海底の宝物庫 | ナノ
救わない神様  [ 8/19 ]


「…もー、黙ってたのは悪かったってばよー。けどさけどさ、俺だって色々思うところがあってあーした訳でぇ」

「だからといって、卒業試験で手を抜くとはどういうことだ!というかいつからだ!いつから手を抜いていた!!」

「え?そんなの始めからですしおすしぃぃぃぃいいいってぇええええぇえぇ!!!!」


このナルトの世界に『ナルトとして』転生してから1番のドヤ顔を決めた瞬間、イルカ先生の渾身の拳骨が私の頭にキマッたのだった。



【救わない神様】



「ぼ、暴力反対だってばよぉぉぉぉ…‥」

「これイルカ。その辺にしておきなさい。…してナルト。先ほどミズキに言っておったことは誠か?」


殴られた頭を抱えて蹲る私に、火影のじっちゃんは私に目線を合わせるようにしゃがみ、そう問うた。
そんなじっちゃんに私はニヤリと笑って口を開いた。


「さて、心当たりがあり過ぎるんだけど、どれのことだってばよ?」

「…そうじゃな。とりあえずは箝口令のことじゃな」

「あぁ、それね。なら答えはyes。俺ってば、自分の中に九尾が居ることも、自分が人柱力ってことも知ってるってばよ」

「な、なんだって…!!」
私の言葉に目を丸くする二人に、人差し指を口元に持っていき、所謂内緒のポーズを取り言った。


「今から“私”が言うことは、二人を信用しているからこそ言うこと。だから絶対、誰にも言わないと約束してください」

「…!」

「…わかった。おぬしの話を聞こう。ナルト」


口調の変わった私に驚きながらも頷いてくれたイルカ先生。
まっすぐ私を見ているじっちゃんに私は満足気にに頷いて口を開いた。


「私には生まれた時からの記憶があるの。だから、自分が人柱力だとか、九尾が中にいるだとかも知ってるよ。九尾とは会話することもあるしね。

「なんじゃと…!!」


イルカてんてーがあまりの衝撃に口を開けない横で、溢れんばかりに目を見開いたじっちゃんが私の言葉を遮ろうとするが、それを制して私は続ける。

「だから、誰かが口を滑らした…あー、ミズキてんてーは滑らしたね。ついでに忍びらしくお口チャックが上手くなるように躾けた方がいいんじゃない?なんだったら私が引き受けますよ?えぇ是非とも」


正直、九喇嘛ちんに対しての暴言の数々、許してないですしおすし。


「まぁ、とにかくミズキてんてー以外が口を滑らしたわけじゃないですよ。ここまでで質問は?」

「ナルト…お前、女の子だったのか?」

「うわー、そっちかぁー」


恐らく初めの『私』発言からずっともやもやと気になっていたんだろう質問に、私は方を竦めながら頷いた。


「生物学的上は女子。戸籍上は男子。以上!他に質問は?」

「いやちょっとまて!!どういうことだ?!」

チッ、流されなかった。いつも流されてくれるくせにめんどくさっ…。


話の流れをぶった切ろうとした私にツッコミを入れたイルカ先生にバレないように舌打ちして、ため息を吐きながらじっちゃんを見れば、一つ頷いた。
それを見た私は面倒くさいのを隠さずに、腰に手を当てて言った。


「1つ。私は生まれて速攻人柱力になりました。2つ。人柱力とは体の中に尾獣を宿す者のことをいいます。3つ。この里において尾獣こと九尾はこの里において忌むべき存在です」

「な、ナルト…?」

「4つ。私の両親は私の生まれたあの日、この里のために命を命を落としました。5つ。当時のこの里で、女一人で生きていくには世間は優しくなかった」

「…!!!」


私の言葉に段々と目を見開いていくイルカ先生。
じっちゃんは笠を目深に被ってしまった。
そんな二人を横目に私は続けた。


「ここまでいえば、当時私を『男』としたじっちゃんや『一部の大人たち』の考えは理解出来るんじゃあないですかー?イルカせんせー」

「っ…あぁ。そうだ、な」

「分かって頂ければなによりです」


まぁ、世の中私を男として育てたような優しい大人ばかりでないわけで。
私が女として育てられていたら、心無いゲスな大人たちに欲望のはけ口にされた可能性もなきにしもなのだ。
その点でじっちゃんたちの判断は正しかったと思ってる。
っていうのも、『男』として育っているにも関わらず『そういう対象』として襲われたことがあるので言えることなのだが。


え?そのゲス野郎どうしたかって?フッフッフー。
永遠に使い物にならないようにしてやったわ


「と、まぁそんな理由で男の子として育ってますし?今後も体つきに差がでるまではこのままでいく所存です」

「そ、そうか・・・」

「そんなことよりセンセー。俺ってば俺ってば!ミズキてんてーしとめ・・・間違えた。捕まえたし、卒業試験合格でいい?」


私の言葉にイルカ先生はハッはして頷いた。
そして目を閉じるように言われ首を傾げる。


「えー?なんでなんでー?」

「いいから!早く目を閉じろ!!」

「ぶーっ。ほら、目ぇ閉じましたー」


私がそういえばイルカ先生が近寄ってくる気配を感じる。
それから布の擦れる音にじっとしていれば頭に何かが巻かれる感触。
こ、この感触は・・・・!!!


「うぉぉぉっ!!額あて!」

「似合ってるぞ、ナルト」

「って先生のやつじゃんいいの?」


先生の額を見ればそこにない見慣れた額あて。
それが今私の頭にあるとわかりそう問えば、嬉しそうな顔で頷いた。


「俺からの卒業祝いだ。・・・大変だろうが、頑張れよ。ナルト」

「っ・・・!あったりまえだってばよ!俺ってば、里一番の忍者になって、火影になるんだからな!!」




――――…



「さて、イルカせんせーにばらしちゃったけど大丈夫?」


まぁ、口が軽いタイプではなさそうだけど。
と、イルカ先生がいなくなった部屋で私が言えば、じっちゃんが神妙な顔で口を開いた。


「構わんだろう。まぁ、今後は女子として扱いを受けるやもしれぬが」

「あっはっは。まぁ確かに!けど、助けてくれる大人がいるのはいいことだよ」


救わない神様より救う大人ってね。


そう私がにやにやと言えば何とも言えない顔でじっちゃんがため息を吐いた。
それを見て眉を寄せながら出た私の声は思った以上に不機嫌さが滲んでしまったのは仕方のないことだと思います!


「なにさー。何か言いたいことがあるってばよ?じっちゃん」

「…記憶のこともそうじゃが、お主、まだわしらに隠してることがあるじゃろう」

「およよ。さっすが。気づきますよねそりゃ」


先ほどの会話のやり取りで私の言葉のニュアンスを正確に読み取ったじっちゃんが言った言葉に私は素直に頷いた。
けれどそれとこれとは話が別で。


「『今』はまだ時期じゃないんだなー。まぁ、一つ教えておこうかな?」

「ほう?」

「私は私のために、イタチを連れ戻すよ」


私の言葉に、じっちゃんの目つきが剣呑になった。
そりゃあ、現時点で『イタチのこと』知ってる人間は少ないからねー。
仕方ないねケフィアだNE!


「ナルト・・・お主はいったい何者なんじゃ・・・」

「・・・何度もいってんじゃん?俺は、火影になる男!うずまきナルトだってばよ」


ただ中身がチートしてるだけの、ね?






救わない神様

(いくら助けを求めても救ってくれない神様に祈るくらいなら、私のこの手で大切なものの未来を切り開いていく所存です)

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