恋愛の沙汰もなんとやら | ナノ


▽ 意地悪神様の試練B



感情の起伏は激しい方じゃない。


「シノハラ君」

「っえ、」

「ちょっといい?ってか、いいよね」


されど、緊急時となればそうもいかなくなる。

元々、意識してクールを装ってるわけでもない。

身内が死に至り、不本意とはいえ恋人といえる人物が行方不明で勿論連絡も取れないとなれば、誰だって焦りはするし、余裕なんてなくなるものだ。


「き、きの、した……?」

「もういいから、それ」

「……え?」

「ユアから全部聞いた。今までのが全部フリだったって事も含めて、全部」


ちょっといい?

なんて聞いておいて、実際は有無を言わさず人気のない裏庭へと連行。

HR開始まであと二分弱。担任は割と時間ぴったりに教室へと来る。

だが今は、出席を取ってもらってる場合じゃない。


「どこに居るの?」

「……え?」

「キリヤ」

「……え、と……それ、だ」

「誰?とか言わないでね。さっきも言ったけど、全部聞いたの」

「……」

「オドオドしてるのとか、観覧車が嫌いなのとか、話し掛けたら逃げるのとか、泣いたのとか」

「……」

「全部フリだったのは聞いた。だからもうそれをする必要ないよ」


眉を垂れ下げ、あからさまな困惑を顔に張り付けている彼だがユアに何もかもを聞いたあとでは全てがわざとらしく思えて仕方ない。

ジ、というより、キ、と睨み付けるような視線を彼へと向けた。


「…………何だ、」

「……」

「意外と口軽いんだな。あいつ」


すると、彼の態度は一転。

はぁ、とそこそこ大きなため息と共に冷たい声を吐き出した。


「ま、だからって何で俺に聞くわけ?えっと誰だっけ……キリヤ?って人がどこに居るかなんて」

「……知ってるんでしょ?」

「知らねぇ」

「シノハラ君。お願いだから教えて」

「だから、知らねぇって」

「……」

「まぁ仮に、知ってたとしても」

「……」

「タダじゃ教えねぇよな。普通は」

「…………何すればいいの」

「何も。言ったろ。仮に、って。例えばの話だ」

「……」

「……もういいか?授業にもど」

「何でもする」

「……」

「……何でも……する、から……だから、」

「……ふぅん」

「…………何」

「必死だな、と思って」

「っあんたね、」

「いいよ。じゃあこうしよう」

「……」

「居場所は知らねぇけど連絡は取れる。だから、電話繋いでやるから説得しろ」

「……説得?」

「うん、って言わせればいい」

「……何それ」

「知る必要ねぇよ」


かと思えば、くつりと喉を鳴らした。


意地悪神様の試練B
 (で、どうすんの?)
 (…………する……するよ、説得)


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