【11:天才魔導士リタ・モルディオ】

鍵を開けた扉から侵入した先は、アスピオのどこかの建物と繋がっていたらしい。そこは図書館のような場所なのだが、帝都にある図書館とは比べ物にならないくらいの広さがあった。様々な本がずらりと並んでおり、種類も豊富だ。学術都市というだけはある。研究や勉強に没頭しているアスピオの住人たちにとって、埋もれてしまうほどの書物があるこの図書館は欠かせない場所らしい。ここの住人は皆マントを着て生活しているようで、モルディオと同じような格好の人間がうようよとそこら中に溢れている。マントを着ていないユーリたちは完全に浮いた存在なのだが、ここではそんなことさえどうでもいいことのようで、いちいち他人を気にしている暇もない様子だ。エステルは自分たちの一番近くで突っ立ったまま、本を読みふけっている青年に臆することなく話しかけた。

「あの、少しお時間よろしいです?」
「ん、なんだよ?」

青年は振り返り、いかにも部外者であるエステルたちを怪訝そうに見つめた。エステルはお上品な笑顔を向けて、決して怪しい者ではないということをアピールしながら続ける。

「フレン・シーフォという騎士が訪ねて来ませんでしたか?」
「フレン?ああ、あれか、遺跡荒らしを捕まえるとか言ってた……」
「遺跡荒らし?」

ケイは首をかしげる。ハルルの樹を治すための魔導士を探しにやってきたのかと思っていたのに、フレンは遺跡荒らしを探しているというのだから、不思議に思うのも無理はない。しかしエステルにとっては、フレンがこの街に確かにやってきた、という事実の方がよっぽど重要らしい。ハルルの樹は自分たちで治してしまったのだから、魔導士を探す必要もないのだ。当然といえば当然の反応である。

「今、どこに!?」
「さあ、研究に忙しくてそれどころじゃないからね」
「そ、そうですか。…ごめんなさい」
「じゃあ、失礼するよ」

やはりここの住人は、他人にはまったく興味がないらしい。青年は本に視線を落としたままで立ち去ろうとしたのだが、ユーリがそれを引き止める。

「ちょ、待った。もうひとつ教えてくれ。ここにモルディオって天才魔導士がいるよな?」

ユーリがそう尋ねた瞬間、青年はビクリと大きく肩を震わせて、持っていた本を滑らせた。分厚い本がどさりと音を立てて地面に落ちると同時に、顔を真っ青にした青年が、信じられないという顔でユーリの目を見る。

「な!あの変人に客!?」
「さすが有名人、知ってんだ」
「……あ、いや、何も知らない。俺はあんなのとは関係ない」

それだけ言うと、青年は関わりたくいないようで、さっさとその場を去ろうと踵を返したのだが、ケイはその腕を掴んで引き止めた。

「ちょっと、まだ話は全然終わってないんだけど」

青年は掴まれた腕を振り払うと、苛立った様子を隠すこともなく言った。

「もう!なんだよ!」
「どこにいるの?その天才魔導士さんは」
「奥の小屋にひとりで住んでるから、勝手に行けばいいだろ!」
「サンキュ」

ユーリは落ちた本を拾い上げて青年に手渡すと、青年はふんっと鼻を鳴らして立ち去った。入り口にいた騎士といいこの青年といい、モルディオという名前を出すだけでこの反応だ。相当嫌われているか、避けられているのだろう。カロルも同じようなことを思ったらしく、こそっと呟いた。

「名前出しただけで、みんな嫌がるなんておかしいよね」
「気になりますね…」
「そりゃ魔導器ドロボウだしな。嫌われてんのも当然だろ」

ユーリは当たり前のようにそういった。ケイも同じように思っていたので、隣りでうんうんと頷いた。

図書館を抜けて街にでると、そこは不思議な雰囲気の漂う街だった。街の入り口だけを見ると機械的な印象だけが与えられるのだが、橋の上には緑色の光を放つランプやスタイリッシュデザインの外灯が、洞窟の中にある暗い街に光を灯し、明るさこそ感じないものの、思っていたよりもスッキリとした過ごしやすそうな街だった。街中も非常に綺麗で、石畳が丁寧に並んで作られた中心にある広場から様々な場所へ道が伸びている。ケイは、学術都市というより、魔女でも住んでいそうな街だな、とあたりを見渡しながら思う。

