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不可抗力と言ってしまえば、無論それも当てはまるだろう。

全ての非が私にあるわけではないと私は自信を持って言える。


「霧嶋さん」

「……何でしょうか……阿佐ヶ谷くん」

「あの男の事とあいつが言ってた事を俺にも分かるように説明してくれると助かるんだけど」


が、しかし。

その非の大半が自身にある事も同時に自負している。


「それは、あの、少しややこしくて、」

「いいよ全然。話長くなっても」


否、厳密に言えば。

付き合っている人がいます、と岸本さんに嘘をついた昨日の私だ。


「それにこの前俺ん家来た時は何のおもてなしも出来なかったし。ゆっくりしてってよ」


まさかね、と思いはしたが万が一に備えていつもなら振り切っている阿佐ヶ谷くんの絡みをあえて受けながら正門へと向かった放課後。

そのまさかの万が一がまさにその正門で起きてしまって、一緒に居た阿佐ヶ谷くんを私の彼氏だと勘違いした岸本さんが昨日のキスの事を阿佐ヶ谷くんに謝ったのがおよそ三十分前の出来事。

ああ、でも、諦めるわけじゃねぇから、というはた迷惑な捨て台詞もご丁寧に添えてくれた。

そしてそれを聞いた阿佐ヶ谷くんはにこりと笑ったのだが目だけは笑っていなくて、その笑顔のまま俺ん家で話そうかと問答無用で彼の家へと連れられ今に至る。


「俺って、霧嶋さんの彼氏だったっけ?」

「いえ」

「じゃあ、あいつが勘違いしただけで、他に付き合ってる人が居んの?」

「いえ……いません」

「……告られたの……?あいつに」

「…………多分」

「多分?」

「そういうの、よく分からなくて」

「……」

「付き合いたい、て……好きだって気付いた、て……言われたけど……本気で言ってるとは思えないし…… 」

「……」

「それを、その……キス……されたあとに言われたから……つい、嘘を、」

「……なるほど」


あからさまに、彼の声は低い。

おそらく、ゴタゴタに巻き込んだ事を彼は怒っているのだろう。

私だって、岸本さんに似たような事をされて腹は立った。

となれば彼も右に同じだ。


「……ごめんなさい、阿佐ヶ谷くん。その、巻き込んじゃって」

「え。何で?全然巻き込んでくれていいけど」

「……え?」

「てか、諦めねぇってあいつ言ってたし、俺と付き合ってる振りしてる方が都合良くない?」

「……それは、そうなんだけど、でも、」

「まぁ俺は振りじゃない方がいいんだけど」


と、思ったのだが。

どうやら彼は違ったようだ。


だとしたら、彼は何に対して怒っているのだろうか。


「てか、霧嶋さん」

「……はい」

「不公平だから、俺もキスしていい?」


人間という生き物は、実に不可解だ。


嘘=墓穴
(……普通に、ダメです)

 

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