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自分の責任だとは思いたくない。
無理強いをしたわけではないのだから。
しかし、どうにも責任を感じずにはいられない。
「……いちまる……よん、」
担任が書いたメモを頼りに自宅とはほぼ反対な位置するアパートまで足を運んだのは、当然ながらモラルの問題だ。
「……ここ……だよ、ね、」
表札はないけれどおそらく間違いはないだろう、とメモと部屋番号を数回交互に見てインターフォンを押した。
「…………あれ……?」
だが、どうわけか応答がない。
数分待ってもう一度押してみたけれどやはり反応はなくて。
病院に行っているのかもしれないから、担任に頼まれたプリントを郵便受けに入れておこうかとも考えたけれど。
万が一、気付かれなかったら届けた意味がなくなってしまう。
となるとやはり、彼が帰宅するまで待つしかないのだろう。
どこか、この近辺で時間が潰せるような所があっただろうか。
「じゃあなー」
「おう、またな」
なんて思考を巡らせていたら、ガチャ、と扉の開く音と二つの声が鼓膜を通り抜けた。
「て、あれ?霧嶋?お前何してんの?」
「…………岸本……さん、」
が、残念ながら開いたのは私の目の前にある扉ではなく左隣にある扉だった。
左隣=偶然
(あなたこそ、何故ここに?)