中篇 | ナノ

神話前夜




ある世界には、一人の女神がいた。
女神は創造の神で、あらゆる万物に名前をつけ、そして自分の周りの世界を満たしていった。
その世界には、海の国、空の国、大地の国のみっつの国があった。
海の国は双子のヌシが収め、空の国は夫婦のヌシが収め、大地の国は親子のヌシが収めていた。
それぞれの国にはあるしきたりがあった。それは創造の女神から与えられたしきたりであった。
海の国のしきたりは、女神の唇と同じ色の水を流さないこと。
空の国のしきたりは、女神の髪と同じ色の糸を紡ぐこと。
大地の国のしきたりは、女神の瞳と同じ色の果実を食べてはいけないこと。

こういった神話が根付く、とある村があった。
村人は争いを好まず、神話と同じように女神の髪と同じ色の絹糸を紡ぎ、そして女神の瞳と同じ色の果実を、河へと捨てていた。
そこにはある双子の兄弟が住んでいた。二人には身寄りが無く、どちらが兄か弟か争う事無く、ただひっそりと暮らしていた。
ハレルヤとアレルヤ。
二人はそう名乗っていた。
双子は蚕の糸を紡ぎ、染め、外のムラへと売って生活をしていた。
二人で暮らすにはそれではやはり金が足りず、二人には借金ばかりが嵩んで行く。
「…やっぱり捨ててしまうのは、勿体無いよ」
「でもアレルヤ、ムラのやつらはこの果物なんて食べないぜ?」
「……外へ売る、とか」
「どうやって国を出るんだよ……」
「隣ムラよりも、もう少し行った所なら売れるかもしれないよ」
「そんなに言うなら、お前が売りに行け」
ハレルヤはアレルヤにいつもの売り物の絹糸とともに、鞍馬にたくさんのオレンジを詰め込みアレルヤの馬に背負わせた。
アレルヤは馬を引き連れ、ムラを出た。いつもと同じ森の獣道を歩き、隣ムラまで行く。そこで旅の支度をいつも以上に整え、さらに遠くのムラへと足を進ませた。
地図なんてものは無く、店先に掛けてある地図を手探りに思い出し突き進む。このムラを過ぎると、あとは何日もかかる遠い道のりであった。


はいおわってません
スタドラ劇中劇「神話前夜」より妄想。

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