海底の宝物庫 | ナノ
格好いいってこういう事  [ 3/19 ]


「…ト、おい!ナルト!」

「んへ?」


【格好いいってこういう事】


ぼーっとしていた私の頭に、次の瞬間衝撃(物理)が走った。
あまりの痛みに声もなく蹲っていると、頭上からこれ見よがしに聞こえる溜め息。
その発信源は、私の頭に物理的衝撃を与えた私の担任、海野イルカ先生だ。
そんな先生をこれ見よがしに睨みながら、私は不満の声を上げる。


「いったいなー、先生。暴力はんたーい」

「全然反省してないだろう、ナルト」

「えー、してますよー先生」


そう、私はあの『うずまきナルト』に女として転生していた。
けど私を女だと知る人はごく一部で、しかも極端に少なく、私自身なるべく漫画で見たナルトに近いように振る舞っていた。

結果、落ちこぼれ男忍者ナルトの出来上がり。
実際は人目のない場所で高等忍術の練習をしたり、前世の諸々の記憶を頼りに漫画ナルトが現時点では使えない技を習得していたり。

漫画で読んだナルトは練習すれどあまり身につかない子だったが、そこはまぁ、なんの因果か転生してしまった特典なのか、はたまた私の精神年齢のせいなのか。
もし私がナルトだとか前世なんて関係ない普通の一般忍びであったなら、あのうちはサスケになんてまったく引けをとらない優秀な忍びに私は成長した。

まぁ、普段は漫画のナルトと大差ない振る舞いをしているので落ちこぼれのレッテルは張りっぱなしなんだけれど。

けど唯一原作ナルトと違うのは、何でかまったくもって分からないが、私はそこそこ女の子にモテる。
サスケのようなイケメンではないし、あえてナルトと同じ服に髪型を貫いてるから現時点で私がモテる要素全くないんだけど(というか整えたらマイラバー父上似のナルト君はイケメンだと思うんだけどねここでそれ言っちゃうと何となくナルシストみたいでいやじゃん?)何故かモテる。

まぁ正直、女の子にモテたところで私も残念ながら女の子なのでどちらかといえば困るのだけれど。


もうひとつ。私が落ちこぼれを装い留年し続けた理由。
それはうちは兄弟を何とかするためだ。

原作では誤解から殺しあうことになる二人を、事情とちょっとした私情から出来る限り阻止すべく、私はサスケが卒業する年まで(前世で漫画を読んでる時は同い年かと思っていたが、どうやらここではサスケの方が2,3個年下だったので)ウダウダとアカデミーに居座り続けた訳だが。



「漸く今年でそれも終わりだなぁ」

「?なんだ、ナルト。漸く反省したか?」

「だーかーらー、反省はしてますよー。後悔はしてないですけどねー」


私が馬鹿にしたように言うとイルカ先生はまた怒った。
別に私は、先生が嫌いではない。けれど好きかと聞かれれば答えは『No』で。
どうしても前世の記憶があるせいか、こういったお節介属性には抵抗がある。

まぁ、その結果が私の口から飛び出す先生を馬鹿にしたような捻くれた言葉の数々で。
いっそ癖とも言えるこの暴言まがいな言葉たちがこの人を怒らせてしまう訳だが。


そんな私の心境を先生が知る由もなく、私を指差しながら先生は続けた。



「明日は忍者学校の卒業試験だぞ!!お前は前回もその前も試験に落ちてる!!外でいたずらしてる場合じゃないだろバカヤロー!!」

「はいはいそーですね、いたずらしてる場合じゃないですね言われなくてもわかってますよコノヤロー」


私がそう言った瞬間、周りの同級生たちが、あっ、と声を漏らしたのに気が付いたけど知らん顔。
そんな私の言葉にキレた先生(短気だよなぁ)が復習テストを言い渡すと、クラスメイトから批判を受けるが軽く流す。


あー、どうしようかなぁ。やっぱりここは原作通りお色気の術使うべき?
あれ確かに使えるんだけど恥ずかしすぎて死ねるんだよね一応、私も花も恥じらう女の子(爆死)な訳で。
…まぁ、一捻りしてやってみますか。


そうして回ってきた番に、私は印を結ぶ。


「変化!」


私がそう叫ぶと辺りは煙に包まれる。
そして煙が晴れ現れた私にイルカ先生を含めた男子生徒が鼻血を出してぶっ倒れた。
それを見届け私はいっそ清々しいほどのドヤ顔で倒れた面々へと向けて言い放つ。


「名付けて、お色気の術ver.女体化イルカ先生」

「この、大馬鹿者ー!勝手にくだらん術を作るなっ!!」


鼻に詰め物を押し込んだままという何とも締まらない顔のまま、私を怒鳴りつけるイルカ先生。
しかし、鼻血を出しといて全くもって説得力もないので私は若干引きつつ呆れ顔で怒鳴るイルカ先生に言った。


「くだらなくなんかないでしょ。てか、鼻血出してぶっ倒れたスケベに言われたくないんすけどー?」

「ナルトー!!!」





格好いいってこういう事

(そして私は、また頭にたんこぶを一つ追加されたのでした)



  
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