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お迎え1

※オリキャラが前半多めです。
それでも大丈夫な方はどうぞ。
苦手な方はお迎え3からの閲覧をお勧めします。前半との辻褄合わせは適当に脳内補完願います。


まだ夜は少し肌寒いが日中は汗ばむ日も多くなってきた。
今日もよく晴れていてちょっと暑いぐらいだ。
もうそろそろ来るころだと思うんだけどな。
私は村の入り口にある木に背を預けて迎えの忍の人を待っているのだ。
カカシさんからの連絡では今日の夕刻に到着する予定とあった。
今夜は我が家に泊まってもらって、明日の朝に出発し2日かけて里に帰る。

もう5月も終わる。
あっという間に3ヶ月が経った。
明日、私は木の葉の里に帰るのだ。

この三ヶ月間は本当に楽しかった。
まさかこの研修に自分が行くとは思っていなかったが、綱手様に感謝だな、と前回帰省から里に戻った時のことを思い出した。

帰省した時に改めて思ったが村の薬草学の知識水準はやはり高い。
私がいない間に進められた新薬の研究はとても興味深いものだった。
でも、木の葉の里だって負けてやいない。
一人でも多くの患者を救うために日々、研究を重ねている。
そこで私は綱手様に提案したのだ。
これからは定期的に木の葉から研修に出向き、お互いを刺激し合ってはどうかと。
私としては、村のみんなも薬剤部のみんなもいい刺激になるしお互いより知識が深まるのではと思っての提案だったのだが、綱手様はまず私に研修に行くよう指示を出した。
なぜ私なのかと戸惑ったが
「親孝行もしっかりしておいで。」
と、付け加えられたこの言葉に素直に甘えさてもらうことにした。

案の定、父と母は大喜びだったし、私も久しぶりに両親と共に過ごす時間は帰るのが惜しくなるほど心が暖かくなるものだった。
でも、里で待っていてくれる人達を思うとそれはそれでまた違った幸せを感じる。

村で学んできたことを早くみんなに教えたいな。
来年の研修は誰に行ってもらおうかな。きっと良い経験になるはずだ。

帰る場所が2つもあるなんて、私は幸せ過ぎる。
それに里にはヤマトさんがいる。
彼と次会う時は、彼氏彼女の関係でいいんだよね?
この3ヶ月間にやり取りした手紙の中で、彼はたくさんの甘い言葉を綴ってくれた。
もう今までの二人とは違う。
会うのが楽しみだけど、気恥ずかしくて倒れるかもしれない。

迎えの忍の人はどんな人だろうか。
知っている人だと嬉しいな。行きに送ってくれた二人とは凄く気が合って楽しかったし、またあの二人だといいのに。
そんなことを悠長に私は考えていた。

すると、両親と隣の家のおばちゃんの3人が森から帰ってきた。
おばちゃんには私と同い年の息子がいる。所謂、幼なじみだ。小さな頃から家族同然の付き合いをしている。だから、おばちゃんは第二の母みたいなもの。
カゴいっぱいに摘んだ薬草を前に抱えながら母は言った。

「名前、まだ来ないの?護衛の忍さん。」
「うん、まだなの。もうそろそろ来ると思うんだけどな。」
「名前ちゃん、本当に明日帰っちゃうの?うちの息子は風の国に指導に行ってまだ帰ってこないしねぇ。おばちゃんまた淋しくなっちゃうよ。」

おばちゃんの息子であり、私の幼なじみは綱手様の進めで砂隠れの里から指導の要望があり派遣されたのだ。

「また帰ってくるからね。」

やだ、ちょっとジーンときちゃう。
すると、父がボソリと口を挟んだ。

「おまえ、またそんなこと言って。5年も帰らなかったくせに。」
「本当の本当にこれからは年に一度は帰れるよう頑張るよ。みんなの顔見たいしね。」

痛いとこをつくなぁ。
まだ父の攻撃は止まらない。

「本当は4年の約束だったんだ。別に今からだって、お前の気が変わってやっぱり里には帰らんって言ってもいいんだぞ。綱手様にも火影様にも父さんが嘆願書を書いてやる。」
「だから、綱手様も火影様も無理強いしてきたんじゃなくて私が里で働きたいって思ったんだってば。」

このやりとり何回目?次に父が言うセリフもあらかた予想できる。

「わかっている。わかっているんだがな、ちょっと拗ねたくなっただけだ。」

そうこう言いつつも、村の人にうちの娘は綱手様に認められたっ!て、鼻高々と自慢していてる。
私の頑張りを応援してるけど、意地っ張りだからな。本人の前じゃ素直になれない父が娘としては可愛く思えてしまう。
母が森に続く小道を遠く見据えて言った。

「あら、忍の方がいらっしゃったんじゃない?今回は一人なのね。」

一人?予想外だな。
私も目を凝らす。

どんどんと近付いてくる人を見て私は固まった。
なんで?
どうしてなの?

