中篇 | ナノ

ジ・エンド そのあとに





かみさまがいった。
≪きみは死んでしまったんだよ≫
≪きみは世界じゅうをてきにまわして、死んでしまったんだよ≫
≪きみは世界の平和をねがったよね≫
≪きみは世界をねがってたたかったよね≫
≪だからきみに平和になる世界をみせてあげる≫
≪きみがのぞむばしょ、あいたいひと、そこへつれてってあげる≫
≪だけどまちがわないで、時間はもどせない≫
≪きみが死んでしまったように、あいたいひと、いきたいばしょ、今しかみれない≫
≪過去も未来も、無いんだよ≫
かみさまがいった。

 そこは暗くて明るい所で、闇に包まれているのに不思議と明るく、己の体やその回りのものが眼で見えた。 俺はまるで水の中や、宇宙をふわふわと漂うようにそこにいたのだ。
 俺は、宇宙にいた。いた、というのは間違いかもしれない。けれど取り敢えず、今、俺はここにいる。
 カミサマ、なんて存在がいたことにまず驚いた。正直言って天国へは行けないとは思っていたものの、地獄へも行けない結末になってしまった。
 言葉は、出ない。
 口も動くし、声帯だって震えているのに、自分の脳内で再生された声しか聞こえなかった。 そもそも声帯や脳など、今の体に存在するのだろうか。 それすらあやふやな、所謂”魂”だけの存在になっていたのだった。
 ふむ、と腕を組む。カミサマ曰く、俺は現在を見ているようだった。俺の望む場所、会いたい人の所へ行ける代わりに。恐らく存在が魂のみ……幽霊、になる訳だから、会いたい人の所へ行っても言葉を交わせる事は無いのだろう。今のところただの傍観者でしか無かった。
 何故俺が今宇宙へ来ているかというと、自分の遺体確認の為だ。俺は爆発に巻き込まれて死んだ。四肢は分断され、塵芥となり、周回軌道からも外れ、もう二度と地球へは戻れないだろう。自分の死顔は見れたもんじゃなかった。何せ、顔ですら判断出来なかったのだから。真っ赤に充血した瞳がよりいっそう別人さを醸し出す。微かに残る髪と、見慣れた眉毛の形。学生の時ピアスを開けようとして失敗した耳たぶ。判断材料は、あった。
 意外とどうとも思わないもんだな、と考えた。死ぬ瞬間を克明に憶えているものだから、疑う余地は無い。若干グロいと思ったレベル。
 しかし家族の元へも行けず、ただ与えられた永久をどう過ごそうか、と悩んだ。時間だけが無限にある。何も出来ずに。
「世界が平和になったら……今度こそ地獄行きかな?」
 自嘲するようにして笑った。平和になるのだろうか。争うだけのこの世は。
 与えられた時間に、ほんの少し感謝をする。もしも世界が平和になったなら、あの子たちが幸せになるのを見届けられる。大切な、大切な……家族であるあの子たち。どうか平和な世界で幸せになって欲しい。それが見届けられるのなら、この永い永い時も無意味では無かった。
 ……でももし、あの子たちが世界を平和に出来なかったらーー?
 嫌な予感がよぎる。……考えても無駄なので、それはそれで神頼みにして一緒に世界平和を傍観しよう、とお願いする事にした。






side L
≪想像≫
自分の利害を優先して生きてきた。
信じてきた不変的な愛が重苦しく感じた
もう誰も必要ではないとふさぎこんで、愛を拒絶した
自分のために戦い、血を流して、愛なんていらないとおもってきた
さいごに自分を突き動かしたのは愛だった
それが僕の罰だった。


ライルの様子は依然恙無く、といった感じだった。
一流の商社に就職しているので、ちょっとやそっとの不況で路頭に迷う事は無いだろう。
とは思いつつも、おいて来てしまった弟の事を心配しない兄はいない。しばらくの間ライルと一緒に暮らしてみた。
といっても幽霊のようなこの体は眠る事が無く、疲れも無い。炎天下のしたびっしょりと汗に濡れるライルを尻目に、俺はひたすらついて仕事についてまわる。
忙しい仕事なんだな、と思いながら、それでもしっかりと遊ぶところは遊んでいるライルに安堵した。



side S
≪信仰≫
誰にでも心に神を持っていると誰が言ったのだろう。
神を信じない民族に出会った
愛を信じる人達に出会った
自らを神とする人に出会った
何か縋るものが無ければ人は生きては行けないと誰かが言った
神ではないなにかを、信じれる一生を人が送れるよう、戦った。


どうやら刹那は生きていたようだ。


side T
≪理念≫
神を崇拝していた。
何にも変えられない神を
夢や理想など二の次で、ただそれだけに与えられた使命だと信じて
神がいなくなったあとは、なにをしんじればいいのか不安になった
その時支えてくれたのは神ではなく、夢や理想、神ではないなにかだった
なにもなくとも、心穏やかに生きられる世界を、造りたかった。




side H
≪実像≫
ただ生きていたかった。
何にも害されること無く、生を全うしていたかった
自分という存在価値を示したかった
飢餓に苦しんでも異端と罵られようと
いつかきっと人間だと信じてもらえると
何も変わらなくていい、何も変えられなくてもいい
ただ生きていたい
それが、人間誰しもが望む幸せを
自分だけでも。



side A
≪理想≫
夢を見た。
父と母に囲まれ、沢山の兄弟と生きる夢を
餓えも貧困も格差も無く、不変的な毎日を過ごし成長してゆく
大きくなっていく体躯はやがて老いていき
子供達に見取られていく
そんな普通の人生を、世界の人々が感じれるように。


side N
≪夢想≫
不変的な日常は崩れ去った。
信じていたもの全てが消えうせて、生きていることが無意味に思えた
君にさよならを告げて、君を愛して、君を育てた
君が幸せに暮らせる家を与えた、君がどこへでも行ける様足も与えた
君が幸せに生きていける揺り籠を作ろうとした
それが僕の罪だった。




the END
「僕達は何を求めて生きてきたんだろう?」
「俺達の人生とは一体何だったんだろう?」
終わりを告げる鐘の音が鳴り響く。
「僕達は何のために生きてきたんだろう?」
「俺達の人生は一体何を変えたんだろう?」
それぞれがそれぞれのために自らを犠牲にして生きてきた。
この一生で何が変わったというのだろう。
この一生で世界の何が変わったのだろう。
「それでも、俺達は間違っちゃいない」
きっとこの命だけでは辿り着けなくても
きっと誰かが願いを引き継いでくれる
だってそうだろう?

願いを引き継いでゆけ、第四世代。





ベースはにるあれ。
基本的に詩を元にしながらも明るく、ちょっぴりせつなく。
イメージは、リミナリティみたいなかんじで、ニールが暗躍してる感じ。
でもにるあれ!あんちあれまり、あんちらいあれ。
しらんすきなものかく

ジ・エンド、その後に
2014/4/18

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