「ケイちゃん、どこ行くの〜?」
「ちょっとね」
「メルトキオの外まで?」
「そう」

最近ケイは、よくメルトキオの外へ出かけるようになった。
それも、1人で。

「俺さまも行く」
「ダメ」
「なんで!」
「ダメったらダメよ」
「前みたいに危険な目にあうかもしれねぇだろ」
「平気よ。そんなに遠くへは行かないわ」
「でも外は外だ。危ねぇだろ」
「心配性ね、ゼロスは」

クスクスと笑うケイは、本当に可愛くて綺麗だった。だったけど、これだけは譲れない。前みたいに魔物に襲われたらどうすんだ。

「俺さまも行くからな」
「ダメだってば。この外壁のそばだもの、安心していいわ」
「それでも、「ダメよ」

真剣にそう言われてしまった。これ以上しつこくすると、また喧嘩になりそうだったので、

「…分かったよ」

とりあえず、そう、とりあえずそう言っておいた。




ケイがメルトキオの外に行くのを見届けたあと、俺もそっとメルトキオの外に出た。やっぱり心配なので、ケイには内緒でこっそりと。

ケイは言った通り、メルトキオから離れたところにはいなかった。どうやら何かを探しているようだ。しかし、魔物の気配はそこら中に漂っている。ケイが危険な目にあう前に、魔物は叩き潰そうと思った。

―――が、ケイは魔物ではなく人間に絡まれていた。

男、2人に。

「お、可愛い姉ちゃん。こんなところで何してんだ?」
「ほんと、可愛い顔してんな〜メルトキオの子?」
「…だったらなんですか」
「こんなとこで1人でいると危ないだろ〜?」
「俺たちと一緒に居ようぜ」
「…安心して下さい。もう帰りますので」
「おいおい連れねえな〜もうちょっと話そうぜ」
「きゃ…は、離して下さい!」
「怒った顔も可愛いじゃねえか」
「近寄らないでよ変態!」
「んだと…このアマ…」
「テメェ…大人しく着いてきやがれ!」

1人の男が無理矢理ケイを引っ張る。痛そうにケイが顔を歪めたので、さすがにこいつら、生かしておけない。

俺は駆け寄ると。ケイの腕を掴む男を思いっきり殴り飛ばしてやった。

「はいはいは〜い。レディ相手に2人がかりとは情けないなぁ」
「ゼロス!!」
「な…ゼロスって…み、神子様!?」
「そうか、俺さまを知ってるのか。じゃあ話は早いよな」

ニヤッと笑って俺は残った男の胸倉を掴んだ。

「俺さまのハニーに手ぇ出しやがって…」
「ひぃぃ!」
「今すぐ消えろ、5秒で消えろ。そして2度とこいつに手ぇ出すな」

男たちは泣きそうになりながら帰っていった。

「大丈夫か、ケイちゃん?」
「うん平気…また助けられちゃったわね」
「気にすんなって」
「ところで、どうしてゼロスはここにいるの?」
「え…あーその…あれだ」
「心配で見に来たとか言わないでね」
「…」

返事に困った俺を見て、ケイは柔らかく微笑んだ。

「助けて貰ったし、用事も終わったから気にしないでおくわ」
「そりゃどーも。で、ケイちゃんの用事ってなに」
「…そんなに知りたいの?」
「知りたい」
「バカにしそうだから言わない」
「しないって〜だから、教えてくんねぇ?」
「…コレを…探してたの」
「…四つ葉のクローバー?」
「そう、7枚集めたら恋が叶うっていうのを聞いたから…」
「ケイちゃん、恋、してんの?」
「私じゃなくて、メルトキオでよく私に話しかけてくれる小さな女の子。好きな子と両思いになりたいから集めたいけど、ご両親に外に出ちゃいけないって言われてるらしいから」

だから代わりに取ってきてあげるって約束したの。そう言ってケイは笑った。

「…ケイちゃんはいねぇの?そんな相手」
「さぁどうでしょうね。案外近くにいるかもしれないわね」
「それは俺さま期待してもいいのかな〜?」
「いいんじゃないの?」

あっさりとそんな返事が返ってきて、思わず固まってしまった。

「俺さま、自惚れるかもよ」
「ゼロスが自惚れ始めたら私も自惚れるわ」
「…俺さま自惚れることにする」
「じゃあ私もそうする」

お互い照れたように笑って、どちらともなく手をつないだ。



四つ葉のクローバーからの贈り物
(それは2人の恋心)

2011.09.15 修正

[ 8/21 ]

[*prev] [next#]

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -