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面倒事を好まないのは、生まれ持っての性分だ。

手中にある紙へと一度視線を落とし、二つの選択肢を脳内に浮かべた。


一つは、学校(担任)へと電話をかけてこの旨を伝えるという選択肢。

もう一つは、ならば仕方ないと諦める選択肢。

勿論ここは迷う事なく私は後者を選ぶ。


「……霧嶋、これお前……場所違ぇぞ」

「……え」


と、帰宅の文字が残った選択肢を押し潰した瞬間。

頼んでもいないのに、岸本さんは私の持つ紙を覗き込みながらそう言い放った。


「え。あ、ホントだ。これに書いてる場所、ここじゃないよ。霧嶋ちゃん」

「……え」


そんな彼に何故か便乗する岸本さん友人。

岸本さんの発言に何を思ったのか、裸足のまま外へと出て来て紙へと視線を落としている。


「……そう……なんですか」


ああ、これぞありがた迷惑。

間違えたのは私だが、そんな親切はこれっぽっちも求めてなどいない。

寧ろ、そこは見てみぬふりぐらいして欲しかった。

気付かなければ罪悪感など抱かずにこれを終了させれるのに、彼の発言で全てが台無しだ。

しかしそれを認識してしまった以上は、再び阿佐ヶ谷くんの家を探す他はない。

ここでそんなの知ったこっちゃないとバッサリ切り捨てれるぐらいのメンタルがあればよかったのだが、それならばそもそもプリントを届ける役目など申し出ていないだろう。


やれやれ。

我ながら、厄介な性格をしている。


「……探してみますね」


と、自身への呆れに対してため息を密かに吐き出しながら、教えてくれた事に対しての感謝を声にしてまた頭を下げた。


「てか俺そこ分かるし連れてってやるよ」


瞬間、頭上から降ってきたその言葉に私は自分の耳を疑った。


親切心=危険信号
(やっぱり、帰ろうかな)

 
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