咆哮
「ばかみたい」
朝八時。太陽は足元で輝いていた。
ここは夜の世界。彼はまだ、眠りの淵。
「ばかみたい」
外の映像を映し出すモニターを眺め、青年は一人また自嘲した。
えんえんと同じ内容のニュースが流れ続ける。
現在の戦況、破損した機体の数、死亡者の名前。
どこか見覚えのあるような、無いような、そんな既視感を覚えるのはきっとこの部屋の外がもう戦場だからだろうか。
隣でまだ眠り続けている片割れを見た。
共に生まれ出づるは月の裏側。
まだ暗闇のそこは、無数の怪物たちが巣食う居城があった。
誰も知らない、イノベイターたちの閨。
「……夢の中なら幸せかい?」
似ても似つかない双子の片割れは夢の中、微笑んだ。
彼は死んだ肉体と魂を無理矢理結合させたもの。
自分は世界から消された肉体と存在を結合させたもの。
役柄は重複していた。
だって、世界から消された筈の存在は地の底から這い上がり
今もなお空を翔けていた。
早く殺さなければ。
早く。
その女神もろとも。
殺さなければ。
体の中で血液が沸騰していく感覚がする。
頭の中であと何回殺せばいいのだろうか。
胸の中で赤い膿がどろどろ溜まっていく。
グッバイマイセルフからのきりぬき 2014 5/18
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