「なあケイちゃん」
「なによ」
「…ケイちゃんって俺さまのこと好き?」
「嫌いじゃないわ」
「じゃあ好き?」
「嫌いじゃないの」
「じゃあ嫌い?」
「だから、嫌いじゃないって言ってるじゃない」

俺の可愛い姫君は、なかなか俺のことを好きだと言ってくれない。嫌いじゃない、と言うだけだ。

「好きかそうじゃないかで答えてくれよ〜」
「嫌いかそうじゃないかも同じでしょう」
「じゃあ好きなんだ、俺さまのこと」
「しつこいところは大嫌いよ」
「…」

そう言うと、読んでいた本にまた目を通し始めた。さっとそれを取り上げる。

「人と会話するときはこんなの読んでちゃダメでしょ〜が」
「なら人が読書しているときにしつこいほどベタつくのはいいのかしら」
「…ケイちゃん相手してくれるだろ」
「相手をしないとさらにエスカレートするじゃない」
「…」
「あら、言い返さないの?」
「…参りました」
「じゃあそれを返してちょうだい」
「それはダメだな。俺さまの質問に答えてくれたら返してあげてもいいぜ」
「答えてるじゃない」
「好きか好きじゃないかの2択で答えて」
「嫌いか嫌いじゃないかでも同じ事よ」

たしかにそうだ。

「でも好きか好きじゃないかで聞きたいんだよ」
「…嫌いって、好きじゃないって意味でしょう?」
「そうだけど?」
「じゃあ好きは嫌いじゃないって意味なんじゃないの?」
「…」

そう言われ、固まってしまった俺の手からサッと本を奪い返した。それをまた読み始める。

「…好きな人に好きって言われるのと、嫌いじゃないって言われるのどっちが嬉しい?」
「え?」
「ケイちゃんはどっちが、嬉しい?」
「…ゼロスはどっちが嬉しいの?」

俺が真面目に聞くと、ケイはパタンと本を閉じて、俺に向き直った。

「好きって言われる方が嬉しいに決まってるだろ」
「私だってそうよ。嬉しいに決まってるわ」
「じゃあなんでケイちゃんは好きって使わねぇの?」
「なんでだと思う?」
「…俺が嫌いだから?」

ケイはフルフルと首を横に振る。

「違うわ。嫌いじゃないって言ってるでしょう」
「なら好きって使ってもいいじゃねえの」
「だってもし好きって言うと、ゼロス調子に乗るじゃない。そしたら余計にベタベタされそうだったから」
「…確かに、浮かれるかもしれねぇけど…」
「だから使わないの。今のでも十分伝わってると思ってたわ」
「じゃあケイちゃんは俺のこと…」
「嫌いじゃない」

あっさりケイはそう言った。
思わず俺は苦笑する。

「それにね」
「ん?」
「好きなんて言葉で表すの、軽い気がして」
「軽いか?」
「ゼロスにそんなありきたりな言葉は使いたくなかったの」
「なんで?」
「そのへんの女と一緒になっちゃうもの。私、少なくともその女たちよりゼロスを想ってるつもりよ」
「…」

なんか嬉しくて、恥ずかしくて、思わずケイを抱きしめた。

「っ、ゼロス!」
「調子乗ったりしねぇ…しねぇからさ」
「うん?」
「一回だけ言ってくれよ、好きって」
「はあ……一回だけよ」
「ケイちゃんは、俺さまのこと、好きですか」

ケイはそっと俺の背に腕を回した。そして耳元で囁いてくれた言葉には軽く皮肉も入っていて、ケイらしい。

でも嬉しくて、ニヤけながら赤らむ顔を必死で隠した。



好きと言って
(大嫌いなとこも多いけど、そんなゼロスが大好きよ)

2011.09.15 修正

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