中篇 | ナノ

本のメモ


20140803


DA(どこか遠い、あの夏のような)

「なんだかずっとあなたに会いたかったような気がする」

ほんの少しだけ、昔話をしてあげる。








その日は、雨だった。

蝉時雨が遠く感じる。
延々と続く大合唱が遠ざかって行く。
曖昧な意識のまま、夕暮れ。
夕立だったと気付いたのは、閉館間近になってからだった。
連日の真夏日にバイト先の博物館は閑散としている。
朝一番と夕方に夏休みの自由研究探しの小中学生が来るぐらいだ。
今日は酷い夕立だから、それも無いだろう。
仮にも五つある国立博物館の中で、最も近代科学に特化し新しく設立されたプトレマイオス博物館であるのだが、普段あまり客は訪れない。
時折特別展の時にツアー客が組まれたりする事もあるが、学園都市にあると言っても近隣の学生は普段からそんなにたくさんは来ない。
大学生のニールにとって、この博物館の学芸員というアルバイトは穴場でもあった。
だからだろうか。
ツアー客か親子連れ、それと幾人かの小中学生しか見当たらないこの博物館に、珍しい同年代が一人で来ていたのは嫌でも目についた。
……否、その人物が、ニールが見回りで館内を一周して戻って来てもずっと同じ展示物の前で立っていたから、自然と意識してしまったのかもしれない。
しかもそれが、二、三日続いている。
気にならない方がおかしかった。
他のバイトの学芸員は気味悪がって近寄ろうとしない。
「……気になるんですか?」
「……え?」
「旧世代の遺物なんですよ、それ」
「はあ……」
思い切って声をかけてみた。この博物館にしては珍しい、大型の歴史的出な展示品だ。
旧世代、世界がまだ沢山の人種・国に別れていた頃の大型演算処理機らしい。
その基幹部分のシステムプログラムは他の機械へ移し替えられ、今はこのとても大きな外枠だけが残って展示されている。
「凄い精巧な作りなんですよね、それ」
近代科学の上昇の要となった歴史的価値と共に、外見の芸術的な観点から保護の対象として月にあったものを地上で保管する事になった、と少し説明してみるが、熱心に見ていた割りに食いつきが無い。
「あ、初めまして。ここで学芸員やってるニール・ディランディです」
「……アレルヤ、です」
よろしく、と手を伸ばしてみる。しかしその手は虚しく空を裂いて、アレルヤ、と名乗った青年はそのままニールの横をすり抜けて博物館の出口へと向かって歩いて行った。
長い黒髪。話してみた印象は同年代より少し下かに思えた。声がまだ少し、高い。
もしかしたら少年と言ってもいいかもしれないその青年は、艶のある黒髪を雨に濡らし帰って行った。
「ねえニールさん?あの人に喋りかけたの……?」
「ああ……でもなんか、無口で会話は全然……」
「あの人いつもあそこにいるのよね。これ、いちおう目玉の展示物の一つなのに、全然人が寄り付かないったらありゃしないわ」
先輩学芸員から、愚痴のような言葉を掛けられる。
「いつもあの人、あそこでぶつぶつ言ってますよね」
遠くから見ていただけだったから、何を言ってるかは聞き取れなかった。
しかし、まるで展示品に語り掛けるかのように、彼の唇はたどたどしくも、何か言葉を紡いでいるように思える。
「そうなの?」
「えー?あれだけぶつぶつ言ってるんですよ?俺、気になって気になって仕方なかったんですから」
しかし先輩学芸員は、今まで知らなかったように驚き、そしてげんなりとした表情で訴える。
仮にも客なのにその態度は……とニールは思ったが、それを観察していた自分もどうかと考えて言葉にはしなかった。
「ふぅん……じゃあ、ニールさん。次は博物館では静かに、って注意してね?」
しまった、と思った。
暗にあの厄介な客人をあしらう様に、と仕事を増やされてしまった。


