Not interested
二十四時間、休みはない。
とはいえ、プライベートというものは誰に対しても必要なものだ。特に女性の場合は。
「……あの、」
「何だ」
「……は、話があります、」
着替えは勿論の事、トイレ、シャワー、就寝中、等々、他人が居ては儘ならないものが多く存在する以上、僅かだとしても一人になる時間は訪れる。
無論、毎日使用する時間と部屋が違う為それを狙って"キャット様"の元を訪れる者はいないのだが、だからといって離れて良いのかといえばそうではない。
いつ、如何なる時も素早く対処出来るように隣接する部屋で待機をするのが基本で、それは己にとってもプライベートな時間となる。
「だから、何だ、と聞いている」
「……え、あ、たっ、立ち話で済ませる気なの?」
起床時間が早かった為か、先程まで行われていた荒々しいお食事のせいか、屋敷に着くなり寝室に向かった"キャット様"。
当然、己も隣接する部屋での待機を名目に銃とナイフの手入れを始めた。
丁度その瞬間だった。
「……言葉が交わせる距離に居る。十分だろう」
コンコン、とノック音が静かに響き、ルーシィです、と聞いてもいないのに名乗られたのは。
「っ、貴方ね……まぁ、いいです。嫌味を言いに来たんじゃない……そう、お礼……お礼を言いに来たんです」
「……」
「あの、ありがとうございました。貴方のおかげで私は怪我せずに済みました」
深々と頭を下げるのは"キャット様"の側に仕えたが故のものなのか。
ゆっくりと持ち上がる頭と彼女の視線。心なしか耳と頬が赤らんで見えるのは、彼女が己に向ける視線から察するにおそらく自惚れではない。
「そうか」
それは良かったな、と。
会話を断ち、扉を閉めようと試みる。
「っあの!」
「……何だ」
「入れてもらってもいいかしら?」
しかしそれは叶わず、それどころか、ずいっ、と一歩分の距離を縮められてしまう。
「断る」
いいかしら?と聞きながら、もう既に半身は廊下から部屋側に入っている。
あれほど嫌悪感と敵意を剥き出しにしていたくせに、あれしきの事でころりと裏返ってしまえる女心というものにはおそらく死ぬその時まで悩まされ続けるのだろう。
尻軽とまでは言わないが、その行動力をもっと別の事に生かしてもらいたいものだ。
「……っ」
「失礼」
「……おい、」
などと思えば、またもや発揮される彼女の謎の行動力。
ドンッ!と身体を押され、数歩後ずされば懲りずに彼女は距離を詰める。
「本当に私を拒みたいのなら力づくで出来るでしょう?けれど貴方はしなかった」
「……」
「……女に……恥をかかさないでもらえる?」
積極的な女は嫌いではない。
だが、好ましいとも思わない。
「……盛ってるところ悪いが、あれは別にあんたを助けたわけじゃない」
「……っな、さ、さかっ……っ、」
「無意味に喚かれても迷惑だから、最悪、手や足を捻る程度で済ませようと思ったまでだ」
「……な、によ、それ、」
「分かったら、もう出て行ってくれ」
はぁ、と思わずため息がこぼれた。
prev /
戻る /
next