短編2 | ナノ


▼ ショタ(甥)×大学生

「もしもし?俺俺ぇ、ゴールデンウィークさー……」
『遊びの誘いなら無理だから。金ない』
「あー……。はいはい了解でーす」
用件を言う前に口を挟まれ、通話から十秒足らずで俺のゴールデンウィークの予定はぼっちであることが決定してしまった。

暇なゴールデンウィークを1日だけでもいいから埋めようと、手当たり次第に連絡したが、やれ「恋人と予定がある」だの、「レポートが終わらない」などと、ことごとく遊びのお誘いを断られた。
そして最後の頼みの綱である幼馴染には用件を言う前に断られてしまった。

通話が終了し、いつの間にか画面が暗くなっていた携帯をその辺に放り投げ、俺はベッドに寝転がった。

父親は祝日関係無く働き、母親は近所のママ友とランチ。妹は彼氏とデート。そして俺はぼっち。
暇だ。めちゃくそ暇だ。
これからの数日、何をして過ごせばいいというんだ。

不貞寝しようとモゾモゾと動き、布団を被っていると、携帯のバイブレーションが部屋に響いた。
放り投げた携帯はどうやら床に転がっていたらしく、寝転がったままの状態で俺は腕を伸ばし、携帯を取った。

「はーい、なんでしょうか?」
『あんた今、家に居るわよね?』
「いるけどなんで?」
なんだ母親かよとガックリしたが、母親の次の言葉で今まで不貞腐れていた俺の気持ちはウキウキに変わった。

『春子(はるこ)ちゃんからさっき連絡が来てね、ゴールデンウィーク中はヒロくんを預かることになったから』
「えっ!?ヒロくん来んの!?マジで??」
『うん。30分ぐらい前の話だからそろそろ着「ピンポーン」……着いたみたいね。一応、母さん早めに帰るけど、それまではヒロくんのめんどうよろしくね』
「了解!!」
母親との電話を切ったあと小走りで玄関へと向い、扉を開けると、帽子を深く被り、大きめのリュックを背負った子どもが立っていた。
目線を合わせるためその場にしゃがみ込むと、その子どもはパッと顔を上げ、ニッコリと笑った。

「こーきくん、お久しぶりです」
「ヒロくーーん!!相変わらず可愛いね!……あれ?姉さんは?もしかしてここまで1人で来たの?」
「はい、もうぼくは小学生になったので、ここまで1人できました」
思わず手で口を覆い、「ヒロくん偉いねぇ」とヒロくんの頭を撫でた。


姉である春ネェの子どもであるヒロくんは俺の初甥で、生まれてすぐのヒロくんを見た瞬間から、俺はヒロくんにメロメロになってしまった。
病院には毎日通い、ヒロくんが退院してからは我が家から1駅離れた場所に住む姉夫婦の家に足繁く通った。
だけど毎日のように会いに行き、デロデロにヒロくんを甘やかしていたせいで、『このままじゃヒロがダメな子に育つ』と春ネェに怒られた。
それからは春ネェ達が我が家に来た時と、俺達家族が向こうの家に行く時だけしかヒロくんとの接触を許してもらえなくなった。
それ以外は春ネェの気が向いた時に、日々成長していくヒロくんの写真を送ってもらうだけ。
春ネェから送ってもらった写真は毎日見ているが、やっぱり生のヒロくんは違うなぁと思わず顔が綻んだ。

前にヒロくんと会ったのはお正月で、実に5ヶ月ぶりの再会に舞い上がりつつもヒロくんを家の中に通した。



「ヒロくん、ここまで来るの疲れたでしょ?マッサージしようか?」
「いえ、へいきです」

「ヒロくん、お菓子食べる?」
「今はおなかへってないのでいらないです」

「ヒロくん、なんか欲しいものない?」
「とくにないです」

「ヒロくん、お小遣いあげるよ」
「きもちだけいただきます」
春ネェの教育の賜物か、ヒロくんはとてもしっかりとした賢い子に育った。
まだこの年の子どもならうるさかったりウロチョロしたりと手がかかるが、ヒロくんは全く手がかからず、なんでも1人でこなしてしまうらしい。
だけどその反面、俺は落ち着きすぎていて少しヒロくんが心配になる。
『ヒロくんはちゃんと友達付き合い出来ているのか』『いじめられてはいないか』
心配で眠れない日もあったが、それとなく春ネェに聞いてみると「ヒロなりに上手くやってる」と言っていたから、きっと言葉通りヒロくんは上手くやっているんだろう。




「ヒロくん!ヒロくん!」
「どうしましたか、こーきくん?」
「ヒロくんは可愛いねぇ」
「こーきくんもかわいいですよ」
姉夫婦は仕事のトラブルでしばらくは家に帰れないらしく、ゴールデンウィーク中はずっとヒロくんは我が家で預かる。

ゴールデンウィークの数日間、ヒロくんと一体何をしようか。








補足

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