土方誕生日祝い

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『誕生日おめでとうございます!歳三さん』


私はにっこり笑って恋人のために買ったケーキを差し出した...


なのに、


「ああ、ありがとう千鶴...すまねぇが俺は今忙しくてな...来てくれて悪いが...相手はできねぇ...其でもいいか?」


上がってくれと、通された彼の部屋には資料の山と夜通し使われただろうパソコンが充電されながら開いていた。


側に置いてある中身が空のマグカップにも、多分昨日までは珈琲が入っていたに違いない。


頭をガリガリ掻きながら怠そうにパソコンに向かう目元にはうっすらくまが浮かんでいる。


GW中盤を過ぎた今日...そう土方先生の誕生日は彼にとって嬉しい日でもないみたい。


『あの歳三さん...私もう帰りましょう...か』


普段の呼び方よりも近い距離に思える名前呼びも今は遠くに感じられた。


私が名前で呼ぶだけで、言い出しっぺの癖に照れ笑いする彼も今の状況では私の顔を見る余裕すら見せなくて、


このまま、個々に居ても邪魔だなと思った千鶴は“やっぱり私帰ります。頑張って下さいね”とだけ告げてケーキをテーブルに置いた。


しゅんとする心に言い聞かせ立ち上がれば隣から伸びてくる手に強引に引かれ、重心を崩した身体は軽い音を立て土方先生の腕の中に抱かれ収まった。


『あの、歳三...さん?』


「おい、そんなに直ぐ帰ろうとするなよ...」


まるで甘えるように身体に絡みつく腕が、耳に甘美に届く恋人の言葉が愛しくて、


『ごめんなさい』


と小さく謝り首を横に動かし彼の瞳を覗けば揺れる濃い紫色。


「謝るのは俺の方だ...たく久々に会えたお前に冷たくしちまったんだからよ」


優しく耳朶を刺激する唇はチュッと音を生み頬を滑り愛おしむように互いの唇が合わさった。


舌を絡ませた甘く蕩ける口付けは千鶴が苦悩を顔に刻んでも終わることのない貪られるようなキス。


『ん、っとし...』


「千鶴悪い...止まらねぇ」


銀の糸を引き離れた唇は厭らしく光り羞恥を誘う。


呼吸を乱しはてなマークを浮かべる私を他所に肩に手を置かれればゆっくり倒れる身体。



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