海底の宝物庫 | ナノ
兆し  [ 14/19 ]


【兆し】


…こ………我らの神子………



俺を呼ぶのは……ダレ………?




神子…我らの羅刹………の神子……



え…何…?よく、聞こえない…羅刹の神子…俺の、こと……?
じゃあ、お前は……



……羅刹?我らの神子……の神子……時が…満ちる……白龍の、神子が…



白龍の神子…?来るのか?…この世界に……?



神子……我らの神子…白龍の神子を……



え…?何…何て……




―――――




「羅刹!待てッッ!!…って…あれ……?」



何だったんだ…さっきの…もしかして



「夢?あ、はは…あー、びっくりした」



俺は思わずそう呟いた。



俺が京にきてもう3年。
始めこそ戸惑いはしたものの、元から順応性は悪くなかったのも手伝い、この3年で大分馴染んだ。
晴明さんや泰明からすれば、俺の【気】が、この京に馴染んだということらしいが、陰陽道を歩み始めてまだ3年。
半人前な俺にはよくわからないんだけど。


「それにしても、さっきの夢…なんだったんだろ…」


あの声は、自分をこの世界へと導いた声と同じだった。

あれが恐らく、羅刹なのだろう。


「…白龍の神子…か…」


京に災いが起こりし時、天より来る龍神の使い。
…それが、白龍の神子。


…もしかして、これが世に聞くお告げってやつ?


「お、お告げ聞いちゃったよ俺…!すげぇぇ…!!」

「何が凄いのだ?雅」

「ふぎゃぁぁぁぁっ??!!」


誰も居ないはずの部屋に、突然した声に俺は飛び上がった。

そんな俺に声の主、安倍泰明が呆れたように口を開く。


「何という声を出している。葵」

「や、泰明…驚かすなよもう…」


声の主が泰明だと分かり葵は、ほっと胸を撫で下ろす。


「それよりどうしたんだ?泰明」

「…仕事だ、葵。怨霊退治に行く」

「なるほど。了ー解」


そう言うと葵は、出掛ける支度をし始める。


「…何だ、その面は」

「ん?これ?」


俺が手にした狐の面を見て、泰明は怪訝そうに言う。


「晴明さんに渡されたんだよ。羅刹の神子は、【羅刹の神子として】行動するときコレを付けなさいってさ」

「…そうか」


自らの師である晴明の意図が掴めず、泰明はとりあえず気にしない事にした。


「よし、泰明!行こうぜ!」

「…あぁ」


俺と泰明は、怨霊退治を行うため船岡山へと向かうのであった…





兆し


…時は…満ちたり…

  
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