その笑顔は太陽より眩しく
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「えーと、次の術は…は?『多重影分身』?げろげろり。出来るっつーのそんくらい」
【その笑顔は太陽より眩しく】
私はあの後、ミズキてんてーに唆されたフリをして猿飛のじっちゃんの部屋から例の巻物を盗み出した。
そのあとはミズキてんてーに指定された森で知らない術を習得したりしてたわけだけど…知ってる術の方が多くそろそろヒマになってきたところだ。
「しかし、猿飛のじっちゃん手ごたえ無さすぎワロエナイ」
あれで歴代火影の中でも有力者なんだとか。
………昔の私なら足蹴にして鍛え直しレベルだ。
「あーーーーーー、ひーーーーまーーーだってばーーーーよぉぉーーー」
書を持ち出して半日。
そろそろ私を捉えるために部隊が編成されていることだろう。
ということは物語が進み、この場所にイルカ先生とミズキてんてーがやってくるはずだ。
…本で読んだときはページ捲るだけの簡単なお仕事だったのに実際体験してみるとこんなにも時間が余ってしょうがない。
「そろそろだと、思うんだけどなぁ…」
「………見つけたぞ、コラ!!」
「ん?」
頭上からした声に顔を上げればそこには
「あー。鼻血ブー見っけ」
「バカ者!!見つけたのはオレの方だ!!」
「おー。いつにも増してツッコミにキレがありますなー先生」
私が感心していると呆れたように溜め息を吐く先生。
…と、私の背中にある巻物に目が留まったようで、困った顔で話しかけてきた。
「ナルト…その背中の巻物はどうした?」
「んぁ?これ?ミズキ先生がね。この場所と一緒に教えてくれたんだってばよ。で、この巻物の術を見せれば卒業間違いなしってね」
「ミズキが…!?っ…!!」
言い終わるか言い終わらないかの所で私はイルカ先生に突き飛ばされるってイテェェェェェッ!!!
分かってたからチャクラ集中させてたけどやっぱいてててっ!!!
そんな私の心情差し置いて大人の二人がシリアル…間違ったシリアスな話をしていた。
しかもミズキてんてーが巻物寄越せとか命令してきますが嫌ですしおすし。
とりあえず私はミズキてんてーをスルーして【何も知らない哀れなナルト】を装うことにした。
「うーん。つまり?」
「それは禁じ手の忍術を記して封印した危険なものだ!ミズキはそれを手に入れるためお前を利用したんだ!!」
あー、うん。知ってた。
ていうかそういやコレ禁じ手封印の巻物だっけ?あっはっは、あー…。
……ほぼ私と柱間で考えた術が載ってたんだけどそうかそうか禁じ手になっちゃってんのかいやー。参ったねコレ。
「ナルト…お前が持っていても意味がないのだ!本当のことを教えてやるよ!」
「!!バ、バカよせ!!」
はい、ミズキてんてーのショータイム突★入DEAHT。
イルカ先生は慌ててるけど、この光景を実際目にしてみるとなかなかどうして、楽しまずにいられようか。
私はミズキてんてーの方を見て聞く体制に入った。
「12年前…バケ狐を封印した事件は知っているな」
はい、地雷ぶち抜きご愁傷さまです。
あぁ、クラマちん怒んないの。抑えて抑えて。
私の中で件のバケ狐ことクラマちんが怒るのを感じて心の中でそう念じる。
そんな私に気が付かないまま、ミズキてんてーのワンマンショー()は続いていく。
「あの事件以来…里では徹底した『ある』掟が作られた」
「…ある掟?」
「しかし…ナルト!お前に『だけ』は決して知らされることのない掟だ」
「……どんな、掟なんですかぁ?先生」
あー。無理。驚いてる表情なんて作れないしクラマちん馬鹿にされたの腹立つし、反面道化師なミズキてんてーにこみ上げてくる笑いも抑えられそうにないし。
結論:早くぶっ飛ばそうそうしましょういいよね?
「答えは聞いてなぁーい。…てね」
「ナルトの正体がバケ狐だと口にしない掟だ」
「やめろ!!」
「イルカの両親を殺し!!里を壊滅させた九尾の妖狐なんだよ!!お前は憧れの火影に封印された挙句」
「やめろーーーーーーー!!!!」
「里のみんなにずっと騙されていたんだよ!!おかしいとは思わなかったか?あんなに毛嫌いされて!イルカも本当はな!お前が憎いんd――ブヘッ!!!!」
「!?」
ちょっと飽きたので顔面に蹴りを入れてやればミズキは黙り、イルカ先生は驚いたまま固まってた。いやー、愉快愉快。
「な、な…ななな…」
「もーすこし聞いてあげようかとも思ったけど。………で?私がバケ狐で?里の嫌われ者でイルカ先生にも嫌われてて?あとは?」
「な、ナルト…?」
「言いたいことはそれだけかよぉミズキてんてーよぉ…こちとらんなこととっくの昔に知ってたっつーの禿げろ死ねとりあえずバケ狐っつったことを君が謝るまで!踏みつけるのを!やめないっ!!」
「ひっ…や、やめ…グハッ」
いつか何処かで聞いたことのある台詞を言いながらミズキてんてーを足蹴にする私に呆然とするイルカ先生。
いや、まぁ当然の反応よのぉ。
「な、ナルト…お前…今…」
「ん?あぁ…自分が九尾ってこt…」
「私って言ったか?!」
「うぇぇぇぇいっそっちかよ!!!」
少しズレたことを言うイルカ先生に突っ込みながら私はミズキを足蹴にしながら影分身した分身に縛り上げさせる。
それにも唖然としているイルカ先生に、種明かしとばかりに肩を竦めて言った。
「知ってたよ?オレが九尾ってことも、イルカ先生がオレに自分を重ねてたから優しかったことも」
「それは違っ…!」
「あー、うん。勿論それだけじゃないのも知ってた。だからオレは先生に懐いたんじゃん?」
まだ暴れるミズキにクラマちんを沈めた拳で撃沈させ、イルカ先生に向き直る。
「イルカ先生の愛情、ちゃーんとオレっち受け取ってますよん」
「ナルト…」
「とりあえずさ、ミズキてんてーの身柄をじっさまに突き刺して…間違えた、突き出してゆっくりこの続きは話そうよ、先生」
そうイルカ先生に言い、恐らくこちらの様子を窺っているであろう猿飛のじっさまの方見る。
…あー、多分あの鳥だな。
「…ちゃんと、事情を話せよ?」
「話せることならねー。ほら、ミズキてんてーが起きない間に行こう?イルカ先生」
私がそれはもう良い笑顔で言えばイルカ先生は頷いて、ミズキてんてーを担ぎ里へと向かったのだった…。
その笑顔は太陽より眩しく
(ナルトのやつ…ワシに気が付いておったな…)
(さーてと、原作と違う行動しちゃったけどどうなることやら)