偽りを貼りつけた顔
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「きれ〜〜にするまで家には帰さんからなっ!!」
「はいはいどうぞご勝手に。どうせ家に帰ったって誰もいないんで」
【偽りを貼りつけた顔】
あのあと口答えをした瞬間、イルカ先生の絶叫と拳骨をくらい、更には私が説教される原因となった歴代火影の顔に書いた落書きを消す作業にしていた。
正直、ナルトのように構って欲しい悪戯少年を演じなくてもいいのではないかと切実に思う今日この頃。
こんな幼稚ない悪戯をしつつ内心ブリザード吹き荒れているこの何とも形容し難いこの矛盾に、どうしたものかと最近頭を悩ませている。
「ナルト…」
「んぁ?今度は何ですかスケベてんてー」
スケベは余計だと怒られながら(だって本当の事だし)先生を見つめていれば、何故だか照れ臭そうに頬をかきながら先生は続けた。
ぇ、なにそれ気持ち悪いですせんせー。
「…ま…なんだ…それ全部綺麗にしたら、今晩ラーメンおごってやる!」
「マジでか。おかわりしちゃうよ?オレってば」
「おう、しろしろ」
よっしゃ、夕飯代が浮く。こりゃ張り切ってやるしかないっしょ。
「よーし、せんせー!オレがんばっちゃうよ!!」
――――…
「ナルト」
「んぁ?」
あのあと岩を文句のつけようがないくらいにピカピカに磨き、私はイルカ先生にラーメンをおごって貰っていた。
正直、家事も炊事も嫌いじゃないし、出来ないわけじゃないんだけど、たまにはそりゃ外食だってしたいわけで。
けどそれにはお金がかかるし、食費を浮かせたいお年頃としては奢りっていうのは凄く魅力的なお誘いだ。
そして満面の笑みを浮かべラーメンを啜る私を見ながらイルカ先生が困ったような顔で話しかけてきた。
「なんで、あんなとこに落書きした!?火影様がどーいう人達か分かってんだろ・・・」
「んなのあったり前じゃん」
知らないわけない。むしろ原作ナルトより先の知識のある私の方が歴代火影がどんなに凄いかも知ってるくらいだろう。
しかしそんな事をこの人に言うことでも無いので適当な理由を私は続ける。
「よーするにぃ、火影の名前を受け継いだ人ってのは、里一番の忍者だったってことでしょ?特に、四代目火影って里をバケ狐から守った英雄らしいし?」
そして私の(前世の知識故覚えている)愛するお父様だから尊敬してるに決まっている。むしろ、尊敬してない奴はマジで潰してやるくらいの勢いだ。
そんな私の過激な内心を知る由もなく、イルカ先生はそこまで分かっていて何故、という顔をしてた。
まぁ、普通はそーいう反応ですよねー。
「ま、だからこそ?オレはいずれ火影の名を受けついで先代のどの火影をも超えてやる。そして、里にオレの力を認めさせてやんよ」
で、まぁこれは二の次というか【ナルト】の野望なわけだけど。
なんというか面白そうだし?乗ってみるのもまた一興よね?いやぁ、図太くなったなぁ私ってば。
「ま、そのためにも明日は試験に通んなきゃいけないんだけどさぁ」
「ははっ!分かってるならしっかり予習しとけよ!!」
「へーへー分かってますよぅ」
試験もそうだけど、その前にやることもあるしねぇ?
レンゲを咥えながら明日の事を思い浮かべた私の顔はきっと悪人面なんだろうと思いつつ、それでも笑みを浮かべずにはいられなかった。
偽りを貼りつけた顔
(やーっと、【始動】って感じだよー。ねぇ?【ナルト】)