中心にある広場から、同様に丁寧な石畳の道が伸びているのだが、一本だけ木の板をツギハギして作られたような不恰好な道があった。歩くのも危ういその道の奥には、他の建物よりも圧倒的に小さい、質素な小屋が見える。恐らくモルディオの小屋であろう。ユーリたちは今にも崩れてしまいそうな木の道を恐る恐る進みながら、小屋の前に立った。窓などは見当たらず、ぽつんと小さな明かりだけが玄関口に灯されている。そして扉には乱雑な文字で『絶対、入るな。モルディオ』と書かれた、手書きの張り紙が張られてあった。書かれている文字は雑だが、少し癖があり、丸みを帯びている。

(……女の子の字?)

ケイはわずかに眉をひそめて首をかしげる。その文字は若い女の子が書くような、可愛らしい特徴のある文字で、男性が書いたとは考えづらい。モルディオは男性だと思い込んでいたケイは違和感しか感じなかったのだが、ユーリは気にすることもなくガチャガチャと乱暴にドアノブを回す。しかし張り紙をしているのだから、当然しっかりと鍵はかかってあった。続いてユーリはコンコンと扉をノックする。

「普通はノックが先ですよ……」
「エステル、気持ちはわかるけど、アイツに常識説いたってムダよ」

失礼極まりないユーリの素行に、エステルは呆れたような溜め息を吐いた。ケイは礼儀のなっていないユーリの態度にはすっかり慣れっこだったので、常識じみたツッコミが聞けることに新鮮さを感じている。

「いないみたいだね。どうする?」
「悪党の巣へ乗り込むのに遠慮なんていらないって」
「なら、ボクの出番だね」

カロルが扉の前に向かうと、それを止めたのは当然エステルだ。

「だ、だめです。これ以上罪を重ねないでください」
「…脱獄、公務執行妨害、自然破壊、不法侵入……あ、あとお城でフレンのものも壊してるから、器物破損もだったわ」
「あれは事故だろ」
「ユーリってば、いつの間にこんな立派な小悪党になっちゃったの?」
「脱獄の手引きして、騎士に銃口向けた挙げ句、発砲したケイさんにだけは言われたくないな」

幼馴染みが二人揃って物騒な会話を繰り広げている間に、カロルはモルディオの家の鍵をカチャリと簡単に開けてしまう。エステルは必死にだめだと訴えるものの、ここにいる連中が聞き入れるわけがない。

「ま、ちょろいもんだね」
「さすがエース、頼りになるわ」

ケイとカロルが軽やかに手を合わせると、ユーリはさっさと扉を開けて部屋の中に入っていった。その後のケイとカロルも呑気に追って、ラピードも優雅に尻尾を振りながら後に続く。エステルは頭を抱えて盛大な溜め息を吐き出すと、めまいでも起こしてしまいそうな頭を抱えたまま、仕方なく彼らに続いた。



扉を開けると、目の前には足の踏み場もないほど、本がどっさりと置かれていた。言葉の通り、山積みの状態である。小屋は外見通り、中も決して広くはなく、アスピオの他の建物に比べても圧倒的に作りが質素だ。本の山を通り抜けて奥へ進むと、ようやく歩けるだけのスペースがあったのだが、そこにも本棚に入りきらなかった本や、魔導器の模型がごろごろと転がっている。二階へ続くはしごもあるのだが、そのはしごを上るためにはまず本の山を越えなければいけない。人が住むにはなかなか酷な環境ではあるが、実際ここに住んでいるというのだから、噂通りモルディオはよほどの変人だということが伺えた。

