して、しっかりと彼を抱きしめた。もう離れないように、もう離してしまわないように。

「…私からも、お願い、します……私だけのクラウドで、いて下さい」
「あぁ、もちろんだ」

優しく囁くクラウドが、より愛おしくて。クラウドの腕の力が弱まったので、私たちはゆっくりと体を離した。そしてじっと見つめあう。

クラウドの瞳の中には私が。
私の瞳の中にはクラウドが。

大切なものは失くしてから気付くってよくいうけれど、失くしてからじゃ遅いんだ。私はもう一度掴むことが出来たけど、もしもこの先ずっと手放したままだったら…そう思ったら怖くなる。大切なものが、当たり前になってしまって、大切だと思う心が、薄れてしまわないように。

もう決して、はなさない。

WHERE DO BROKEN HESRTS GO
(ブロークン・ハーツ)

2011.11.18

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