兆し
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【兆し】
…こ………我らの神子………
俺を呼ぶのは……ダレ………?
神子…我らの羅刹………の神子……
え…何…?よく、聞こえない…羅刹の神子…俺の、こと……?
じゃあ、お前は……
……羅刹?我らの神子……の神子……時が…満ちる……白龍の、神子が…
白龍の神子…?来るのか?…この世界に……?
神子……我らの神子…白龍の神子を……
え…?何…何て……
―――――
「羅刹!待てッッ!!…って…あれ……?」
何だったんだ…さっきの…もしかして
「夢?あ、はは…あー、びっくりした」
俺は思わずそう呟いた。
俺が京にきてもう3年。
始めこそ戸惑いはしたものの、元から順応性は悪くなかったのも手伝い、この3年で大分馴染んだ。
晴明さんや泰明からすれば、俺の【気】が、この京に馴染んだということらしいが、陰陽道を歩み始めてまだ3年。
半人前な俺にはよくわからないんだけど。
「それにしても、さっきの夢…なんだったんだろ…」
あの声は、自分をこの世界へと導いた声と同じだった。
あれが恐らく、羅刹なのだろう。
「…白龍の神子…か…」
京に災いが起こりし時、天より来る龍神の使い。
…それが、白龍の神子。
…もしかして、これが世に聞くお告げってやつ?
「お、お告げ聞いちゃったよ俺…!すげぇぇ…!!」
「何が凄いのだ?雅」
「ふぎゃぁぁぁぁっ??!!」
誰も居ないはずの部屋に、突然した声に俺は飛び上がった。
そんな俺に声の主、安倍泰明が呆れたように口を開く。
「何という声を出している。葵」
「や、泰明…驚かすなよもう…」
声の主が泰明だと分かり葵は、ほっと胸を撫で下ろす。
「それよりどうしたんだ?泰明」
「…仕事だ、葵。怨霊退治に行く」
「なるほど。了ー解」
そう言うと葵は、出掛ける支度をし始める。
「…何だ、その面は」
「ん?これ?」
俺が手にした狐の面を見て、泰明は怪訝そうに言う。
「晴明さんに渡されたんだよ。羅刹の神子は、【羅刹の神子として】行動するときコレを付けなさいってさ」
「…そうか」
自らの師である晴明の意図が掴めず、泰明はとりあえず気にしない事にした。
「よし、泰明!行こうぜ!」
「…あぁ」
俺と泰明は、怨霊退治を行うため船岡山へと向かうのであった…
兆し
…時は…満ちたり…