彼から手紙でいつ村を出発するんですか?て、聞かれたけど、5月末です、とだけ答えて詳しくは書かないでおいた。
それに、カカシさんへの定期連絡にヤマトさんが迎えに来たがったら阻止して下さい、とメモを入れてお願いしておいたハズなのだけれど。
他の忍の方にわざわざ来てもらうのも申し訳ないのに、上忍で多忙極まりない彼が3日間をようする私のお迎えは申し訳なさすぎる。

でも、ヘッドギアをつけた彼はにこやかにどんどん近づいてきてついに、私の前までやって来た!?

「なんで、なんでヤマトさんなんですか!?」

―――

僕は森の中を駆け抜けていた。
梅雨に入る直前で、木々の間からは柔らかな木漏れ日が差し込んでいる。
身体が重いな。
まったく、本当に先輩は人使いがあらいんだから。

「テンゾウさー、名前ちゃんを迎えに行きたいでしょ?」
ニコと、笑う先輩を思い出す。
「て、なると3日連続の休みかー
優秀なテンゾウが3日もいないと困っちゃうなー
このSランク任務誰に頼もうか考えてるとこだったんだよネー。うーん。」
「あーはいはい。行きます!行きます!」

このところ高ランクの任務を立て続けに押し付けられた。今日もまだ身体に疲れは残っている。
でも、今から彼女に会えると思うと心は軽い。

やっと会える。
僕の恋人になった名前さんに会える。
いや、違うな。名前、だ。
手紙では何度も呼び捨てにしたけれど、口に出して呼ぶのはまだしていないことで。ちょっと緊張する。
でも、呼びたい。
もう僕の片思いじゃない。
前とは違う前進した二人になりたいんだ。

村の入口が見えてきた。
幾人かの人影が見える。
高鳴る胸を落ち着けるため、そこからはペースを落として僕は歩いた。
彼女はどんな反応をするだろうか。
僕が行くことは伝えていないのだ。
想像してみる。

“ヤマトさんが来るだなんて、嬉しい!”

いや、これはないな。
彼女はちょっと照れ屋なところがあるからこんなに直球ではこないだろう。

“ヤマトさん…どうして?”

びっくりして、戸惑って、でも嬉しそうにはにかんで
うん、こんな感じならまだ期待できるかも。

村の入口には彼女と他に何人かが立っていた。
とりあえず彼女の前まで足を進めた。
やっと会えた。
久しぶりに会う愛しい人は僕の予想通りまず驚いた。
ぎょっとしてちょっとの間化石みたいに固まっていた。
そこまで驚くかな。
そして、眉間に皺をよせたのだ。

「なんで、なんで、ヤマトさんなんですか!?」

なるほど、こうくるのか。
しかも、カカシさんに止めてって言ったのに、と小さく呟いたのは聞き逃さなかったよ。
うん。ちょっと傷付く。

「ヤマトさん忙しいのに、すみません。」
「僕が来たかったからいいんだ。」
「すみません。」

シュンと頭を下げて謝る彼女。
会ったら名前って呼べると思っていたけど、なんかそんな雰囲気じゃない。
それに、勇気もでない。
会いたかったのは、僕だけ?

すると、名前さんの横にいる女性が尋ねた。

「あなたが噂のヤマトさん?」
「はい。ヤマトです。」

噂の?
優しい目元が彼女によく似ている。

「名前の母です。いつも娘がお世話になっております。」

やっぱり名前さんのお母さんだ!
てことは、もしかすると横の男性はお父さん?よく見れば口元と鼻筋が彼女に似ている。
まさか着いてそうそうお会いするとは思ってなかった。
途端に緊張する。
僕は背筋をピシリと伸ばした。

「ご挨拶が遅れまして申し訳ありません。木の葉の忍のヤマトと申します。」

なるたけいい印象をもってもらいたい。
なら失礼のないように、ちゃんと早く言ったほうがいい。

「名前さんと真剣にお付き合いさせて頂いております。」

彼女のお父さんの目をしっかり見て言った。
視界の端で、名前さんは口を大きくあけて青い顔をしていた。
彼女のお母さんは、あらまぁ、と口に手を当てている。
もう一人の女性は、名前ちゃん、彼氏いるのー!?と驚いている。
そして、彼女のお父さんは……
口をポカリとあけて、フラリと倒れた!?