――――――――――




次の日もアレルヤと名乗った客は来ていた。
大型演算処理機が展示されている場所は吹き抜けの大きなフロアになっていて、休憩所代わりにベンチや椅子が複数用意されている。
その一つにアレルヤは腰掛けて、また遠く展示物を眺めていた。
今日は何も呟いていない。椅子の肘掛けに肘をついて、伏し目がちに遠くを見ていた。
「こんにちは」
「…………………………………………ディランディさん、でしたっけ」
もの凄く時間がかかった。そう、と言うと、どうやら本気で確信が持てなかったのか、酷く安心したように息をつく。
「えーとアレルヤくん、でいいのかな」
「……僕、女の子に見えますか?」
「ああいや、年下かなと思って」
少し不服そうな視線をニールに向けて、アレルヤはじゅうろく、と答える。
「16!俺は21で、大学生」
「……そろそろ就活なんじゃないですか?」
「うんそう。俺、ここに就職するんだ」
「……××大学ですよね」
「よくわかるね。……これ、好きなの?」
博物館から大学まで割り出せるくらい調べるとはよっぽどだなあと思いながらも、あまり深く追求はしない。
いつもここにいるから、と言葉を付け足してみるがアレルヤは返事もせず視線を展示物へと向ける。
「……俺も好きなんだ、これ」
何処かアナログな雰囲気がある機械だった。
中を開けば歯車がありそうで、期待をしてしまう。
中身は何百年と前のコンピュータを基礎としていて、しかしその基礎機関は今でも通用する内容を保持していた。
大きさもさる事ながら、それ以上の膨大なデータがここには積み重なっている。
「理由は分からないけれど、研修で初めて来た時、すごく惹かれた」
「ここ二、三日、君がずっと来ていたから。なんだか声を掛けたくなったんだ」
「………………なんだか、無理してません?」
「え?」
「話し方。客で年下だから、って凄く言葉遣い気にしてるように感じます」
「……解った?」
ああしまった、と頬を指先で掻く。
社会人として自分はまだまだ未熟だと言い当てられてしまった。
しかしアレルヤは嫌そうな顔もせず、そのままこくりと頷いた。
「あと、誰からか僕を追い払え、とか言われたんでしょう。大丈夫です、もう来ません」
しかし、頷いた後そのままの表情で、さらりと悲しい言葉を言う。
帰れなんて言ってない。もう来るなとも思ってない。
「おいちょっと……」
言うだけ言って帰ろうとするアレルヤの手をニールは引いた。
「そんな露骨に嫌そうな顏するなって」
そう言いつつも、アレルヤの顔は依然無表情のままだった。
くるりとした銀色の瞳はまるで鏡のように、そのまま真っ直ぐニールを見た。
子供のように思えたが、16とはいえ大人の瞳をしている。
しかし、あまりにも真っ直ぐにこちらを見るものだから、やはり子供なのだろうか。
「金払ってるんだから、お前はここの客だろう?追い払う理由が無い。」
そんなアレルヤに感情で訴える前に、まず正論を唱えた。
確かに注意はしろと言われたが、追い払えなんて。
ただでさえ集客数の少ない博物館だ。お客様は神様です。そこまで訴えはしなかったが、考えられる事を素直に伝えようと言葉を並べる。
「俺の言葉遣いが微妙だったなら、それは謝るけれど」
「別に気にしてません………………ただ、」
伝わって来てしまうから、とそう言うアレルヤの瞳に、色が宿った。
今の今まで無表情だった。
悲しい色だ。
そんなアレルヤの手を、ニールは離す事が出来なくなってしまう。
今度こそ振り解いて行こうとするアレルヤの手を、ニールは強く握り直す。
「じゃあお互い様、っていうことで。明日も来るよな」
「え……」
悲しそうな顔なんて、させるつもりなど無かった。
どう言えば喜んで貰えるだろう。
だからニールは、ニール自身の言葉で飾らない思いを音にしたためる。
「来るよな?」
有無を言わせないニールの言葉に、アレルヤは尻込みした。もう来ませんなんて無意味な意地を張ってしまった自分に、なんて言葉を言って来るのだろう。
「……来て、いいんですか……?」
アレルヤのきつく結ばれた口許が解かれる。
戸惑いながら、眉を下げてニールの顔色を伺う。
「誰もダメだなんて言ってないよ」
「……そう、ですよね、」
お互いそれはわかり切った事だ。
少しアレルヤの肩が落ちる。
「明日来てくれたら、一日一緒に回ろう」
「えっ」
「お詫び。……言葉遣いはこのままだけど、オッケー?」
「いいんですか?一日中だなんて、他のお客さんだっているのに……」
「そんなにお客さんがいれば、次の日にしよう」
「ええっ……」
「次の日もダメなら、その次の日。その次の日もだめなら、その次の次の日に」
「……って、アレルヤの用事もあるよな」
「……アレルヤ?」
「……あ……」
「やっぱり嫌だった?」
「いいえ、そんな!……ただ、昔に似たような事を言われたような気がして……」
「へえ、誰に?」
「……貴方に……」
「俺?」
「…………ご、ごめんなさい!今日は帰ります!!」
そうしてやっとの事でアレルヤはニールの手を振り解いて走って行った。
ガラス張りの壁の向こうをみれば、また雨が降っていた。