「こんなんじゃ誰も住めないよ〜」
「その気になりゃあ、存外どんなとこだって食ったり寝たりできるもんだ」

ぼやいたカロルに答えながら、ユーリはきょろきょろとあたりを見渡した。そんなユーリの姿を見て、エステルはまるで子を叱る母のような口調で言った。

「ユーリ、先に言うことがありますよ」
「こんにちは。お邪魔してますよ」
「カギの謝罪もです」
「カロルが勝手にあけました。ごめんなさい」
「ワァオ、見事なまでに棒読み」
「もう、ユーリは……」

感情のかの字もこもらない見事なまでの棒読みっぷりに、ケイはくくくっと笑うものの、エステルは頭痛でも起こしそうな勢いで頭に手を当てた。お姫様にはユーリの存在は刺激が強すぎるな、と思いながら、ケイはエステルに少しばかり同情してやることにした。気を取り直したエステルは、出来るだけ丁寧に呼びかける。

「ごめんくださ〜い。どなたかいらっしゃいませんか?」

しかし返事はない。ユーリはニヤリと不敵に笑うと、あちこちを探り始めた。

「居ないんなら好都合。証拠を探すとするか」

ユーリはずかずかと奥に足を踏み入れる。乱雑に詰まれた本や魔導器の模型の隙間を漁ったり、更に奥にある術式の描かれた黒板を調べたりするものの、特に魔核らしきものが見当たらない。エステルはこれ以上罪を重ねられないといって、玄関から一歩も動こうとはせず、そんなエステルの隣りでラピードが大人しく座っていた。ケイは黒板に描かれた術式を見つめると、感心したように声を上げた。

「へぇ、これ火の術式ね。細かいとこまでちゃんと描かれてる。すごいね」
「ケイ、おまえ術式とかわかんの?」
「脳みそまで体力バカのユーリさんと一緒にしないでよ」
「てことは、魔術も扱えるわけだ」
「まぁね、でも向いてないからあんまり使わないけど。それに、あたしの武器って飛び道具だし、わざわざ魔術で遠方から攻撃する必要もないから」
「ま、確かにな」

術式が描かれた黒板の近くにあった本を読みながらユーリとケイが話していると、そんな二人の会話を聞いて、驚いたように声を放ったのは、入り口から動かないエステルだ。

「ケイ、魔術が扱えるんです?」
「多少はね。エステルみたいな、あんなすっごいのはムリだけど。なんで?」
「あ、いえ。ずっと銃で戦っていてそんな素振りも見せなかったですし、ケガをしても魔術で回復しようともしていなかったので、ちょっとビックリしました」
「…世の中、向き不向きってのがあるからねぇ」
「…そこでオレの顔を見るな」

ケイは本を閉じてニヤリと笑ってユーリを見上げると、魔術などちっとも扱えないユーリはムッとしたように綺麗な顔を見返した。ケイが本を元の位置に戻している間に、ユーリは他の場所を黙々と漁り始める。少し拗ねているらしい。

そんな後姿を見ながら、ケイは嘘をついたことに少しだけ心が痛む。ケイは魔術が苦手なわけではなく、むしろ得意なのだが、決して使いたくない理由があった。勘のするどいユーリにはすぐに見抜かれるであろうことを考慮して、扱わないようにしているだけだ。腕には武醒魔導器(ボーディブラスティア)と言い張って魔導器をつけてはいるが、本当は武醒魔導器はなく、ケイのためだけに作られた、ある特殊な魔導器だ。ケイは飛び道具を使うため、武醒魔導器を扱うような特別な技も使用することはない。嘘に嘘を重ね続け、すっかり嘘に慣れてしまっているだけに、表情や態度や仕草にそれが表れることもないのだが、それでも大切な人を欺き続けているという罪の意識は確かにあった。



しばらく探索したものの、証拠らしい証拠はなにも見当たらなかった。仕方ないので本の山を越えてはしごから二階へ上がろうとしたとき、突然ラピードがグルルルと唸り声を上げた。何事かと思って声を方を見ると、突然入り口に詰まれた本の山がもそっと動いて、そこから人が草のように生えて来たのだ。本の山はゴトゴトと音を立てて崩れていく。当然、人の気配も感じなかったユーリたちは、驚いて生えてきた人物を見る。カロルなんかは驚きすぎて、叫び声をあげながらその場に倒れてしまった。

