「ゼロス」
「なんだいハニー?」
「私はハニーじゃないって言ってるでしょう」
「みんな俺さまのハニーだぜ」
「本当に軽い人…」
「毎回言うなって〜。…で、どうした?」

さっきのケイの顔が結構真剣だったので、俺も真面目に聞いた。

「うん、ゼロスは好きじゃない人と結婚できる?」
「急にどうした?」
「サイバックの知り合いに結婚申し込まれちゃったの」
「…ま、じで?」
「でも私は彼のこと嫌いなの」
「じゃあ断ればいいんじゃねーの?」
「それが出来ないのよ。脅されちゃって」
「脅された?」
「そう…私のお店潰すって」
「本気でそんなこと出来んのか?そいつ」
「分からないわ…でも教皇とは親しい仲なんですって」
「それマジ?」
「それが本当みたい。この前直接教皇に聞いてやったもの」

とんでもねぇ行動力だな、と関心する。そして困ったように落ち込むケイ。前に、この店は死んだケイの母が残した店だとケイから聞いた。だからケイはこの店を続け、守りたいらしい。

「お店は守りたいの。でも嫌いな人と結婚なんて私…」
「…俺さまの名前出せばいいんじゃねぇの?」
「ゼロスの?」
「そ。俺さまと付き合ってます、って」
「付き合ってないじゃない」
「だーから、いつも大抵ほとんど俺さまといるから、そう言っておけばいいの!」
「ゼロスは神子さまだから、相手も何も出来ないっていうわけね?」
「そうそう。俺さま頭いい〜」
「…迷惑がかかっちゃうじゃない」
「なんで迷惑?」
「好きでもない女と付き合ってるふりよ?嫌じゃないの?」
「俺さまはケイちゃんのこと好きだぜ〜?」
「バカじゃないの」
「ケイちゃん酷!」

呆れた目で俺を見つめるケイ。そして軽く溜め息を吐いた。

「でも、ゼロスが迷惑じゃないなら…お願いしてもいいかしら?」
「喜んで、姫」

そう言って、ケイの手に軽くキスを落とした。

「もう…なにするのよ」
「恋人なんだし、別にいいだろ?」
「しばらくの間だけじゃない」
「恋人は恋人だって」
「…私、本気じゃないのに付き合うのってなんだか気が引けるわ」
「じゃあ店潰れるぜ?」
「それはイヤよ」
「…ま、嫌でも我慢してくれや」

自分で言って、少し寂しくなった。ここまで嫌がられるなんて、やはりケイにとって自分はただの友達でしかないのだろうか。

しかしケイは不思議そうに俺を見た。

「何言ってるの?」
「いや、ケイちゃんは俺さまと恋人なんて望んでないだろうから」
「そんなわけないじゃない。ゼロスじゃなかったら私こんな条件のんでないわ」

そう言うと、ケイはハッとしたように自分の口を覆う。

…やられた、不意打ちだ。

不安そうに俺の顔を上目遣いで覗きこんでいる。可愛すぎる、可愛すぎてどうしてやろうかと思ってしまった。

「…俺さまじゃなかったらこんな条件のんでないんだ?」
「…」
「目線逸らしたって無駄だぜ?ちゃんと答えろって」
「…」
「ほーう……答えないとキスすんぞ」
「!」

慌てて俺の方を向いたケイ。少し表情がムッとしているが、そんなところまで可愛く見えてしまう。

「俺さまじゃなかったらのんでなかったんだよな?」
「…そうよ」
「俺さまだったからいいの〜?」
「…あーもう、そうですよっ!」

意外とあっさりとそう言われてしまった。もういちいち何もかもが可愛い。

「…あんまりそんな可愛いことばっかりすんなよ、ケイちゃん」
「私は別に可愛くないわ」
「そんな可愛いから男に言い寄られるんだろ?」
「だから可愛くないって言ってるでしょ」
「ま、これからは恋人の俺さまだけ見てろよ」
「その間だけはね」
「…素直じゃねぇの」
「何の話かしら?」

珍しく白を切ろうとするケイ。その顔にははにかんだ様な笑顔があった。本当に素直じゃない。

でもお蔭で俺は確信できた。
きっとケイも、俺のこと、



君も僕も同じ気持ち
(きっと、絶対に、そうなんだ)

2011.09.15 修正

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