――――――――――



子供の頃から僕は、他の子とは少し違っていた。
それに気付くことが出来たのはわりと早く、その違いは明確には分からなかったけれど、なんとなく違う、という事を理解した時から、周りに馴染もうとした。
上手く行かない事もある。
ただ、雨の日は。
どうしてもその衝動が抑えられず、僕は施設の外へと飛び出した。
僕が飛び出すと周りの子供たちもこぞって出て来て怒られたりもした。
だから大人になるたび、こっそり、一人で雨に撃たれる。
酷く安心した。
世界と一つになっているような。
或いは、幼い頃に離れてしまった母に抱き締められているような。
いやそのどちらとも違う。
その雫は誰かの涙で、手であり、身体であった。
誰かに包み込まれている。
何かと、一つになっている。
身体の中に眠る傷跡をなぞる。
一体何処でつけられた傷なのだろう。
わからない。けれど、痛みは、無い。

『つぎのつぎの、そのまたつぎくらいでいいよ』

そしてその言葉を呟いた。
どういう意味かは解らない。
魔法のように、その言葉は雨に撃たれる僕に語り掛けた。
いつかの未来に聞いた言葉のような、寝物語の過去に唱えられた呪文のような。
誰かにその言葉を告げられてとても嬉しかったのを覚えている。

『次の日もダメなら、その次の日。その次の日もだめなら、その次の次の日に』

そして昨日のニールの言葉がリフレインした。
台風が近付いているのか雨足が強く、昼になると警報でも出るだろう。
足取りは重くとも、博物館に向かう。
あの博物館に、あの展示物に、自分はどうしてこうも惹かれてしまうのだろう。

