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帰る場所

空を仰ぐと、満天の星空。
森の中で周りに明かりがないから星の輝きがよくわかる。

任務で野宿ってのは、敵や獣の襲撃や食料の調達とかいろいろと面倒なことが多いい。
まあ、僕の場合は寝床に困らないだけマシなのだけれど。

そんな中で、楽しみといったら美しい星空を眺めることぐらいで。
自分で出した家の窓に手をつき、漆黒の闇の中に輝く星たちを見上げる。
綺麗だ。
こんなとき、隣に思い描くのはいつだって…そう彼女。
名前にも見せたいな。

きっと彼女は喜ぶ。
そうだな、まず、はしゃぐだろう。

”ヤマトさん、すごいですよ!
こんなに星がたくさんあったら、空も重たくなって星を落っことしてしまうんじゃないかな。一個ぐらい落としてくれないかな。”

まあ、そんなところだろう。
目を弓なりにして、ひとしきり騒ぐ。
そして次第に、うっとりと夜空に心奪われていく。

僕は君とは反対にどんどん星なんてどうでもよくなっていきそう。
空を見上げる君の横顔が綺麗で可愛くて、愛おしい気持ちが溢れ出しそうになって
抱きしめたい、とか、唇を合わせたいとか。
きっと頭の中はそんなことばっかりだ。

でも、君は空の輝きに夢中で僕がそんなこと考えているとは絶対に気づかないだろうな。
ちょっと悔しくて、
いいさ、別に手なんてださないよ
とか思うんだけど、欲望に勝てずに出す。
結局、いつものパターンだ。
ああ、早く会いたい。

内ポケットからお守りを取り出して、目線を手元に落とした。
いつでも持ち歩いているから、早くもくたびれてきてしまった。
僕の宝物

このところ、ますます思う。
絶対に死にたくないって
どんな危険な任務のときだって思う。
必ず里に帰る。
君のところに帰る。

だって僕の好きな人が僕の帰りを心待ちにしているんだ。
今回みたいな、少し日数のかかる任務から無事に戻ったときなんて、特にそう。

無事に帰った僕を見て、名前は少しばかり眉を寄せて今にも涙が零れ落ちるのではないかと思うような顔で微笑む。
泣きたいのか笑いたいのかわからない、そんな表情。
そして、君の唇は僕の欲しい言葉を紡いでくれる。

「おかえりなさい。」

幸せでたまらなくて、僕の胸は締め付けられる。
待っていてくれる人がいることがこんなにまで幸せなことだとは知らなかった。

早く言いたい。
「ただいま」って。
無事に帰るから。
だから、また僕にあの微笑みを見せて。

おしまい


次のお話は今夜は君を離さないです。
別ページにて二人の初めての情事編です。
下のnextからは繋がっていませんのでご注意を。