13

 
ほんの少しの熱とほんの少しの重苦しさによって、ゆっくりとまぶたが持ち上がる。


「…………ん、」


閉ざされたカーテンの隙間から差し込む、微かな光。

チュン、チュチュン、と聞こえてきたそれは朝の訪れを知らせるものだろう。


いやに身体が怠い。

けれども起きなければ、と思考が働いた瞬間、ぼやりとぼやけていた視界に鮮明さが戻った。


「っ」


目の前に喉仏。

少し視線を上げれば、顎。

ぱちり、ぱちり、と二度ほど瞬きをしてゆっくりと身体を起こせば目覚めの原因のひとつであるほんの少しの重苦しさがずるりと動いた。


「…………はる……き……さん、」


ぼすり、重力に従ってベッドにダイブする筋張った腕。

それを視線でたどれば裸の春樹さん。

無論、見えているのは上半身のみ。下半身はシーツで隠れているので確認出来ない。


ああ、ええと。と、必死に記憶を探るも現状に結び付くような光景はまるで浮かばず、ただただ気怠さが増していくばかり。

しかし床へと視線を向ければ、散乱している服と空のワインボトルが二本。

勿論それは私と春樹さんのもので、嫌でも現状に結びつく。


すぅ、と息を吸って。

はぁ、と吐き出した。


よし、服を着よう。

寒くはないけれど、さすがにこのままの状態は好ましくない。

不用意に起こさないようにとそろり、ベッドから床へと足を降ろした。


「どこ、」

「っ」

「行くんすか」


瞬間、バランスを保つ為にベッドについていた手を掴まれた挙げ句、それを引っ張られた。

さすれば当然、私の身体はバランスを失い仰向けに倒れる始末。


「……いえ……あ、の、春樹さん」


痛くはない。

けれど、驚いてしまうからこういう事はやめて欲しい。

なんて思うのと同時に陰る視界。


「……昨夜は、春樹、って呼んでくれてたのに」


私の顔を見下ろす彼は、上下が逆さまで。


「……もう……呼んでくれないんすか?」


けれども、いつものようにへらりと笑っていない事だけは見てとれた。


これが噂の【××××】
 (……朝……チュン……?)
 
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