「アレルヤ、びしょびしょじゃねえか!」

博物館の入口で、ちょうどニールと鉢合わせした。
物凄い雨風であったにもかかわらず、ニールは少しも濡れていない。
違和感がアレルヤの胸をくすぐる。

「……あなたは、」
どうして。
待っていてくれるなんて。
外はこんなにも暴風雨なのに。
「いつ来るか、って約束してなかったから。先に来て待ってたんだ」
「アレルヤ、来てくれて嬉しい」
そう言って、ニールはアレルヤにバスタオルを掛けてくれる。
「奥に行こう。このままじゃ風邪ひいちゃうだろ」
アレルヤに関係者用の入場パスを首に掛けて、ニールは昨日のようにアレルヤの手をひく。
「い、いいんですか?ぼく……」
「アレルヤ、気付いてなかった?」
「え?」
「今日は休館日」
「あ……」
「台風が近付いて来るのは、予想外だったけど」
昨日の予報じゃコースは外れだった。
「……まさか本当に来てくれるなんて思ってなかった」
嬉しい、と言った反面ニールは少し申し訳無さそうな顔をする。
「やくそく、したじゃないですか」
一方的に取り付けられたものを、どうして約束と言えるのだろう。
ふと出た言葉にアレルヤは自分自身不思議でならなかった。
奥の職員用の休憩室まで連れて行かれ、アレルヤはほっと息をつく。
このままずっと手を繋がれたまま、中を案内されるかと思った。
部屋にあるソファに座るよう促される。
……スマートだ。とても。アレルヤという少年に対する扱い方なのに、能動的でそれでいて不躾でも無い。
自然にならこういう事が出来る人なのに、出会った時のように変に意識をすると少し不器用になるのはニールの性格なのだろうか。
「……ココアは好き?」
「嫌いじゃ……ないです」
「寒いだろ」
職員用休憩室にある自動販売機の前にニールは立って、尋ねた。
ホットがコーヒーかココアしか無く、アレルヤはコーヒーでも大丈夫なんだけどなと思いながらもあやふやな返事をする。
ガコンと鈍い音がして、ココアの缶を渡された。
「あつ……っ」
体が冷えていたせいか、思ったより熱く感じる。
慌てて自分に掛けられたタオルで掴み直し落す事は無かった。
手がかじかんで思うようにプルタブが開けられなかった。
「貸して?」
くすくすとニールに笑われて、アレルヤはくすぐったくってならない。
笑われているのに、ニールの感情は自分を馬鹿にするものでは無い事が分かってしまう。
子供好きな人なのかもしれない。
しかしそれはアレルヤにとって推測でしか、ない。
「ま、最近異常気象だし……」
何かを言い聞かせるようにニールは言った。
買ってから真夏にホットココアなんて……という考えに至ったらしい。
ぷしっと軽快な缶のプルタブを開ける音がして、ホットココアの缶をニールはアレルヤに渡した。
そのままこくりと一口飲んだ。
クーラーの効いた部屋に濡れたままは結構体が冷えて、温かいココアを美味しいと感じる。
続けてニールはコーヒーの缶を開けて、一息を吐いた。
「あったまった?」
無言で頷く。
「それはよかった」
「あの……どうして」
「時間まで約束してなかった、ってさっき言ったけど」
「そうじゃなくて!ど、どうして……」
「休館日だけど俺はバイト」
「そっちでもないです!なんで貴方は僕に優しいんですか?!」
的外れな事ばかり言うニールにアレルヤは痺れを切らして、つい大声を出してしまった。
そして発言してしまった言葉の意味にもはっとして手で口を塞ぐ。
「優しい?俺が?」
わからない、といったようなニールの表情に、アレルヤは何故か視界が歪んだ。
涙が滲む。
こんなにも優しくしてもらえるような事を、自分は彼にしていない。
むしろ彼に迷惑を掛けてばかりだ……。
そんな思考と同時に、彼に何もしてあげられない、という思いが胸の内から出てくる始末だ。
何故こんな事を感じ、想ってしまうのだろう。
……調子が狂う。
今まで当たり障りなく生きて来た。
なのに、どうして。
彼の言動はこうも自分の心を揺るがすのか。
「えっ……アレルヤ?!アレルヤ……っ」
ぽろぽろと涙を伝わせるアレルヤの瞳を見て、ニールの体は過剰な程跳ね上がる。
何か自分はしでかしてしまったのか、と心臓が無駄に高鳴った。
「……俺、子供に泣かれるのダメなんだよぉ」
語尾が弱々しくなる。
アレルヤの頭にかけたタオルで顔をごしごしふいてみる。
ごわごわしたタオルでそうされると、少し痒かった。
「……ふ、ふふっ」
なんだかそれがおかしくて。
涙を零すくらい悲しい気持ちが、何処かへ飛んで行ってしまった。
「あっアレルヤ……今微笑った!?」
「だ、だってディランディさんが、おもしろいからっ……ふふふっ」
「なんだよー泣いたと思えば!どっきりさせやがって」
「優しい人なんですね」
指で涙を拭い、アレルヤはまたニールを優しいと称する。
「……こんな僕にも、平等に接してくれる。ありがとうございます」
「アレルヤ……」
アレルヤは真っ直ぐにニールを見上げた。
アレルヤが特別小さい訳では無いが、ニールは高身長に部類される方のスタイルだ。
見上げてくるアレルヤの瞳の色が、初めて出会った時のように無色ではなく、きらきら輝く銀色であったとニールはここで気が付いた。
それがとても綺麗だったからか、見上げてくるアレルヤが微笑むからか、ニールはアレルヤを抱き締めてしまった。
「ディランディさんっ……?!」
「ニール。」
「え、」
「呼び方。ニールでいい」
「ニール、さん……?」
「……真面目だな、アレルヤ」
「仮にも僕は年下ですから……」
「ったく……俺には普通にしろって言ったくせに」
「これが僕の普通ですっ」
「はは、そっか」


