愛となんたらは紙一重 | ナノ

天使と悪魔の融合体



一難去ってまた一難。

なんて言葉は今までに何度か耳にしてきたけれど。


「あ、母さん。ちょうど良かった。週末空いてる?夜」

「ん?特に予定はないけど」

「じゃあ空けといて。飯行こう。皆で」

「……皆?」

「俺と母さんと父さん」


一難去ってないのにもう一難。

なんて、本気で笑えない。


「嫌よ。父さんに会うならあんた一人で会いなさい」

「俺はそれでもいいんだけどさ、父さんがどうしても、って」

「知らないわよそんな事。とにかく、断っておいてよね」


苛立ちを隠しもせず、半ば八つ当たり気味に言葉を返せば何故か息子は、きょとん、とした顔をする。

かと思えば、あ!そうか!みたいな顔をして、にや、と口元を緩ませる。


「リツ先輩と付き合ってるから?」

「っは、な、何言って」

「え。だってリツ先輩が」


言ってた、ってか?

ああ、なるほどね。


「それこれとは関係ない。口の軽い男は嫌い。中身の軽い男も嫌い。だから私は行きません」

「ふぅん」

「何よ」

「父さんにやり直したいとでも言われた?」

「っな」

「やっぱり」


はん、と鼻を鳴らして何とかこの場を凌ごうとすれば、的を射たその言葉に返事が詰まる。


「あのさ、母さん」

「……何」

「リツ先輩との事はさ、母さん自身その時の記憶がなくて納得してないんだろ?」

「……」

「で、父さんの申し出を受け入れたくないのは意地もあるんだろ?」


昔から勘のいい子だなとは思っていたけれど、まさかここまで人の心を読めるようになってるなんて。

子供の成長って、恐ろしい。


「俺さ、母さんには本当に感謝してるんだ」

「……」

「どんな時も俺を優先してくれて、父さん居なくても寂しくないように、って色々してくれて」

「……そんなの、当たり前、」

「当たり前じゃないから感謝してんの」

「……」

「だからさ、これからは自分の気持ち優先しなよ。日常にしろ、恋愛にしろ、な」

「……何か、生意気」

「生意気上等。父さんから逃げるなよ。本気で無理なら相手の目を見てちゃんと伝えなきゃ」

「……」

「でないとこの先ずっと、モヤモヤすると思うよ?」

「……」

「な?」

「……分かった」


だけど、にこりと微笑んで私の幸せを願ってくれる息子は天使そのもの。

こういう成長の仕方なら大歓迎だ。


「マジで?っしゃ!」

「っちょ、何」

「やー、母さん連れて来てくれたら小遣いくれるっつうからさ」

「……何だと」

「今月飲み会多くてピンチだったからマジ助かった!ありがとな、母さん」


なんて、思えたのはほんの一瞬だった。


天使と悪魔の融合
 (っ騙したわね!!)
 (え?嘘は言ってないよ?)


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