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ただいま、おかえり side彼女

※性的描写を含みます。
閲覧は自己責任でお願いします。

このところ、私はおかしい。
ことあるごとにヤマトさんのことを考えてしまう。
もう、それは一日中ふとした瞬間に彼は私の思考に入り込むのだ。

まず、さっき目が覚めた時もそうだった。
まだ眠気の残る頭でふと考えた。
もし、今、隣に彼が眠っていたならばって。
彼の厚い胸板に頬を寄せて二度寝したい。
しかも、私の頭の中で彼は裸なのだ。
布をまとっていないヤマトさんの背中を一度だけ見たことがある。
一度拝んだことがあるだけのあの逞しい背中を思い起こし、私の馬鹿な脳みそは想像を膨らましてしまう。
結果、裸の彼の腕の中に包まれ胸に頬を寄せる自分というなんとも破廉恥な妄想が出来上がっていた。

そして、今また妄想は膨らんだ。
歯を磨き、歯ブラシをコップに立てた。
なんてことない日常のワンシーンだ。
このコップにもう一本歯ブラシを立てたい。ヤマトさんのものを。
そんな夜が早く来ればいい。

私、いったい何を考えてるんだろ。
こんな人間じゃなかったはずなのに。
でも、私の頭は止まらない。
そう、あの夜からずっとこの調子。

顔を洗い、鏡に映る自分を見つめた。
いや、正確に言うと首筋。
そして、人指し指でつつ、と自らの首に触れた。
ここに、荒々しくヤマトさんの唇が……
彼によって落とされた朱は跡形もなく消え、すっかりと元に戻ってしまったことが淋しい。
私の口からは思わず熱を含んだ溜息が漏れていた。

2ヶ月の間、彼に会いたくて仕方なかった。
あの夜を何度も何度も思い出して身体が疼く自分が自分で恥ずかしい。
私自身、自分の気持ちの変化に驚いている。


あの夜、淋しさに耐えかねて彼の背中に抱きついた。
ねだったのはキスだったけど、返ってきたのは私の想像を遥かに超える行為だった。

いつもとは違ったいきなりの激しさに私はまず驚いた。
だって違ったのは、キスだけじゃない。
腕を掴むやいなや私の唇を奪った彼は私をどんどん壁においやり、ついには私の背がピタリと壁に到着すると、そのまま身体を密着させてきた。
気付けば、私よりも背が高くて大きな彼の腕にすっぽりと収められていて。
そして、彼の中心はどんどんと熱くなっていった。

唇を一度離した彼の目を見た時にわかった。
ヤマトさんは私のことが欲しいってことを。
だって彼の眼は何かに駆り立てられたように熱がこもっており、眉は苦しげに少し顰められていたのだもの。
目は口程に物を言う、これは本当だ。

唇を首筋に落とされた時、思わず背中がゾクリとした。
大きな手が私の胸を力強く包み込んだ時、確かに私の腰に甘く重い感覚が広がった。

私はそんな自分自身に戸惑った。
自分の身体を好きな人が弄っているという現実に酷く私は羞恥が激しくこみ上げていき、心がどんどん強張っていくのに彼から与えられる愛撫に私の身体は火照っていく。

私の戸惑いなど気にすることなくヤマトさんは行為を続けていき、胸の先端に舌を這わせ刺激した時、声が漏れそうになり驚いた。
こんな自分知らない、恥ずかしい、恥ずかしい。
見ないで、恥ずかしいの。
思わず目をギュッと瞑り、口を結んでいた。

すると、彼の手は私の下着へと手を伸ばした。
私の羞恥心は溢れ出し、声が出た。
待ってほしいって。
ヤマトさんにもし求められたら、受け入れるって決めていたはずなのに。
だって、もう、恥ずかしくて倒れそうだったから。
彼に自分の大事な場所を触られることもだけど、彼に触って欲しいってその先を知りたいって言っている身体を知られるのが恥ずかしかった。
自分でもわかっていたから。私の中心が湿り気をおびていることが。
でも、願いはあっさりと拒否された。

私の唇は彼のそれによって塞がれていたにも関わらず、くぐもっと声が漏れてしまうし…
恥ずかしくてたまらないのに、私の身体は喜んでいく。

彼の指が私の突起をじれったく触れたかと思えば、強く押さえてきて、それに反応して自分の中心は何度もぎゅって、ぎゅって縮こまってしまう。

このまま続けられたら、今までの私じゃいられなくなるって思った。
こんな世界知らない。この先を見るのはまだもう少し待って欲しい。
さっきベッドの中で、彼のことを考えて好きでたまらなくて暖かな気持ちに浸っていた自分じゃいられなくなる。

待って!