――――――――――


ゆっくりと博物館の中を回った。
たまに他の職員や警備員、研究者とすれ違ったりもしたが、小さな展示室ではそういう事も無く、静かに時が進む。
時折通路にある窓を見るが、とても激しい雨だった。
「――なんで、あれが好きなの?」
あれ、というのは二人が出会った展示物の事だ。
「わかりません……」
「好きになっちゃったんだよなあ、解るよ」
俺も好きだから。
「前にここに就職するって言ったけどさ。これがあったから、ここにしようって思ったんだ」
「……学芸員さんですか?」
「一応研究者として。……これの理屈は大学で勉強したけど、どうして好きなのか……これに触れたかったから」
「わかります、その気持ち……」
「アレルヤが来るようになったの最近だよな。ここら辺に住んでるんじゃないのか?」
「……学園都市線を少し行ったところにある施設です。去年からお世話になってて」
「施設……?」
「あ、変なところじゃないですよ?僕は、その、ちょっと訳あって両親と離れて暮らす為に……」
「……アレルヤ、これ、触って見たくない?」
「へっ?!」
「アレルヤみたいな子がいてくれるなら、俺の研究にもやりがいが出来るってもんだ」
「え、でも、そんな」
「あ……今日じゃなくて悪いんだけど……俺が研究者になったら、の、約束」
「そんな約束していいんですか?どうして?」
「どうして、か……どうしてだろうな」
「……何を、お祈りしてたの?」
「え……?」
「いつも、こいつに語り掛けてるみたいだった。何かお願いごとでもしてるのかなあ、って思って見てたよ」





「月の裏側にこれが隠されてた頃、世界は争いごとが絶えなかった。」
「もう世界の何処にも、ご飯が食べられなかったり、誰かが死んだりする事なんてない。」
「だけど、それは、当たり前の事で……どうして今まで当たり前の事が出来なかったんだろう」
「当たり前に、家族と暮して、当たり前に食事をして、子どもは学校、大人は仕事、帰ったらあたたかい寝床。」





「……僕、何も話してないですよ……?」
「え?」
「ニールさん、僕の考えてること、わかるんですか?!」
「そんな訳ないだろ?相手の思考を読むなんて、今じゃ法律で厳しいんだから」
「あ……そう、ですよね……」

ちょっとおいといてー場面転換!


――――――――――

「……なあ、誰かの考えって読んだことある?」
「何だよ急に」
「いや……なんとなく思ってさ。どう?ある?」
「あー……昔、親と喧嘩してもう怒ってないかなーって覗いた事はあるけど、あれって凄い厳しいじゃん?意図的にやった事無いなあ」
「だよなあ」
「なに?ニール、悪い女にでも読まれたのか」
「ばっかちげえよ」
「最近女の子の間でブームなんだって。運命の相手探しっての」
「はあ?」
「気になるやつの思考を読んでさ、こう……共通の記憶持ってるか探すんだって」
「記憶?」
「そ。なんかよくわからんが、生まれる前の記憶っつーやつを持ってる奴が最近いるんだと。その中で前世の恋人?ってのを探すんだってさ」
「へぇ……なんか、嫌だな」
「女子にはそれがロマンティックなんだってさ」
「ふぅん……」

他のクラスの女子に呼び出し(あにゅーちゃん)
「あなたがディランディさんですか?」
「そうだけど……君は?」
「一年のアニュー・リターナーです」
「……俺に何か」
「探し人をしてるんです。でも、貴方じゃなかった」
「今ハヤリの、運命の人探し?」
「そうと言ってしまえばそうですね」
「……俺の記憶読んだのか?」
「はい?」
「同じ記憶を持ってる人探しになるんだろ?」
「なにそれ、凄くロマンティックな話じゃないですか」
「え?そうじゃないのか?」
「全然ちがいますよー。運命の人なら、自然に分かっちゃうっていう風には噂はありますけど」
「根も葉もないな……」


研究者となったニールと、協力する能力者として施設から来るアレルヤちゃんとか??




どこからきたの?
……
言えない所?
……じゃあ、はじめてきたのは?






