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私のお仕事

サクラちゃんと鍋パをした翌日、勇気を出して医療長である綱手様の部屋を叩いた。

こんな自己都合の急な長期休暇、怒られるのではとヒヤヒヤしていたが、思いの外願いはあっさりと受け入れられた。

綱手様と相談の上、出発は2週間後に決まった。
それまでに私が5日間抜けても大丈夫なようしっかり引継ぎをしておくように、とのことだった。

「しっかり親御さんと話しておいで。いい返事、期待して待ってるからな。」

ニッと笑って言う綱手様。
私の最高の上司だ。
この先もこの人の下で働きたい。


それから二週間は大忙しだった。
この5年間、私が指導してきた薬剤部のみんなはとても優秀だ。
私がいなくたって、きっとうまいこと乗り切れる。

でも、今ですらギリギリの人員で回しているので私が欠けるとなると薬の配給に滞りが出てもおかしくない。
だから事前に入院患者や一般の患者さんから必要とされるであろう薬を予想し前倒しで用意しておくことになった。

結果、毎日残業。

―――

あっという間に出発の前日になった。

この二週間は薬剤部のみんな総出で事前準備に取り掛かってくれた。
そのおかげで、なんとか今日は定時に上がれそう。

「みんなの協力のお陰で明日から5日間お休みをもらいます。本当にありがとう。みんなしっかりしてるし心配はしてないけど、何か少しでも不安に思うことがあればシズネさんに相談して下さいね。」

私が留守の間、シズネさんには薬剤部を気にかけてもらえないかと念のためお願いしてある。
うん、大丈夫だ。
ぬかりはない。

「…名前さん、ちゃんと帰ってきて下さいよ。」

すると、一番新人の下忍の子が涙ながらに言ってくれた。
やだもう、おばさんジーンときちゃうわ。

「馬鹿!おまえ!名前さんはなぁ、5日間で帰ってくるだろ!それに里に残ってくれるかどうかは名前さんが決めることだ。俺だって、名前さんがいないとなると不安だけどさ…」

私がいない間代わりに取りまとめてくれるシュン君は腕で目をちょっとこすって言った。
なにしんみりしちゃってるのよ!

「と、とにかく、5日間で帰ってくるからね!ね!」

そして、みんなが送り出そうとしてくれた時だった。
薬剤部の扉が大きな音を立てて乱雑に開かれたのだ。

「失礼します!急患です!抜け忍組織の調査に出た4名が何かしらの毒薬で昏睡状態。あと1時間で里に着くとの連絡です!おってシズネさんからの詳しい指示があるとは思いますが準備をお願いします!」

なんだとー!
帰宅してる場合じゃない!

つい2週間前も特殊な毒薬を使った負傷者が出ている。
その子も抜け忍組織解体のための調査だった。

この組織は毒薬に精通している。
まったく同じ物をそう何度も使うとは思えない。
前とはきっと違ったタイプだ。
実際に負傷者の血液を採取して調べてみないと詳しくはわからないけれど。

抜け忍組織は滝の国に潜伏しているって前にシズネさんが言っていた。
と、なるとあのあたりは湿地帯だ。
そこに生えている植物を思い浮かべてみる。
そして、前の毒の性質を思い出し、私ならあの毒をどんな風にアレンジしてさらに威力を上げるか考えてみる。

ただの勘だ。
でも、私の勘はなかなか良い線いくのだ。

閃いた毒の性質に対処できそうな解毒薬を考えて、みんなに指示をだした。

「あなた達は、この薬草をとってきて!今、手元にある在庫じゃきっと間に合わない。4人分だから、多めにお願い!」
紙に数種類の薬草を書き出し渡した。

「カナメちゃんは奈良家の人に連絡して!鹿の角が必要になるかもしれないわ!」
「シュン君と私はここで、薬草を煎じてシズネさんの指示を待ちます!」

私達の戦いが始まる。
絶対に負けられない!

ーーー

夜明け前、ようやく負傷者4人の様態は安定した。
やっと生きた心地がする。
薬剤部のみんなも疲れ切った顔。

あれから負傷者が到着し血液検査をすると、私の毒の予想はあらかた当たっていた。
でも、あと一種類薬草が必要だということがすぐにわかったのだが、今の季節だと里内にはないのだ。
この時期だと里から少し離れた森に稀に生息している。

稀にだ。
それでも探すしかない!

他部所の人にもお願いして月明かりを頼りに大捜索。
なんとか4人分集まった薬草。
だんだんと顔色が悪くなっていく負傷者。
マイクログラム単位の調合。
なんとかできた解毒薬で快復したのがついさっきだ。

私が初めの予想の段階であの薬草が必要だと気づいていたらな。
もう少し早く負傷者を快復させることができたのに。

私もまだまだだ…

それにしても眠い。
張り詰めていた緊張感が抜け、私もみんなも放心状態。

調合具が散らばる机に突っ伏しって、ボーと窓を見るとまだ暗いものの少しずつ空がピンクに染まってきている。

夜明けの空の色って好き。
綺麗。
このまま調合室でちょっと寝ちゃおうかな…

「名前さん、何時に出発ですか?」

そうだ!
私、村に帰るんだ!

時計を見ると、出発の一時間前。
朝日とともに里を出る予定なのに!

「ヤバイ!忘れてた!みんな後はお願いねっ!」

大慌てで飛び出した。
荷造りはもう済ませてあるのがせめてもの救いだ。
眠れなくても、お風呂だけでも入ってから出発したい。