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渡されたものはただひとつ、"cat"と彫られた弾だけだった。


「……何を、なされているのですか」

「あら。分からない?」


傷を縫い、改めて告げられた任務は"キャット様"の護衛。

無論、二十四時間。

休みなどありはしない。

故に、ひとつ屋根の下で寝食を共にするのは最早当然の事で、彼女の所有する屋敷に住まう羽目になってから今日で丁度一週間。

直属であろうルーシィは一日のほとんどを"キャット様"の側で過ごすもこの屋敷に住んでいるわけではないらしく、日付が変わる辺りから陽が昇り始めるまでは"キャット様"と実質二人きり。

とはいえ、雇った側と雇われた側。

例外を除き、間違いなどそれこそ起こるわけもないのだが金と権力を持ちつつも表舞台に立てない人間は無意味に戯れを始めたがる。


「……護衛は、初めてではありませんが、服を脱いで、座って、目を閉じていろと命ぜられたのは初めてなので」

「あらおめでとう、初体験ね」


真っ当な返答を期待していたわけではなかったが、やはり彼女からの返答に答えというものは存在していない。

命ぜられるがままに服を脱ぎ、彼女が指したソファに腰かけ、目を閉じたものの。

胸部から腹部へと降りていった感触の正体がまるで掴めず、疑問符が生まれたのだがどうやら彼女は教えるつもりなど毛頭ないらしい。


「楽しいわね」


ふふ、と。

お決まりのそれをこぼしながら、そのまま朝まで寝ててちょうだい、と彼女は音を放つ。

つまりそれは、非常時以外で動く事は許さないという事だろう。

それにどんな意味があるのか。知ったところで到底理解など出来ないだろうから、目を閉じたまま素直にイエスと呟いた。


「お休みなさい、ナイト様」


ちゅ、と短いリップ音が鼓膜を伝ったのと平行して、額に舞い降りた柔らかい感触と微かな温もり。


「いい夢を」


酷く、嫌な予感しかしなかった。
 

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