『……今だよ』

『だれ……?』

『アレルヤ、迎えに来たよ』

『……ずっと待ってたのは、あなただったんだね』

『』
130909






社会不適合なんです、と
脳量子波の遮断・調整が出来ない出来損ない




13.06.23



20140814

*****

三日目

一階はリビングとダイニング、ゲストルーム、バスルームに書斎、あとは応接間納戸

「ずいぶん綺麗になったな」
「雑草抜きで時間が取られました」
今日も続きです、と零す。
「探索は?いいのか?」
「謎解きのスタート地点なら、あまりここに意味は無いのかなあ、と」
ニールが誰かに出したクイズは、回答者への逗留場所を与えるものだったのかもしれない。
だがその向こうにあるものが本に記されている事だけは分かる。
「……俺も草抜き手伝うよ」
「高枝鋏とか無いんですか?」
「うーん納戸に仕舞ってるかな。何十年と開けてないから……」
「じゃあ、庭はこのままにしましょう。なんだか南の島みたいで、ステキじゃないですか」
「そうか?俺には、ただのもじゃもじゃにしか見えん……」
「そうだ、写真がありますよ。ぼくが南の島に行った時、両親に送ったのが」
端末から画面を操作して、保存されたものを呼び出す。オレンジ色の球体型のマスコットがナビゲーターなのか、映し出された写真は関連する写真を次々候補に上げてくる。
「可愛いの使ってるんだな」
「旅に出るって言った時、インストールして貰ったんです。凄い高性能で」
「どこのメーカー?」
「さあ……大学でも、同じ端末使ってる人ってそういえば見なかったですね」
「自作には見えねえクオリティ」


(話が右往左するぞどんどこ)
「そういえば今日は平日ですけれど、ロックオン、仕事は?何をしてる人なんですか?」
「んー……自営業?」
「」






4日目くらい(アバウト)

先に一目惚れだっつっといてお墓参りコースですかね……

(なんかあって)
「なんでそんなに良くしてくれるんですか?ぼく、もうすぐ死ぬのに」
「――……って言ったら、信じてくれるか?」
「え?」
「一目惚れ、なんだ」
「……」
息を飲む。
「好きなんだよ。初めて見た時から」
「ぼくを……?」
「うん」
「男ですよ?」
「知ってる。何かの間違いだって思った。だから近寄った。だけど性別なんて、二の次だった」
分かっただろう、とでも言うように、彼は扉を開けた。逃げ道を示すように視線を外す。
「……あ、なたが、」
服の上から心臓を掴む。
苦しそうに。
「最初は、貴方が、ニールだといいって思ったんです。」
(どんなひとだろうとゆめみてた)
「でも、ニールじゃないって聞いて、いま、凄く、嬉しく思いました」
「……なんで?」
「だって?ぼく?が好きなのは、貴方だから」
「ぼくは、アレルヤじゃないもの」
少し悲しそうな顔をして言う。
「これを、見てくれますか」
「ニールがアレルヤに、宛てた手紙です」

愛してる。

「もちろんぼくへのものじゃないです。でも、当初はこの手紙を書いた人がどんな人だろう、って、夢を見てました」
「……貴方じゃなくて良かった……」
ぽろぽろと涙を流す。
「あ、アレクセイ……?」
自己紹介された時の名前を呼ぶ。
「いいえ。確かにぼくは、アレルヤなんです」
「でもぼくはアレルヤにはなりたくなかった。どうしてもアレルヤと呼ばれたくなかった」
「……何故ぼくがアレルヤと名付けられたのか。それを探すための、旅だった」
「ニールが綴ったアレルヤの名の持ち主の、生きてきた軌跡です。僕はそれを辿った。」
「貴方が好きです。同じ気持ちだと想いたい」
どうして好きになったんだ???


アッハハァー展開がクッソ早いぜ!!!!

好きって言われてDOKI☆DOKIするシーンを入れましょう!!もっとラブラブさせましょう!!!!