でも、彼の指はついには私の中へと進められたのだ。
長い指をすんなりと受け入れてしまう自分の身体が恨めしい。
快楽の波に飲まれ切る前に、心が私の腕をつき動かし彼の胸を叩いたけど…
それは無駄な行為だった。
続けられるヤマトさんからの愛撫。強情に居座っていたはずの羞恥心は彼からもたらされる快楽によってかき消され私の羞恥心をみるみるうちに小さくしていく。

ついには私の思考は、自分でも信じられない方向へと進んでいた。
頭の片隅に追いやられた羞恥心の代わりに私の思考は快楽を求めてた。
彼のこの長い指で私の中をもっとかき乱して欲しい。
そして、あなたの熱をこの身体で受け止めたいって

このまま貴方に抱かれたい。

彼が私を離した瞬間、自分の思考に自分で驚いた。
やだ、私、今何考えてた?
抱かれたいって…この私、今、思った?
信じられなかった。


彼がいないこの2カ月の間、その場の雰囲気に流されただけだと思おうとした日もあった。

でも結局は、あの夜を何度も何度も思い出し、もっと彼に触られたいって気持ちが止められない。私の腰には甘だるい重さが広がってしまうのだ。
早く帰ってきて。
またあんなキスを、
そして……その先を期待してしまう。

怖い気持ちがなくなったわけじゃない。
こんなこと考えてしまう自分という存在が心底恥ずかしくもある。
でも、それでも彼と身体を重ねることを望む自分が確かにいる。
つまり私は快楽を求める自分を認めてしまった。

そしてこのところの私の思考は
早く会いたい、あの夜の続きを、と行き着いてしまう訳なのだ。

でも、こんなもどかしさはもう終わり。
だって、今日サクラちゃんが教えてくれたもの。

「ヤマト隊長、明日帰ってくるらしいですよ。カカシ先生にさっき会ったら名前さんに伝えてあげてって言われました。」

やっと会える。

―――

ヤマトさんがやっと帰ってきた。
お疲れなのに、わざわざ私の仕事が終わるのを待っていてくれた彼の行動が嬉しかった。
彼もこの2カ月の間、寂しかったってことだよね。

あんなことがあった後だから凄く気恥ずかしさがあった。だから、意識して、普段通りを装った。
私はすぐに顔に出るタイプだっていつも彼は言うから。
さすがに、早く抱いて欲しいって顔に書いてあるよ、なんて言われたら恥ずかしくて生きていけそうにないもの。
だからもう必死。
でも、これ、ちゃんと装えてるのかな?
会話も表情もぎこちなくないかなって、ひやひやした。

だって、今までなんとも思わなかったことが、なんか突然、駄目だ。意識しちゃうんだもの。
ヤマトさんの唇とか、目とか、あの日の獣みたいな彼を思い出しそうになって、駄目だ。
今、考えたら負けだ。
また身体が疼いてしまう。

とは、思ってもついつい目が気付けば彼の手を見てしまった。
だって…いつもの人通りの少ない道に入ったから、手を繋ぎたくて仕方なかったの。

自分のばか。あんまり見ない方がいいのに!
だって私の馬鹿な脳みそはまた暴走して、あの長くて綺麗な指が私の胸を強くもみしだき、私の割れ目をなぞったことを思い出してしまう。

平常心。
平常心。
平常心。

呪文のように頭で唱えた。
と、思ったら彼が手を繋いできて、
あっ、今、駄目、頭おかしくなっちゃいそうなぐらい、いっぱいいっぱいで。

その瞬間、必死に保っていた平静はぐちゃりとぐずれ去った。
心臓が途端に早鐘を打つ。

このまま、今日の夜は一緒に過ごしたい。
きっと今、私の顔に書いてある。
恥ずかしい。見ないで。

「あの……、うちで、お茶でも飲んでいきませんか?」

緊張で声が強張る。恥かしい。
でも…その先に進みたい。その思いが抑えられない。

今日、やっと、貴方と一夜をともに過ごせる。
けれど、私のその期待は見事に打ち砕かれた。

「いや、帰るよ……」

足早に去っていくヤマトさん。

……え、うそ。
帰っちゃうの???

つづく