「…うるさい…」

その人物は赤いマントを着て、フードを深く被っているため顔は見えない。しかしぐるりと振り向いて、叫んだカロルを睨みつけたことだけはわかった。カロルは小さく悲鳴を上げながら慌てて立ち上がると、近くにいたユーリの後ろにさっと隠れた。

「ドロボウは……」

マントの人物はぼそっと呟くと、両手にどんどんエアルを溜め込んでいく。ユーリは本能的に危険だと悟ったのか、隣りに立っていたケイの肩を抱いて、ケイごとさっとカロルの前から物陰へ身を潜めた。そこに残されたのはカロルだけで、カロルは自分の盾が急にいなくなってしまったことに一人であたふたとしている。

「ぶっ飛べ!!」

そう叫びながら魔術を放ったマントの人物は、カロル目掛けて火の魔術を放つ。いやあああとカロルが叫ぶのを聞きながら、ケイはやれやれと肩をすくめて苦笑いを零すと、こっそりと右腕を差し出した。次の瞬間、ドンッ、という凄まじい衝撃音と爆風があたりを包み、ケイ以外の全員が咄嗟に目を閉じる。そして風が収まってゆるゆると目を開けると、そこには何事もなかったかのように、腰を抜かしたカロルがへたりこんでいた。カロルも、その身に痛みや衝撃がまったく訪れなかったことに驚いて、目をパチパチとさせるばかりだ。

魔術を放ったマントの人物も、何が起こったのか分からなかったようで、驚いた表情のまま固まって無傷のカロルを見つめていた。爆風でその場にあった本の山は吹き飛び、被っていたフードも風の勢いに負けて頭から退いている。ようやく露になったフードの下の顔は、深いグリーンの瞳と茶色いショートカットが似合う、10代半ばくらいのまだ若い少女だった。

「お、女の子っ!?」

エステルはフードの下の素顔に驚愕の表情を浮かべている。一方ケイはというと、やはり女の子だったのか、というくらいの感想を抱きながら、自身の手のひらをこっそり見つめた。指先が僅かに燃えてしまったせいか、ただれる様な火傷の痕が残っている。

「やっぱり久々に使うと加減がうまくいかないのねぇ……」

ケイは、苦笑いで小さく呟いた。少女が放った魔術と同じだけの質量をもった、相反する魔術をぶつけて相殺したのだ。しかし僅かに少女の魔術の威力がケイの魔術を上回っていたようで、ケイにダメージが流れてきたらしい。そのせいで、細い指先は赤黒いケロイドを作っていた。

気にする事もなくケイは物陰からひょっこりと現れると、腰を抜かして動けないカロルに近付き、固まった表情を覗き込んだ。

「おーいカロル、大丈夫?」
「う、うん…」

カロルの目の前でぷらぷらと手を振りながらケイが笑顔で聞けば、カロルはぽかんとしたままケイを見つめかえして、ようやく小さく返事を返した。そんなケイの姿に少女が何か言おうと口を開いたとき、少女の背後に立っていたユーリが、剣の刃をその細い首元に突きつけた。

「こんだけやれりゃあ、帝都で会ったときも逃げる必要なかったのにな」
「…はあ?逃げるって何よ。なんで、あたしが、逃げなきゃなんないの?」
「そりゃ、帝都の下町から魔導器の魔核を盗んだからだ」

少女は剣を突きつけられているにも関わらず、臆する様子もなくユーリを振り返ると、怪訝な顔でにらみつけた。

「いきなり、何?あたしがドロボウってこと?あんた、常識って言葉知ってる?」
「まあ、人並みには」
「勝手に家に上がり込んで、人をドロボウ呼ばわりした挙句、剣を突きつけるのが人並みの常識!?」
「ワァオ、言い返せないねユーリ」