あれー?わからなくなってきたよー







「即死だった。落盤に巻き込まれて、これが誰なのか、一人の人間なのか、解らなかったらしい」
想像をしたのか、彼の顔がそっと青褪めた。
「14歳だったらしい。葬儀は……大層には行わなかったんだと」
「どうしてですか」
「……病院も火葬場も、いっぱいいっばいだったらしいからな」
奇しくも、歴史上この国で最も死者の多い爆発テロとなった。
「……だから、これは、違う人間だと思う……」
君に愛してると書き残したのは。
そう言って視線を逸らした。
「いえ、彼です」
墓石に刻まれた名を指先でなぞり、彼は行った。
「確かにぼくは、これを譲り受けたと言いました。だけど、これがニールから貰ったなんて、一言も言ってませんよ」
「やっぱり、ロックオンは何か、彼と関係があるんじゃないんですか?」
そうでないと、これの持ち主がニールだとは思わない。
「…………気を、使ったんだけど」
「はい?」
「俺がニールって言ったら、どうするんだよ」
気持ち悪いだろう、と。
「……」
「いくら知らなかったとはいえ、お前、ずっと一つ屋根の下だったんだぜ?」
「……なぜ?」
「なぜ、って、」
「別にぼくは、ニールをさがしに来た訳じゃないんです」
ほんの少し、落胆する。
「でも、貴方がこの本の持ち主なら、もっと最初からぼくにアクションを起こす筈でしょう」
「ぼくがアレルヤだと分かってたなら、名前だって聞かないでしょう」
「それは、少なくともこの本の持ち主では無いってこと」
「……」
「……そうなんじゃないんですか?」
「俺も、なんだよ」
「はい?」
「俺も、アレルヤのことが好きなんだ」
「……!」
「そうなったら、お前は、ニールを取るだろう」
↑いみがわからん
「あの……じゃあ、」
「ぼくがアレルヤじゃないって言ったら、どうしますか」
「好きだ、アリョーシャ」
「それも、違う名前です」
「お前が、好きなんだよ!」
ついに彼は声を荒らげて、彼の手首を握り取った。
「どうだ、嫌だろう」
掴んだ腕をぐっと引き寄せて、ついにその肩を抱いた。
「嫌なら、突き飛ばせよ。殴って、罵倒しろよ」
そうじゃないと、期待してしまう。









「クソ、当たりだ」
「最初に言ってましたわね。本名が嫌いだって。ということは、持ち主のニールと何か関係が……」
「父親だ」
「は、」
アレルヤの言葉を遮って、ロックオンは言った。
「孫、とかじゃなく?」
孫でも、少しばかり彼は若いかと思う。
「正真正銘の、ニールの息子だ。あと、本名もニール」
だから嫌なんだ、とロックオンは言った。
「こう見えて、お前の何十倍も生きてる。」
世界から老いが遠ざかったとき。彼はまだ学舎に通い始めた頃の幼子だった。世界の変革だった。
「……一度も会ったこと無いよ。双子の弟の、叔父さんとは一回、会ったっきりだ。」
それも父親の、葬儀の時だったけど。
「だから……嫌だったんだ……」
「ロックオン?」
「だって俺も、アレルヤのことが好きだから」
「……!」







彼は産まれてすぐ曾祖母の元へと引き取られた。
両親の顔を知らなかった彼は、何の不思議も持たずに祖父母を両親だと思い育った。
父親は身重の母親を置いて何処かへ行ったという。
母親は祖父母から反対されたが、彼を一人で産んだ。
今時母子家庭は珍しくない。
ただ、母親には、現代の医学ではどうしても治せない病に侵されていた。
母親には、本当はたくさんの兄妹がいたという。
殆どが産まれてすぐ死に、共に育った兄妹たちも、母親が物心付く頃には皆死んでしまった。
家系図には若く死んだ叔父、叔母、従姉妹に又従兄弟、皆が、老いが緩やかなこの世界で早世していた。
医学的には、皆至って健康であった。その殆どが老衰で。予兆が無い訳では無かったが、死期を悟った者はその数年内に必ず亡くなった。
祖父母だけが、今も生きながらえている。
だから産まれてすぐに親が死んでしまった赤子たちは、彼女によって育てられた。
他にも何人か、親戚の子がいたので、彼は別段不思議には思いもしなかった。

ほんぺん

寄り添う事で、二人の距離はより近付いた。
告白をされて、暫く経つ。
彼は拒絶をしたわけでもなく、ただ、傍にいることを望んだ。
「――どうしても?」
「どうしても、です!」
手を握られていた。両手で両手を包み込まれている。それはまるで拘束のようであったが、いつでも逃げ出せるくらい力は入っていない。
添い寝をしてほしい、という彼のお願いだった。





彼の母親は、特に曾祖父の血を色濃く受け継いでいた。
彼は特に面影が似ていて、彼は曾祖父の名を受け継いだ。
数少ない身内からもよく似ている、と彼は幼い頃から言われていた。
彼の一族は皆寄り添って暮らしていた。
しかし彼は曾祖父を一度も見たことがなかった。
周囲の者もそうで、皆一同に彼が、曾祖父の生まれ変わりであるように声を掛ける。
彼にはそれが、訳もなく不快だった。
自分は、自分という人間は、たった一人であるというのに。





なんかよくわからんくなってきたけど婿嫁ちゃん幸せにしたいねん






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