「だ、大丈夫ですか!?」
「あなた!」

咄嗟にお父さんの体を支えた。気絶してる。

「ヤマトさん、あの、実はお父さんには交際してる人がいるってまだ言ってなくて……。」
「えぇ!?そうなの!?」
「名前ちゃん、私にもなんで言ってくれないのよ!うちの息子の嫁にと思ってたのに、おばちゃんも倒れそうよー。」

うちの息子の嫁に?それは聞き捨てならない。

「おばちゃん、ごめん。」
「私は知ってましたよ。」

朗らかに微笑む彼女のお母さん。
おばさんはこんなビッグニュースみんなに知らせないとっと言って足早にさっていった。
小さい村は交際するとビッグニュースになるのか。
そこからは、僕は彼女のお父さんを背負って家まで歩いた。

ーー

彼女のお母さんは布団に横たわるお父さんの隣に座って言った。

「名前、まだ日が沈むまで時間があるしヤマトさんに村を案内して差し上げたら?お父さんもまだ目を覚まさないし、ね。」
「でも、小さな村だし案内するほどのものないもの。ヤマトさん、お疲れでしょうし家でゆっくりしましょうよ。」

身体はまぁ、疲れている。このところの激務のおかげで。
でも、手紙に綴ってくれたお気に入りの散歩道だったり、彼女が日々奮闘してきた薬剤室とかいろいろ実際に見てみたい気持ちの方が断然大きくて。
それに明日は朝早くに出発するし周れるとしたらこのタイミングしかない。

「案内して下さい。」
「……やめときません?」

なんだか乗り気じゃなさそうだけど。なんで?
そんな彼女を見てお母さんはくすくすと笑っていた。

「名前、こんな機会なかなかないでしょ。ぐるっと一周して来なさいよ。今日の夕飯の準備はお母さん一人でしておきますから、ゆっくりしてらっしゃい。」

彼女のお母さんに背中を押され、二人家を出た。
すると、名前さんは小さく溜息を吐いた。

「お母さんは意地悪だ。」
「どうしてですか?」
「見ての通り、小さな村でしょ。今から会う人みんなに私とヤマトさんきっとからかわれるのよ。お母さんは確信犯。案内したら?なんてちょっと面白がってるの。」

彼女の言う事は本当だった。
そこから会う人みんな僕らにちょっかいかけてきた。

「名前ねーちゃん、ついに男ができたんだってな!忍!?こいつ強いの?ちゃんとねーちゃんのこと守れよ。」
と、子ども達が言えば
「もー失礼なことは言わないの!ヤマトさんはね、上忍さんでとっても強いんだから!」
と、顔を赤くして言い返し

「名前聞いたぞ。ついに春が来たんだってな。」
と、おじさん方に僕らは囲まれ
「名前のことをよろしく頼むなっ。」
と、僕の肩をバンバン叩いてきたり

さっき村の入口で会った、おばさんとその他大勢のおば様方も押し寄せ、名前さんを肘で小突いてきた。

「いい男捕まえたじゃないのー!もうそこそこのお歳だし、みんなで心配してたのよ。しかもエリート忍者だってさっき聞いたわよ!やるじゃない!」
「はぁ、そうですかね。」

彼女は耳まで真っ赤に染めて、おかしな生返事をしていた。

なるほど。乗り気じゃなかったわけだ。
照れ屋な彼女にこの状況は拷問だろう。
僕も恥ずかしいとは思うけれど、本当に付き合えたのだなと実感できて嬉しくもある。

「もう家に帰りましょうよ。」

顔を赤くした彼女は僕の袖を引っ張ってお願いしてきた。

「まだ全然周ってないじゃないですか。名前さんが研究してた薬剤室も覗いてみたいですし。ほら、行きましょう。」

僕が先を歩けば彼女はもううんざりだといった表情でトボトボついてきた。
思わずクスリと、笑ってしまう。

「ヤマトさんまで私で遊ぶんですか?」
「いや、そんな訳じゃないけど。」

だって照れて仕方ない君が可愛いんだよ。
すると彼女の友達かな?声をかけられた。

「名前、私達にも彼を紹介してよね。」

これまた彼女はマズイといった顔で僕を見てきたから、思わずまた笑ってしまった。

「ほら、やっぱりヤマトさん私で楽しんでる!」

いやホント、必死な君が可愛い。