ケイはケタケタと笑って二人の様子を眺めている。十発は殴ると言っていたわりには、あまり怒っている様子はなさそうだ。ケイの笑い声を聞いた少女は、キッとケイを睨みつけるが、その足元にいるラピードを見つけて、一層眉をひそめた。

「ちょっと、犬!犬入れないでよ!そこのガキんちょも!その子を返しなさい!」

いまだに腰を抜かしたままのカロルを指差しながら、少女は声を荒げた。

「え?」
「魔導器よ、魔導器!!返しなさい!」

少女の剣幕に押されたカロルは、持っていた魔導器をパッと手放す。納得したようにふんっと鼻を鳴らした少女の前に、すっと現れたのはエステルだ。丁寧に一礼してから少女を見つめる。

「な、なによ、あんた」
「わたし、エステリーゼって言います。突然、こんな形でお邪魔しちゃってごめんなさい。……ほら、ユーリとカロル、ケイも」

諭すように言われ、ようやく立ち上がったカロルは素直に頭をさげた。

「ご、ごめんなさい」
「スミマセンデシター」
「……」

ケイは完全にふざけて、右手を高らかにあげて笑顔で言っているし、ユーリは完全に無視だ。そんなまとまりもへったくれもない、よくわからない集団をぐるりと見渡してから、少女は言葉を放つ。

「で、あんたらなに?」
「えと、ですね……このユーリとケイの二人は、帝都から魔核ドロボウを追って、ここまできたんです」
「それで?」

少女が聞けば、口を開いたのはユーリだった。

「魔核ドロボウの特徴ってのが、マント!小柄!名前はモルディオ!だったんだよ」
「ふ〜ん、確かにあたしはモルディオよ。リタ・モルディオ」

名前も背格好と情報と一致しているのだが、リタと名乗った少女は相変わらず焦る様子も困った様子もみせない。

「で、実際のところどうなんだ?」
「だから、そんなの知ら……あ、その手があるか」

否定しようとしたリタだったが、何かを思い出したようであごに指を添えた。そしてまっすぐにユーリを見上げると、突拍子もなく言った。

「ついて来て」
「はあ?おまえ、意味わかんねえって。まだ話が……」
「いいから来て。シャイコス遺跡に、盗賊団が現れたって話、せっかく思い出したんだから」

そう言うと、リタはすたすたと奥に姿を消した。ユーリは疑っているようで、消えていく背中を目で追っている。リタの話によれば、協力要請に来た騎士から聞いた話らしい。リタはどうやら出掛ける準備をしているようだ。ユーリたちは集まって、こそこそと会話を繰り広げる。

「その騎士ってフレンのことでしょうか?」
「だな。あいつ、フラれたんだ」
「図書館みたいなとこで会ったお兄さんも、遺跡荒らしがどうとか言ってたしね。嘘ではないんじゃない?」
「つまり、その盗賊団が魔核を盗んだ犯人ってことでしょうか?」
「さあなあ……」

そこまで話すと、奥から準備が終わったリタがマントを脱いだ姿で現れた。赤と黄色の縞模様の靴下に赤い服、それにゴーグルをつけた姿だったのだが、10代半ばの女の子にしてはなんだがズボラな格好だった。虫眼鏡やペン、手帳などを持参しているあたり、研究者らしい風貌にも思える。

「相談、終わった?じゃ、行こう」
「とか言って、出し抜いて逃げるなよ」
「来るのがいやなら、ここに警備呼ぶ?困るのはあたしじゃないし」

挑発するような言い方にユーリは肩眉を上げるが、そんな彼をなだめるようにケイは言った。

「まぁまぁ、行ってみようよ。あわよくば、フレンに会えちゃって魔核ドロボウまで捕まえれるかもしれないし」
「…ま、そうだな。よし、行ってやるよ」

ユーリが言うと、冷めた表情のままぷいっとそっぽを向いたリタは、抑揚のない声でシャイコス遺跡はさらに東だと告げ、さっさと家を出て行った。ユーリたちは肩をすくめながら、まだ若い少女にしては可愛げのないリタのあとを追い、シャイコス遺跡に向かうのだった。
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