時にそれは鎖となりて
いっそのこと、怒鳴って、喚いてくれた方が楽だと思った。
「っ……や、も、」
「……サエコさん」
「……リツ……く、っん、あっ、やっ」
「可愛い……けど、リツって……呼んでください」
甘えるような声色で、甘えた言葉を囁くくせに。
乱れた吐息を撒く彼は、快楽を生み出すその行為を止めようとはしない。
「っん……あっ……やっ、あっ、」
「……サエ……コさんの、声……エロくて……好き」
彼のもたらす快楽に溺れてからどれだけの時間が過ぎただろうか。
全く味のしない食事を終えて、息子と二人で帰宅をすれば、会えますか?と彼からの着信。
断れば余計拗(こじ)れるのではと危惧した結果、彼の住むマンションに出向いたものの。
怒るでもなく、話を蒸し返すわけでもなく。
ただただ、愛してます、と。
抱き締められ、キスをされ、猫のようにすり寄られ、あとはもう流され為されるがまま。
「……り、っあ、もっ……や、あっ、」
「……俺に、感じてくれて……る……顔も、好き」
「っ」
収集がつかないほどにモメめれば、それはそれで別れる口実になるだろうかと密かに期待さえしていたというのに。
まるでそれを妨げるかのように、ひたすらに愛をさえずる彼は私のそんな狡猾な思考さえも見通していたと言うのだろうか。
「あっ、あっ、や……あっ、」
「……っ……サエコ、さん」
「……リツ、く……っん、」
「……愛して、ます」
あなただけを、と。
ぼそりと呟いたあと、彼はかぷりと首筋に噛みつく。
「んっ」
ぴり、とした痛みが確かに走ったのに。
何故か身体は、びくん、と揺れた。
時にそれは鎖となりて (このまま、あなたを閉じ込めてしまいたい)
(……っ、)