恋愛の沙汰もなんとやら | ナノ


▽ ふらいんぐサンタ


 
馬鹿馬鹿しい。

なんて、強がったところで誰も見てやしないのに。


「…………あー……イライラする」


べたりと自分の席で机の上に寝そべり、だらりと手を垂れさせる。

あの二人をずっと見ている必要もねぇな、と教室に戻りはしたものの、どういうわけだか身体が動かない。

学校のある日は毎日一緒に帰っていたけれど、別に約束してるわけでもないし、先に帰ったところで彼女は怒りもしないだろうからさっさと帰ればいいのにと思うのに。


「…………何、話してんだよ、」


焦りとか、不安とか。

嫉妬とか。

そういうのがたくさん積み重なって、イライラを増やして行く。

ドロドロした感情が溢れて止まらなくて、だせぇし、カッコ悪い。

やっぱ、もうさっさと帰るべきだな。


「……あ、あの、」

「……ん……俺?」


なんて思っていたら、どこからともなく聞こえたか細い声。

だらけた姿勢はそのままに、チラリと視線だけをそこに向ければ出入り口のところに女が居た。


「……は、はい……あの、」

「うん?」


俺?とか、一応言ってみたけど、ここには俺とその女以外に誰も居ない。

敢えて聞いたのは、多分、暇つぶし。


「あのっ、わ、私……とと、隣のクラスの、ははははら、だ、です」

「……ははらだ?」

「ち、違います……ハラダ……です」

「ハラダさん、ね……俺に何か用?」


帰るべきだと思っているのに、こうして知らない女とでも話していればアユが来るかもしれないと馬鹿げた思考が過(よぎ)って。

普段なら振り撒かないような愛想笑いさえ、薄く浮かべてしまう。


「あの、シノハラ君は、私の事知らないと思うけど」

「……」

「わ、私は……その、」

「……」

「……えと、あの、」


だが、待てど暮らせど彼女は来ない。

もごもごと、何かを言いたげにしながらも全く言い出す気配のない女にまた違うイラ立を覚えて、十数分。

体感では半日くらいに感じるそれをよく堪えたなと自分でも思う。


「……ハラダさん」

「っは、はい」

「……勘違いじゃないなら、だけど……クリスマス、誘おうとしてくれる?」


しかしそれも、そろそろ限界なようで。

ゆるりとした口調で投げ掛けたその問いに、女が頬を赤く染めながらコクコクと頷くものだから。


「……携番、教えて」

「え、あ、は、はい」


これもまた、お節介サンタからのプレゼントだろうか、と携帯を取り出した。



 (アフターケアもバッチリ、て?)
 

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